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腰痛の解決の鍵を握る3つのポイント | 日本オランダ徒手療法協会

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腰痛の解決の鍵を握る3つのポイント

2022.03.13

from 橋本 祐一 @自宅デスクより

 

「健康寿命」という言葉を知っていますか?

 

平均寿命とは別に、健康寿命という言葉が定義されているんですけど、

 

これは「元気に自立した生活を送ることのできる期間」を指した言葉です。

 

厚生労働省の「簡易生命表(令和2年)」によると、

2020年の日本人の平均寿命は

・男性が81.64歳

・女性が87.74歳

 

健康寿命は、

・男性なら約72歳

・女性なら約75歳

と報告されています。

 

これって日本人が平均的に最後の約10年くらいを、介護などを受けながら生きているということ!?

 

寿命は伸びても健康に最後まで過ごしている高齢者が減ってきているという現実を医療人としては見過ごすことはできませんよね。

 

実際にリハビリに来られている患者さんの中には、できることなら人の助けを借りずに健康に暮らしたいとおっしゃる方が多くて、

 

「リハビリはきついね!でも、頑張るよ!」

 

とすごく頑張っている方もいるのですが、

 

実際は、全ての方がそうポジティブに頑張ることができるわけではないですよね。

 

「もう歳だからきついリハビリはしたくない。でも歩けなくなるのは嫌だ。」

 

なんて事も言われたりした事もあるのではないでしょうか。

 

そういう時はあなたはどうしていますか?

 

最後の10年も元気に生きるために、何ができるのか。

 

『考えなければならないこと』は、実はたくさんあって、これを私たちリハビリをする人間だけが知っていても意味ないなぁと思います。

 

実は、この『考えなければならないこと』というのが2017年にカナダおよび米国の老年医学会から初めて『5つのM』として提唱されたんです。

 

その「5つのM」は、

▶Mobility

▶Mind

▶Multicomplexity

▶Medications

▶Matters Most to Me

 

の5つからなります。

 

健康老後のための「5つのM」とは?

 

1つ目の『Mobility』

「可動性」や「移動性」などとも訳される言葉ですよね。この言葉は一番リハビリに直結する言葉だと感じます。

 

 

2つ目の『Mind』

「心」や「知性」を意味し、ここでは認知機能や精神状態を指します。いくら体が元気だとしても、脳や心も元気でないと、結局体の具合が悪くなり、人の助けが必要になっていきますよね。

 

3つ目は『Multicomplexity』

これは一般に、多様な疾患を抱えた状態を指しているそうです。歳を重ねていく中で、生活習慣病、がん、感染症、心臓の病気など、さまざまな病気のリスクが増えていく。この多様な病気を防ぐためにできることについて考えていくのが、このMulticomplexityという事です。要は、『よぼう』の視点がとても大切になると考えられています。

 

4つ目は『Medication』

Medicationは「くすり」のことです。

色々な病院にかかり付けて1日に服用する薬の数を何十錠も飲んでいるっていう事もあると思います。その非常に多い状態を「ポリファーマシー」と呼ぶのですが、飲んだ方が良い薬があることに間違いはありません。

 

でもやめられる薬や、やめた方がいい薬もあるのに、それに患者さん本人も気がつかずに続けられてしまっているケースが多くあるのもまた事実です。そういった『くすり』の問題を明らかにし、どのような工夫ができるかを私たち以外でも医師と連携して考える必要があるんです。

 

最後の5つ目の『Matters Most to Me』

 

これは、「患者さんの人生にとって何が最も大切か!」という視点です。人はそれぞれ自分の健康である事でのゴールややりたい事があるはずですよね。人によっては、寝たきりになってでもとにかく長生きをすることが大切なんだと考える方もいる一方で、人に依存しない生き方こそが大切なのだと考える人もいます。

 

その患者さん一人一人の「いきがい」や最も大切なことは何かに目を向けること、さらには患者さん自身に目を向けてもらう事も私たちのやるべき事だとも思います。

 

この『5つのM』は、現在では米国中の老年医学専門医にその考え方が浸透しているそうですが、日本ではまだしっかりと浸透しているとは言えないみたいです。

 

この『5つのM』を患者さんに伝えていき治療してもらうだけではなく、患者さんにも自ら健康になるためにはどうすべきかを『考えてもらはなければならない』と思うこの頃。

 

あっと!ついつい私の悪い癖で、すごく前置きが長くなってしまいましたが、本題に入りますね。笑

 

今回は前回お話しした『しびれ』と『腰痛』についてお話ししたいと思います。

 

脊柱管狭窄症で腰痛としびれがよくならない患者さん

 

 

前回の問診での情報ですが、

 

『”今”の症状』

・右の腰部痛(L4、5レベル)

・右臀部から大腿後面の痺れ

・腰を曲げる動きは痛くない

・前脛骨筋・大臀筋の筋力低下

・腰全体の張り

・仰向けになるとしびれが強くなる

・歩行時に前かがみになっている

・十数年前に腰部脊柱管狭窄症の除圧術とヘルニア切除術施行

 

運動神経と感覚神経の両方の訴えがあり、その原因となる神経はどこなのか?

 

症状からすると、腰の伸展運動で出てくる。

 

それをさらに追求していくには、複合運動をしてもらい、伸展ー側屈ー回旋運動でしびれが増悪したんですよね!

 

ということは神経根の可能性が高いかも!!ってなります。

 

痺れ症状を紐解いていくには、

 

・『どの神経の症状が出ているか?』

・『どの部位・場所に原因があるか?』

 

を考えていくことが大事になりますよと言うお話をさせてもらいました。

 

じゃあ『腰の痛み』を考えるにはどうするべきか?

 

それは、腰痛も難しく考えずにしびれの症状を鑑別するときと同じで、後輩に考えてもらったんです。

 

痛みの原因として、

・『どの組織が痛みを出しているのか?』

・『組織の損傷は?』

・『楽な姿勢はあるのか?』

 

この3つのことに絞って、後輩と一緒に考えてみたんです。

 

腰痛解決にはこの3つを押えろ!!

 

 

まずは、

『どの組織が痛みを出しているのか?』

 

今回の患者さんの痛みとしては、右の腰部痛(L4、5レベル)で痛みの訴えがありましたよね。

 

じゃあ、L4、5レベルの腰部にはどんな組織があるのかあなたはちゃんと挙げられますか?

 

・骨(椎骨)

・軟骨

・滑膜

・関節包

・靭帯

・椎間板

・筋肉

・腱、、、

などなど

 

まだまだ、関節を構成する組織はたくさんありますよね。

 

まずこの関節を構成する組織が挙げられないと話が始まらないし、どの組織が痛みを出しているのか?を把握しなければならないんです。

 

そして、どのようなメカニカルストレスが生じて痛みを出しているのかを把握するんです。

 

だって、そうですよね。どの組織が痛みを出しているのか、はたまたどんな動きで痛みが出るのかを把握しないと治療ってできませんよね。

 

そして2つ目は、

『組織の損傷はしているのか?』

 

損傷しているか否かの判断はどうすべきなのか?

 

それは、炎症反応の確認をする!!

・腫脹

・発赤

・熱感

・疼痛

・機能障害

 

この5つの徴候と合わせて、安静時の痛みがあるのか?夜間の痛みはあるのか?などを把握するんです。

 

そして、先ほど挙げてもらった組織に関してそもそも組織の損傷があるのかどうかを判断する必要があるんですよね。

 

組織の損傷があるのに、その場所をいくら治療してもまずよくならないですし、かえって損傷しているのに治療したら痛みがひどくなってしまいます。

 

ちなみに知っているとは思いますが、炎症反応が起きている時って組織を修復している時期ですよね。

 

例えばなんですけど、建築途中の一軒家を想像してください。

 

その一軒家の柱をしっかりと固定せずに、いきなり屋根を取り付けてしまうとどうなりますか?

 

そんな状況で屋根を取り付けたら総崩れですよね。

 

炎症しているのを把握せずに治療をしてしまうことが負荷になりますし、屋根を取り付けることで柱に負荷がかかることと同じことなので、良くないと判断できますよね。

 

最後に3つ目、

 

『楽な姿勢はあるのか?』

 

この患者さんの場合では、仰向けになるとしびれが強くなるという訴えがあるので、仰向けに寝ている状態や体をまっすぐにすること、腰を反ったりすると痛みが出ているんです。

 

じゃあ逆に楽な姿勢はないのか?

 

問診で聞いた『今』の情報を振り返ってみると、

・腰を曲げる動きは痛くない

・歩行時に前かがみになっている

 

実は、患者さんにとっては、この姿勢が楽なんですよね。

 

これが治療するヒントになり、痛みを改善するために必要な情報といえます。

 

これらを後輩にも投げかけて考えてもらったんです。

 

じっくり考えた末に、今までやっていた治療を見直す機会となったみたいなんです。

 

「この評価をしていなかったら見てみます。」

「今までやっていた治療がよくない方向に行なっていたかもしれないので、もう一度考えてみます。」

 

と色々と引っ掛かっていたことがなくなっていったのか、表情が晴れて少しスッキリした様子でした。

 

実は、患者さん自身が今まで姿勢が曲がっているのが気になっているから背中をまっすぐにしようと無理に反ったりしていたみたいなんですよね。

 

そこで後輩も治療アプローチとして姿勢アライメントをなんとかしようと躍起になっていたみたいだったんです。

 

そこで、姿勢の修正の方法を一緒に考えて次回のリハビリまでに準備したんです。

 

数日後に、

 

「見直した治療プランを実践してみて患者さんのしびれと痛みが少しずつ減ってきました!!」

 

と、報告を受けて自信を取り戻したみたいで私も嬉しく思いました。

 

今回の腰痛を解決するためには、

 

・『どの組織が痛みを出しているのか?』

・『組織の損傷は?』

・『楽な姿勢はあるのか?』

 

この3つを押さえれば全てが解決できる!!とは言いませんが、この3つのポイントは必ず治療のヒントとなるんです。

 

そして、これは腰痛に限らず、他の疾患の患者さんにも応用できる事だと思うので、治療に行き詰まった時は、この3つのポイントを思い出して明日からの臨床に役立ててください!!

 

P.S.

最近は治療中にこの『5つのM』の話をして頑張ってくれる患者さんが増えている気がするんです。

 

ですので、今後の一つの目標は病院内で健康教室を開催して健康維持に必要な活動もしていきたいと思っています!

 


この記事を書いた人

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橋本祐一

福岡県在住の理学療法士。【JADMT公認】オランダ準徒手療法士。四肢コース・福岡校講師研修中。総合病院、整形外科クリニックを経験。普段は、主に一般の整形疾患からスポーツ障害の中学生・高校生などの治療を行なっている。休日に息子と戯れ合う時は、全力で遊ぶ一児の父。