「腰痛=悪い姿勢」この考え方はキケン | 日本オランダ徒手療法協会

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「腰痛=悪い姿勢」この考え方はキケン

2022.09.04

from 橋本 祐一 @自宅デスクより

 

最近、うちの3歳の息子が集中してご飯を食べてくれません。

 

こんな悩みを持つ親御さんは多いはず。

 

私が担当する患者さんの同世代でたった今子育て奮闘中!って方も同じ悩みを持っている人は多いんですよね。

 

家でも一緒に「いただきます!」と声を揃えて食べ始めて5分後、、、

 

いや、5分もしないうちに立ち上がっておもちゃの方へ、、、

 

その後も、

 

私:「座って食べて〜」

 

私:「こぼれちゃうよ〜」

 

私:「今おもちゃで遊んでないで、早く食べてまた遊べばいいじゃん」

 

こんな声かけをしても、

 

息子:「いや〜〜〜〜!」

 

ってな具合でイヤイヤ期も合わさって幾多の親御さんを悩ませていると思います。

 

挙げ句の果てには、

 

私:「ちゃんと座って食べようね」

 

と声をかけると、

 

息子:「座ってるし!」

 

息子:「食べてるし!!」

 

てな具合です。

 

集中してご飯を食べさせるってすごい大変だと思います。

 

でもある時、食べ始めてすぐに立ち上がって歩き回る仕草に注目して見ると、もぐもぐしながら飲み込んだら戻ってきてまた食べ始めていたんです。

 

この姿を見て、すぐに立ち上がって遊んでしまって集中できないのは、おもちゃが近くにあることだけじゃなく、噛んで飲み込む動作がしにくいのでは?

 

じゃあ、座っている椅子があっていないからかな?

 

のも集中しない原因かと思ったので、

 

そこで、椅子の高さの調整をしたら、、、

 

意外にも長い時間集中してご飯を食べられるようになったんです。

 

姿勢が丸まっていると大人の自分たちでも食事しにくいのは当たり前なのに、子どもの成長とともに椅子の調整をし忘れていたことで集中できない環境にしてしまっていたのだと反省しました。

 

さて、

 

あなたも臨床では、患者さんの姿勢など意識して見ていると思います。

 

姿勢の悪さによって痛みが出たりするので、修正したがってしまう。

 

私もそうでした。

 

でも、

 

姿勢を修正しすぎると思いがけないトラップに引っかかることがあります。

 

今回はそんな姿勢にまつわるお話をしたいと思います。

 

腰が痛いという友人

 

 

今回紹介する方はクリニックにくる患者さんではなく、私の友人なんですけど、

  

久しぶりに連絡が来て、

 

「ちょっと腰を痛めちゃった」

 

家族ぐるみでよく遊びに行ったり、子どもが1歳違いで一緒に遊んだりする友達なんです。

 

こうやってたまに私がこの仕事をしていることをもちろん知っているので、たまにどこかが痛くなったら対処方法を聞いて来たりとあったんです。

 

でも、今回はいつもと違って不安感が口調からも読み取れたんです。

 

なので、後日施術をすることになったんです。

 

まあ友人だからと言っていつも通り問診は欠かさずに色々と話を聞いたんです。

 

・腰痛という腰の張りをどうにかしたい

・張りは朝起きてすぐはすごく張って、その他だと仕事中同じ姿勢した後に張ってくる

・たまに手の痺れることが時々ある

・ギックリ腰になりかけるような腰痛が高校生の頃から定期的にある。(1年に一回くらい)

・仕事は営業職(車移動が多い)

・整骨院に行ったりして、その時に姿勢をよくしたほうがいいと言われて、常に姿勢をよくしている。

 

一年に一回くらいのぎっくり腰とは言わないけど、強い腰痛があるのは初耳!

 

そのほかにも、心理面のことや自律神経系のことなども問診もしたんだけど、それは特に問題はなかったんです。

 

下肢のしびれもないし、力が入らないことなどもない。

 

でも、たまに手の痺れがあることが気になったんですよね。

 

今回の訴えの元は腰痛なのに、手の痺れがでる。

 

普通腰痛だったら下肢に痺れが出ることはおかしくないし、痺れではなくとも下肢の張りなどの訴えも多くないはずなんだけど、、、

 

今回の痺れは下肢ではなく手。

 

実際に、友人の左右の下肢の張り、筋力低下、痺れや脱力感といった左右差もなければ、下肢症状も全くないんですよね。

 

 

手の痺れと腰痛は無理な姿勢の修正

 

 

そこで、もう一度腰の痛い場所を詳しく聞いたんです。

 

すると、腰椎ではなく、下位胸椎Th7〜12周辺を指差したんですよね。

 

あるあるだと思うのですが、腰が痛いと言われて、医療人は腰椎のことかな?って思いがちなんですけど、一般の方だと背中の下の方は全部腰という認識。

 

腰かと思ったら胸椎部だからいくら腰を治療してもよくならないはずですよね。

 

これが年に1回腰痛になる理由だとわかったんです。

 

では、何が腰痛の原因なのか?

 

それは、

 

『手の痺れ』と『いい姿勢』この2つが大きく関係していると思ったんです。

 

下位胸椎に長い間張りがあるとTh7〜12付近の自律神経は機能が悪くなってしまうんです。

 

つまり、筋肉の緊張から痛みのある場所周囲の血管などの循環が悪くなって、血管から栄養をもらっている神経系も同時に機能が悪くなる可能性がある。

 

そして、今回痺れがあるところが手なのですが、デルマトームの支配神経は頚椎7、8番だったんです

 

頚椎と胸椎で全然関係なくない?

 

そう思ったかもしれませんが、

 

実は、頚椎と胸椎は運動/感覚神経↔︎自律神経で相互に関係し合っているんです。

 

この辺の話は長くなるので、今回は割愛しますが、

 

頚椎7・8、胸椎1、そして胸椎7・8を施術することにしたんです。

 

すると、手の痺れはなくなり、腰の痛みと言っていた背中の痛みも同時に消失。

 

友人も痛みがすっかりなくなったので、あんなに不安になっていた表情も晴れたんです。

 

でもこれで終わってはいけませんよね。

 

それは『いい姿勢』と言うワード!

 

そのいい姿勢っていうのが、前に通っていた整骨院で、

 

「腰痛は猫背になっている悪い姿勢が原因なので、姿勢を正すのに肩甲骨を常に寄せた状態がいいですよ」

 

って言われたらしいんですよね。

 

猫背も腰痛になる原因にはなるけど、常に肩甲骨を寄せてって言うのはいかがなものかと思いますよね。

 

そんなことしたら、背中がバキバキに張るのは当たり前。

 

その状態で、立ち仕事や座る姿勢もしてたもんだから、常に背中はピンと伸びた状態だったんです。

 

 

だから友人には一言、『その姿勢のとり方をまずはやめて』って言ったんです。

 

 

それから、少しずつピンと張った姿勢ではなく色々な姿勢をするようにしていったら、少しずつだけど背中の張りが減っていったんです。

 

日々の姿勢について私たちセラピストもついつい助言したくなってしまいますが、患者さんにとってはよくない方向へ導く助言になることを念頭に置かないといけないですね。

 

これを読んでいる人にも通じることありませんか?

 

『腰痛改善 = 良い姿勢』っていうのは間違っているかもしれません。

 

なので、最近では私も『良い姿勢にしましょう』とは言わなくなりました。

 

なんてったって、そのいい姿勢で腰痛が治るなんて根拠がないから。

 

腰痛を治すなら、姿勢よりもまず、患者さんのことを聞き切る問診を極めていってください。

 

P.S.

 

ちなみに、テーブルと椅子の距離は、座ったときおなかの前に、こぶし一つ分の隙間があることが理想らしいです。

 

ついついくっつけすぎてしまいますが、ちょっと余裕があるくらいがちょうどいいみたいですよ!


この記事を書いた人

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橋本祐一

福岡県在住の理学療法士。【JADMT公認】オランダ準徒手療法士。四肢コース・福岡校講師研修中。総合病院、整形外科クリニックを経験。普段は、主に一般の整形疾患からスポーツ障害の中学生・高校生などの治療を行なっている。休日に息子と戯れ合う時は、全力で遊ぶ一児の父。