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初回で誤った治療をしないための話
2022.01.16from 橋本 祐一 @自宅デスクより
11月後半の寒くなってきたころのことなんですけど、家にハチが出たんです!!
この時期にハチ!?冬眠する時期なんじゃない!?って思いますよね。
急にリビングから、
「ハチがおるーーーーーー!!」ってな感じで。
奥さんも子供もビビってしまって身動き取れず、家の隅っこで避難していたんです。
実は、私も虫は苦手なほうで、心の中ではハッキリ言ってビビってたんです。
ですけど、ここは男を見せないと!!って意気込んだんですよね。
ホウキを準備していざ出陣!!
私が虫が苦手なのは知っており、不安そうな面持ちで見守っていたんです。
結構大きな音で『ブーン』とスズメバチと同じような音がしたので、音だけ聞いたら凶暴なハチなのではと疑ってしまいます。さらにビビっちゃいましたね。
でも、意外とあっさりと外へ逃がすことができたんです。
子供も「お父さんすごーい!」なんて言うもんだからドヤってしまいました。
意外と冷静に退治(逃がす)できたので、前の自分だったらできなかったことですけど、やればできるんだなと我ながら感心したんです。笑
まあ、今考えるとこの時期の虫は冬眠時期で動き自体も遅くなっていて逃しやすかったんでしょうね。
私も子供の頃はアリの行列をずっと見ていたり、クワガタやカブトムシを捕ったりして遊んでいて、なんなら図鑑とか持って詳しかった方なんです。
でも大人になるとなぜか虫が触れない、虫が嫌いになっていったんですよね。
あなたもどうですか?
昔は、自然があちこちにあって、家に虫が出ることってごく自然でしたよね。私の田舎のおばあちゃん家には、トカゲやヤモリも出てました。
でも最近では、特に都市部で、家の中に虫が出たら大騒ぎ、ゴキブリを見た日には大事件となることもありますよね。
私のうちもその一つで、「虫=害悪、不潔だ」という印象が強くて、家に出た虫はどうにかして排除したいという傾向が強くなっているのがだんだんと嫌いになって言った経緯かもしれないです。
でも、今はそんな虫にも大袈裟ですけど、私自身に守るものができたので退治できたり、息子がダンゴムシをポケットから取り出したりとサプライズをしてくれるおかげか、虫嫌いが治ってきたんです。
こんなきっかけでもビビってできなかったことが自然とできるようになるんだなぁと思ったんですよね。
意外と人間って環境が変わると変われるんだと気付いたんです。
ん!?今、ハッと気付いたんですけど、臨床でもビビってできなかったことってないですか?
今思えば、私も患者さんの前で表情に出さないにしても、わからない、経験がないからビビってしまって何もできなかったことが、、、。
ってことを思い出したので、今回はそんなお話をしたいと思います。
両肘に痛みを抱える患者さん
先日、両側外側上顆炎の診断を受けリハビリに来られた患者さんがいたんです。
その患者さんは、全身に痛みを訴えていて、一番痛みが出ている場所が、両肘の外側上顆の周囲が痛いとのこと。
ちなみに、私も勤め先の病院はクリニックで、外来をメインに患者さんを診させていただいているのですが、1人あたりの時間は1単位、20分でリハビリをしているんです。
でも、今回は時間に余裕があったので、2単位40分の時間をかけて挑むことができたんで、今回もしっかりと患者さんの痛みと向き合うために、まずはいつも通り問診を開始!!
・炎症所見はなく、夜間の痛みもない。
・全身が痛くて困っていたが、最近特に両肘の外側上顆の広い範囲で痛い。
・肘を動かしたり圧迫してもそこまで痛くはないが、ズーンと重くなるような痛さ。
・痺れはなく、力も入る。
・ずっと前から肩こりはひどく頭痛もたまにある。
・特にぶつけたりなどの外傷の記憶もない。
今回のケースは肘に痛みの原因がない関連痛ではないかと思ったんですよね。
続けて患者さんに首を後ろに倒してもらって誘導したんです。すると、肘の痛みが若干強まったんですよね。
この患者さんの姿勢自体がすごく円背が強くなって、その状況で首を後ろに倒すと下位頚椎の椎間関節に過度に圧迫ストレスが加わりやすくなると思ったんです。
ちなみに関連痛ってどんな痛みなのかって気になりますよね?
関連痛って言うと思い浮かぶものは、内臓が原因での関連痛などではないですか?
まさにその通りで、心臓が悪い場合、胸部痛などの痛みならわかりやすいですが、左肩から腕にかけて痛みを感じてしまったりするんです。
でも、関連痛って内臓だけに起こるわけではなくて、関連痛を引き起こす組織ってあるんです。
その組織に圧迫や伸張などのメカニカルストレスが加わると、そのメカニカルストレスが加わっているところに痛みが出るのではなく、全く別の場所に痛みが出てくるんです。
他にも関連痛なのかどうか判断する評価項目はあるのですが、話が長くなるので今回は割愛して、またの機会にブログで紹介しますね。
話は戻って、今回の患者さんも関連痛で間違いない!
だって痛みが出ている場所はデルマトームではC6、骨膜の感覚神経分布のスクレロトームはC6、7だし、少し確認のためにC6・7の圧痛を確認したら飛び上がるほどのリアクションだったんです。
よし、頚椎からくる関連痛だ!!治療開始しよう!!
ってなるんですが、まだ私はこれだけでは治療しないんです。
まだまだ問診をしつこくしていきます!!
治療歴のことを気になったので聞いてみたら、
「ここにくる2〜3週前に整骨院に行って肘や肩周りの筋肉が硬くなっているのが原因だろうとのことでマッサージと電気治療してもらったら次の日に起き上がれないくらい腹痛に見舞われて1週間くらい入院したんです。」
「その時に言われたのが通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないので過敏性腸症候群ではないかと言われました。」
ってお話をされながら思い出してしまったのか、表情がかなり曇ってしまったんです。
さっき圧痛を確認した時の飛び上がるほどのリアクションもこのせいもあるのではないかと思ったんですよね。
さらに話を進めていくと、10才のお子さんがおり、そのお子さんに障害があるそうで、そのストレスで患者さん自身が鬱になって、全身が痛みだし、線維性筋痛症の診断も受けたとのことだったんです。
ここでやっと私なりの仮説を立てて評価をし、どんな治療をしていくのか選択していくんですが、
ここで私がとった選択肢とは何かわかりますか?
触らずに治療するという選択!?
私が選択肢したことは、触らない!!
触らないと言うだけでは聞こえが悪いのですが、あえて触らずに治療をしていくことを選択したんです。
なぜなら問診で、治療に対する恐怖心と治療した後の入院の記憶があるので触っても良い結果は得られないと思ったことと、
さらにはこの患者さんは自律神経機能が正常に働いていないのではと思ったので、自律神経の治療をするべきだと考えたんですよね。
ちなみに自律神経の交感神経が過剰に働くと、
血管の収縮による血行障害が起こる
↓ ↓ ↓
体に栄養・酸素・体温が全身に行き渡らない
↓ ↓ ↓
疲労物質や老廃物が排出されにくくなる
↓ ↓ ↓
疲労が抜けず、疲れや不調を抱える
↓ ↓ ↓
身体の不調自体がストレスとなり、さらに交感神経が優位になる。
という悪循環に陥ってしまいます。
そうなるとそもそもの体を治そうとする機能も低下してしまうので、あえて自律神経へ直接アプローチをしてみようと思ったんです。
なので患者さんにしっかりと今回の痛みの原因となぜ治らないのかの自律神経の説明をした上で、これからやってもらうことをプレゼンしたんです。
その方法は、『交代浴』を紹介したんですよね。
少し熱めのお風呂に2〜3分入って、シャワーの冷水で背中全体を30秒〜60秒当てて、再び風呂に入って、、、
これを4〜5回やってほしいんです。って伝えたんです。
なぜそれを進めたのかというと、脊柱には自律神経節がありますよね?
自律神経って血管の拡張・収縮を行うんですが、体を温めるとそこの部位の血管や毛細血管は拡張します。そして冷やすこと、血管は縮むんです。
これを繰り返すことで血管のポンプ作用が強制的に行われて、良い血液の循環を促してくれるんです。
この作用を利用して、自宅で1週間次回のリハビリまでに毎日してほしい。と伝えて今日は何もせずに終了したんです。
患者さんも若干半信半疑でしたが、次回のリハビリには来ていただいて、反応はどうかと伺ったんです。
するとペインスケールで10/10から4/10と減っていたんです!!
私は思わず、心の中でガッツポーズ!!
患者さんもこの結果に驚いていて、交代浴をしたことで痛みが少し減ったことだけでなく、あまり汗をかいたりしなかったのが、汗をかくようになったんだそうです。
まだまだ、完全に痛みがなくなっているわけではないので、継続してもらうことが大事であることを伝えて、最近では自分の好きなことをしてもらったり、体を動かしてストレス解消を自らするようになっていたんです。
今回私は、治療をせずに問診だけにとどめて、自律神経機能へアプローチをしたことでどうなるのかの結果を患者さんにも知って欲しかったから触らずに治療する選択をしました。
過去の自分であれば、何か結果を残そうと触って治療していたと思います。
だって触らないと患者さんからクレームが出てしまうのではとビビっていたからなんです。
でもなんでそうなるのかって、自分の中でしっかりとした必要な問診をせずに、曖昧に評価・治療したり、全く的外れな仮説を立ててしまって結果が出せないからだと今は思います。
また、今回のケース以外でも触ってはいけないことや治療すべきではないこともありますよね。
それは、レッドフラッグ もそうです。
・悪性腫瘍
・神経の腫瘍
・脊椎の腫瘍病変
・脳や脊髄神経の障害
・馬尾症候群
・骨折
などなど
これって絶対治療をしてはいけないことや、急性期であれば炎症が落ち着くまでの期間をしっかり把握し、患者さんに説明することが大事です。
または、リハビリができない場合のレッドフラッグ の場合は、専門医療機関に行ってもらい、検査を受けて異常がないかを見極めなくてはいけません。
これを自信持ってできないと患者さんを不幸にするだけでなく、治療家も不利益を被ってしまいます。
改めて、あなたはあえて触らないという選択をできますか?
P.S.
ちなみに今回、遭遇したハチはどんな凶暴なやつだったんだと調べて見たんですけど、クマバチだったんです。
クマバチって体は真っ黒。胸に黄色い毛が生えているやつです。
でも、クマバチって性格は温厚らしく、人間にはほとんど興味を示さないらしいんです。
オスのクマバチに至っては針を持っていないし、メスは針を持っているみたいなんですが、滅多なことでは人を刺すこともないらしいんですよ。
そんなハチに私もビビっちゃって恥ずかしい限りです。笑