慢性腰痛はこれを知っておくべき | 日本オランダ徒手療法協会

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慢性腰痛はこれを知っておくべき

2022.10.02

from 橋本 祐一 @自宅デスクより

 

藤田医科大学が「やる気スイッチのメカニズム」を解明したという記事を見たんですよね。

 

やる気スイッチのメカニズム!?って思いませんでした?

 

「周りから褒められると、次も頑張ろうと思う」

 

行動をおこすと報酬(褒められる)があるという関連付けにより、行動に対する意欲(やる気)が生まれる。

 

報酬の存在を知覚・学習するにはドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が関係すると考えられてきましたが、そのメカニズムまでは解明されていなかったらしいんです。

 

今回は、

 

”脳領域である側坐核の神経細胞において、ドーパミン刺激により神経細胞の興奮性が高まり、報酬行動を促進できることがマウスを用いて明らかになった”

 

このメカニズムを藤田医科大学精神・神経病態解明センターの研究グループが発表したんですよね。

 

この結果が、快楽消失や意欲減退を徴候とする精神疾患に対して新たな治療標的になりえるのでは?と期待されていました。

 

ドーパミンの役割って 簡単に言うと、快感や多幸感を得たり、意欲を作ったり、感じたりする。

 

なので、ドーパミン不足やドーパミンが欠乏状態になると、

 

・うつ

・不眠

・無気力

・集中力低下

・自己無価値感

・ストレス障害

・不安障害

などなど

 

まだまだ色々な症状を引き起こすと考えられていますよね。

 

こんな症状のある方への「やる気スイッチ」を利用して治療を展開できるのは今後の研究の展望に期待したいですね。

 

さて、

 

リハビリでも痛みが原因で意欲がなくなったり、やる気がなくなって最悪の場合、痛みがさらに悪化することってあると思います。

 

転倒によって歩くのが怖くなり、心理的な原因で何をするにもやる気がなくなって腰痛が治らない、、、。

 

動くと痛いから動きたくない。と負のスパイラル状態になっていく。

 

動かなくなっての安静にしていたのが腰痛の原因だと思っていたのに本当の痛みの原因は他にあったという、私の勘違いからなかなか腰痛が治らなかったお話を今回はさせてもらいたいと思います。

 

10年以上治らない腰痛

 

 

腰痛が問題で日常生活が難しい80代の患者さんを診たことがあったんです。

 

以前から他の整形外科を定期的に受診して、リハビリも受けていたらしいのですが、なかなか治らないとの事だったんです。

 

その時の通院は、自分でバスに乗って通っていたのですが、今回は家族の方と一緒に来院されていたんです。

 

体型はふくよかで、大人しい感じ。

 

数年前に腰を痛めて以来、外に出るのが怖くなってしまったらしいんです。

 

長い間腰痛に悩まされているから自律神経の問題かな?って感じで、問診を始めていったんです。

 

でも、なぜ自律神経なのか?

 

腰痛ガイドラインにもあるんだけど、6ヶ月以降の腰痛は慢性腰痛で問題点は心理社会的要因の可能性があるので選別していく必要があるんですよね。

 

なので、自律神経の可能性を頭に入れながら問診をしていく。

 

じゃあ、なんで自律神経の問題ってわかっているのに問診をするのか?

 

それは、ただ単に自律神経が問題で腰痛になっているとリハビリする側がわかっていても患者さんは心理社会的要因が腰痛っていうことを知らない。

 

そんな状況で治療を進めていてもうまくいかないことの方が多いので、それをしっかりと説明するためにも、問診をする必要があるんです。

 

あと、心理社会的要因の何に原因があるかを深掘りする為にも改めて問診する必要があるからなんです。

 

色々と問診で話をしていると、

 

ずっと腰痛を抱えてはいたけど、きっかけは3年前に1人で散歩していた時に足を滑らせて尻餅をついて、そこから動けなくなったらしいです。

 

その時、周りに人がいなくて、1時間ほどその場に座り込んでいたことがトラウマみたいになっているんです。

 

痛みの箇所は、腰全体で動かすたびに痛いとの事。

 

トイレなどに行こうと立ち上がると痛みが出てしまうし、歩き始めに痛い。

 

こうなると、痛みのせいもあって動く気力もなくなり、何をするにもやる気もなくなっていきそうですよね。

 

さらに、自律神経系の話を聞くと

・便秘

・冷え性

・常に眠い

・汗は全くかかない

・疲れやすい

 

という感じ。

 

こうなると、やっぱり自律神経に問題があるって確信したんです。

 

そこから評価を行い、胸椎から腰椎にかけて痛みがある範囲の自律神経支配のマニュピレーションと脊柱の動きを出すモビライゼーションを行ったんです。

 

施術を行なった後に、立ち上がって歩いてもらったんです。

 

すると、一歩目の痛みが全くなくなったんですよね。

 

患者さんも全然痛くないから驚いてて、付き添いに来られていた家族さんもこんなにスムーズに歩いたのを久しく見ていなかったみたいでびっくりしていたんです。

 

これで、歩く不安を少しづつ減らしていけばよくなっていくだろうと思っていたんですけど、、、。

 

まあ、そんなに甘くはなかったんです。

 

リハビリを開始して、自主トレもしてくれてて、少しずつ前よりも動くことができるようになったんですけど、歩き始めの痛みはなかなか良くならなかったんです。

 

リハをすればその時はよくなるけど、また痛くなってしまう。

 

寝不足が自律神経を狂わす!?

 

 

なんでだろう?って悩んでいた時に付き添いで来られていた家族にも話を聞いたんですけど、

 

家族:「橋本先生、あの実は家で母が運動はしているんですけど、それ以外での日中はずっと眠そうなんです」

 

私:「〇〇さん、夜は寝れていますか?」

 

患者さん:「夜中に編み物をやっています。ずっとやってるよ。」

 

この言葉で、なるほど〜って思ったんです。

 

 

 

この方の心理社会的要因は睡眠だったんです。

 

そういえば、問診をした時に常に眠いっていうのがあったけど、そこまで重要視していなかったんです。

 

でも、睡眠っていうのは自律神経においては重要ですよね。

 

睡眠と自律神経の関わりとしては、

 

自律神経には活動する為の「交感神経」とリラックスする為の「副交感神経」があります。

 

日中は「交感神経」が優位、夜間は「副交感神経」が優位となります。

 

睡眠中は「副交感神経」が優位で、血圧や心拍数、呼吸数、体温が低下し、代謝も低下します。同時に、疲労回復を進め明日の活動のために心身を整えていくのです。

 

つまり、睡眠が悪いことで、交感神経優位の状態が常に起こり、身体的なパフォーマンスが十分に発揮できない可能性が起こるんです。

 

要は、体を動かそうとした時に、全身の筋肉が緊張して行うわけだから、常にこわばった状態になって、動きは乏しくなる。

 

さらに、痛みによっても交感神経が常に働いているから、ちょっとしたことでも痛みを感じてしまうんです。

 

リハビリをした後は、痛みなく歩けたり、スムーズに動けるのは、自律神経を整えた後だからだったんですよね。

 

それから、この患者さんと家族にそのことを説明して、深夜に作業をしないような生活リズムをつけるように促したんです。

 

すると、最初は患者さんのルーティンだったことをあえてやめてもらうことだったんで、難色を示していたんですけど、家族さんの協力もあって規則正しい生活をしてくれるようになったんです。

 

それから、徐々に腰痛は無くなって、患者さんの「やる気スイッチ」が入ったのか、

 

今まで怖がっていた散歩をしたい!っていうようになったんです。

 

腰痛を無くしたいから散歩がしたいという新たな目標に向けて今もリハビリを頑張っているんです。

 

腰痛に関して、徒手的なテクニックや運動も必要なことなんですけど、なんで腰が慢性的に続いたのかを知る必要があるし、家族からのヒントをもらえなければ分からなかった。

 

でも、

 

私が今まで睡眠に関してあまり重要視していなかったことで招いたことでもあったのですが、自律神経と睡眠に関してより深く学び、睡眠と腰痛に関することも考えるようになったんです。

 

今回は心理社会的要因からくる腰痛に関してお話ししましたが、治らない原因は他にもあるのでいろいろなことにアンテナを張って知識を入れていくことは本当に大事だと思わせる症例でした。 

 

P.S.

 

ちなみにあなたのやる気スイッチってなんですか?

 

私のやる気スイッチも「褒められる」です。

 

褒められて伸びるタイプ。

 

要するに、単純な性格をしているんですよね。笑

 

P.P.S.

腰痛が軽減したこの患者さんですが、

「散歩をしたい!」という次の目標に向けては『運動療法』が必要です。

 

腰痛の運動療法について詳しく知りたい方は

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この記事を書いた人

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橋本祐一

福岡県在住の理学療法士。【JADMT公認】オランダ準徒手療法士。四肢コース・福岡校講師研修中。総合病院、整形外科クリニックを経験。普段は、主に一般の整形疾患からスポーツ障害の中学生・高校生などの治療を行なっている。休日に息子と戯れ合う時は、全力で遊ぶ一児の父。