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誤った常識は慢性腰痛を招く
2019.05.10From:長島 将太
@姪浜のスタバより
課長「え〜〜来月から実習生が来るので、新たな実習体制について話をします」
「・・・・・・(省略)と言う訳で皆さん宜しくお願いします」
課長から出た体制にスタッフ一同、騒然となった。
この時期になると、九州各地から緊張と不安を胸にたくさん実習生がやってきます。
今年は新元号『令和』になって初の実習生なので、何か特別感があるようで実習生の期待値のハードルも少し高くなっているような気がしてます(笑)
ただ、今年は期待していた『特別な何か』が少し違ったようです。
それは、、、、
・飲み会禁止
・レポート禁止
・宿題はほぼ禁止
・自宅学習は週◯時間まで(厚労省から直々のお達し、、汗)
「嘘でしょ!?」と言いたくなるぐらいの内容。
新たな実習スタイルを聞いて、私の実習生時代とは比べ物にならないくらいスタイルが変化していたんです。そして、同時に今後のリハビリ業界がどうなっていくのかと不安になりました(汗)
このように昔は当たり前になっていた「常識」が10年後には「非常識」になっていることって医療業界にはごまんとありますよね。
今回は、とある病院で「昔の常識」を指導され長年の腰痛を抱えていた患者さんの話をします。
「安静」の言葉で腰痛は重症化する!?
今回の患者さんは30代前半の女性。
いわゆる長年の腰痛を患っている「慢性腰痛」の方だったんですね。
当時、自宅で着替え中に「ぎっくり腰」を起こし、そのまま動けなくなり、緊急搬送され入院してきました。
今回もいつも通り問診で「レッドフラッグ」「神経根症状」「非特異的腰痛」のいずれかを見極める所から始め、様々なカテゴリーを情報収集していったんです。
色々と聞いていく内に「ぎっくり腰」を起こした時の対処法についての全容が分かってきたのですが、その対処法が彼女を苦しめる結果となっていました。
それは「腰痛が出た時は安静に」というとある医師からの言葉でした。
この「安静」という言葉。
非常に厄介者で、患者さんの捉え方次第では腰痛が重症化したり、長期化してしまう危険ワードなんですよね。
この言葉って医療現場でよく聞く言葉だと思いませんか?
「体調が悪い時には安静にして下さい」
「無理せず安静にしておいて下さい」
時と場合によっては、非常に優しさのある言葉ですが、こと腰痛に限っては「NGワード」なんですね。
なぜなら、腰痛の安静は「絶対安静」ではないからなんです。
近年言われている「ぎっくり腰」後の安静は、「痛みが我慢できる範囲で動いてね」が正しい安静なんですね。これ是非覚えておいて下さい!
「急性腰痛」は3日以上の安静を避けるべし
とは言うものの。
患者さんにとってぎっくり腰の痛みは、二度と経験したくないぐらい強烈なものなんです。(私は幸いにも、まだ味わった事が無いのですが)
アメリカでは「魔女の一撃」と喩えられるぐらいですから、、、(苦笑)
そのため「動くことが怖い」「またあの痛みに襲われる」といった恐怖心
「もう歩けなくなるんじゃないのか」という不安感を患者さんは強く抱きます。
今回の患者さんも「このまま動けなくなって死ぬんじゃ無いのか」と思ったほどだそうです。そして、彼女は不幸にも医師から「腰痛がある時は安静に」という誤指示を頂いた事もあり、自宅で3ヶ月もしっかり安静にしていたようなんです。
これでは、確実に「慢性腰痛」のエリートコースまっしぐらです。
もし、この時医師が「あなたの腰痛は大丈夫ですよ」「骨にも異常はありませんから、痛みが我慢できる範囲で動くようにしていると1週間もすれば良くなってきますからね」と正しい対応をしていれば重症化していなかったのかもしれません。少なからず3ヶ月の安静は避けれた筈です。
もし、皆さんの目の前に同じような境遇の患者さんが来たらどうしますか?
今回の場合、私は患者さんには以下の事を伝えました。
・主治医からの説明も含め、構造上の問題はないこと
・誤った先入観(情報)は痛みを増幅させてしまうこと(歪んだ認知の是正)
・痛みが強い3日以内は無理をせず、痛みが落ち着く3日後からは少しづつ動ける範囲を広げ
ていく事(痛みが多少あっても行動範囲を広げていくこと)
・コルセットは基本的に意味がない事(コルセットをつけて安心感がある場合は、着けてもOK)
参考文献:Chou R. et al, Ann Intern Med, 2007
「Nonpharmacologic therapies for acute and chronic low back pain: a review of the evidence for an American Pain Society/American College of Physicians clinical practice guideline.」
・教えた秘密の腰痛体操を必ず動く前にやること
今回のように、過去の誤った情報(昔の常識)により、誤った認識を抱えてしまっている腰痛患者さんはとても多いのが実情ですが、その慢性腰痛を作り上げてあげているのは私たち医療従事者の対応かもしれません。
「昔の常識」に捉われず、常に「今の常識」に目を向けて情報をブラッシュアップすることが患者さんを「慢性化」させない治療家としての使命ではないでしょうか。
PS
実習の昔の常識は、「飲み会が実習本番」「レポートは100枚ぐらい書けるでしょ?」「今日みた症例全員分の自己学習してきてね♡」が当たり前でした(泣)