神経根症状を治す3つのポイント | 日本オランダ徒手療法協会

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神経根症状を治す3つのポイント

2021.07.22

From:長島 将太

@自宅オフィスより

 

今日は7月17日。

 

オリンピックまで

残り1週間!

 

今日はオリンピックにちなんで、

こんな話をしたいと思います。

 

『1マイル4分の壁』

 

あなたはこの話、

聞いたことありますか?

 

今から約70年ほど前。

 

当時の陸上競技には、

こんな常識がありました。

 

それは、

『1マイルを4分以内で走りきることなんて無理だ…』

 

もし、4分以内で走りきることが出来れば、

『スポーツ最高のゴール』

『エベレスト登頂に匹敵する偉業』などと言われるほど

人間の限界ギリギリの挑戦だったんです。

 

当時の医者や科学者は、

1マイル4分を切るのは不可能で、

挑戦すれば死に至るとまで言われました。

 

しかし、

1954年5月6日。

 

死を覚悟するまでの人類の壁が

破られる日が来たのです。

 

『3分59秒04』

 

この記録を樹立した選手こそ、

この話の主役であるロジャー・バニスター氏です。

 

彼は、イギリス屈指の中距離ランナーでした。

 

周囲から期待されて望んだ

1952年の『ヘルシンキオリンピック』では、

思うような結果を残せず、引退を決意していたのです。

 

彼の引退前最後の挑戦として、

参加したのがオリンピックから2年後、、、

 

1954年5月6日の大会でした。

 

最後の挑戦に向けて綿密な計画を立て、

チャレンジした結果、前人未到の記録を打ち立てたのです。

この日、31年間もの間

人類が超えることができなかった壁が

打ち破られた瞬間だったのです。

 

『人間に限界はない』

 

まさに、この言葉を象徴する

エピソードではないでしょうか。

 

今年のオリンピックも

ロジャーバニスター同様に、

 

人間の限界にチャレンジする

アスリートの活躍から目が離せません!!

 

さて、今回は

椎間板ヘルニアの治療について

話をしたいと思います。

 

下肢の痛みが強いヘルニア患者

 

殿部と下肢の痛みが強い患者さん。

 

診断名は『腰椎椎間板ヘルニア』

 

症状として、

・じっとしてても痛い

・動くと余計に痛い

・(右)片側のしびれ

・右の殿部とふくらはぎの痛み(L5-S1)

・痛みは『殿部のみの場合』

    『殿部からふくらはぎに放散する痛み』

・筋力低下(+)

・腱反射(±)

・疼痛回避姿勢(イメージ右図)

 

症状が悪化する姿勢として、

 

・後屈や後屈+右側屈で痛み↑↑↑

(いわゆるケンプテスト肢位)

参照画像:https://www.hindawi.com/journals/aorth/2018/6567139/

 

イメージ図のようにアライメントにも特徴があったんだけど、

リアルな方がより崩れが凄いから本当は直接見てほしい。

 

(患者さんには写真や動画使用の許可はもらってるので、

なんかの機会にお見せできればと思います…汗)

 

これらの情報から見てわかるように、

神経根症状によって痛みが出ている患者さん。

 

こんなケースの場合。

以下の3つが大事だと思ってます。

 

神経根症状を治すための3つのポイント

 

それは・・・

 

⑴ 神経根の損傷程度を把握すること

 

⑵ 炎症を強めないための治療の方向性を決めること

 

⑶ 患者さんに『どのくらいの期間で痛みが治るか?』の説明

 

この神経根の痛み具合を探るのは、

非常に大事なんですよね。

 

『どのくらいの範囲を動かせるのか?』

 

『痛みに対しての過敏性はどのくらいか?』…など

 

炎症具合で治り方も治るスピードも

異なってくるからです。

 

そして、

『どんな動きで症状が悪化するか?』も知ってると

治療の方向性や動作指導なんかで役に立ちますよね。

 

ちなみに、

『この動作は絶対にやっちゃダメですよ!』

 

なんて指導はNG。

 

患者さんの恐怖や不安を煽るような指導は最悪です(汗)

その言葉がけが患者さんの頭の中で刷り込まれてしまい、

患者さんは動くことを怖がってしまいます。

 

その結果、

痛みをより感じやすくなってしまいます。

 

ですので、

声かけや動作指導を行う場合は、

これらのことを念頭において下さいね。

 

話を戻しましょう。

 

今回の患者さんの場合の治療の方向性は、

 

『L5/S1椎間孔部での神経根の圧迫状態を少なくすること』

 

『神経根の治癒過程に応じて、運動方向や範囲を広げていくこと』

 

『恐怖や不安を過度に抱かないような症状の説明、治療プランの話』

 

このような、

3つのポイントを中心に治療をしていきました。

 

自分の見立て通り、

リハビリ開始から2ヶ月もすると、

痛みも1/3まで落ち着き。

(当時:VAS 90mm →2ヶ月後 20mm)

 

患者さん自身でも痛みのコントロールも

できるようになってきました。

 

まだケンプテストでは症状は出るものの、

経過とともに順調に治ってきてたんですね。

 

ずっと手放せなかったコルセットもゴミ箱へ。

 

そして、

さらに1ヶ月過ぎた頃。

 

患者さんからこんな相談がありました。

 

『だいぶ痛みも落ち着いてきたので、

そろそろノルディックウォークを始めてもいいですか?』

 

もし、あなたなら

どんな判断をしますか?

 

『そうですね。徐々に始めていきましょう!』

 

『いやーまだ難しいと思いますよ。もう少しですね。』

 

『主治医の許可が出れば良いと思いますよ!』

 

実は、

順調に快方に向かっていたこの患者さんですが、

この判断が患者さんの運命を左右することに…

 

負荷アップの基準は曖昧になりやすいですが、

医師ではなく、患者さんのカラダのことをよく知っている

治療家であるあなたの判断が非常に重要になってきます。

 

ですが、

判断基準を持っていなければ、

 

医師頼みになってしまったり…

 

なんとなく許可を出すことになったり…

 

良い結果に繋がりません。

 

この重要な『許可を出す基準』については、

次のメルマガで話をしたいと思います。

 

PS

1マイル競走(約1.6km)

 

1954年当時の世界記録は、

ロジャー・バニスター氏の『3分59秒04』

 

現在の世界記録は、

1999年に樹立された

ヒシャム・エルゲルージ氏の『3分43秒13』

 

1マイル4分の壁から45年で

『15秒』も縮まってます!

 

さて、今年のオリンピックでの

22年振りの記録更新となるか目が離せません!


この記事を書いた人

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長島 将太

理学療法士。南川整形外科病院(http://minamikawa-hp.com/about/rehabilitation.html )JADMT認定 徒手療法士。プロの選手からインカレ・インターハイ選手など数多くトップアスリートを診てきている。また、オランダ徒手療法ではチーフ講師として本物の医療を伝えるために後進の育成にも余念のない。サーフィンをこよなく愛する2児の父。