そもそも徒手療法とは? – 定義と本質について – | 日本オランダ徒手療法協会

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そもそも徒手療法とは? – 定義と本質について –

2017.10.17

こんにちは!日本オランダ徒手療法協会の香取です。

 

最近は、FacebookやTwitterを開くと「筋膜の調整」、「内臓の調整」、「姿勢改善」、「何分で変わる」などいろんな治療手技についての情報が溢れていますよね。

 

果たしてどの治療手技がいいのでしょうか?

 

私は、患者の問題に合わせて治療手技を選択することが大事だと思うので、きちんと評価から理学療法における全体像を学ぶことができる「徒手療法」が良いと思います。

 

でも、徒手療法って、いろんな流派があるし、なんとなくは知っているけど…

 

手を使って治療する手技だよね⁇ みたいに、徒手療法の定義って曖昧じゃないですか?

 

今日は、そんな知っているようで知らない「徒手療法」について、一緒に理解を深めていけたらと思います。

 

徒手療法って?

そもそも、「徒手療法」とはどうゆう意味なのでしょうか?

 

徒手療法(manual therapy)
関節とそれに関連した軟部組織の障害を評価し治療する系統的な方法で、その目的は痛みを減少させたり、運動性を増したりあるいは減らしたりすることによって、機能を正常化することである。

 

さらに、こうも記載されています。

対象者に対して他動的な治療を行うだけでなく、機能異常についての情報を提供して問題点を理解してもらうように指導する。そして、対象者自らが積極的に治療に参加し、再発予防へと導く系統的な教育・治療体系でもある。

 

奈良 勲ら:系統別・治療手技の展開 (協同医書出版社)  

教科書的には少し難しく表現されることが多いですが、

 

日本ではこのあたりの定義がしっかりとされていないため、「徒手療法=手を使った治療法」などという間違った認識が広まってしまっているのではないでしょうか?

 

つまり、きちんと評価を行ない、問題となる組織毎(筋、神経、靭帯、腱、血管…etx)に治療手技を選択し、生活習慣などの行動や、歪んだ認知に対しても指導/教育するところまで、これらすべて含めて「徒手療法」だということです。

 

また、狭義や広義の解釈により、運動療法や物理療法を含まなかったりするところもあるのですが。

 

私は、問題となっている組織の機能回復を図るのに、徒手を用いた治療(mobilization…etc)よりも、物理療法や運動療法の方が効果的な場合があるので、それらも含めて「徒手療法」だと考えています。

 

実際にオランダ徒手療法では、原因組織や目的によって徒手を用いた治療だけでなく、物理療法も運動療法も積極的に併用しています。

 

徒手療法の種類とオランダ徒手療法の特徴

現在、日本には様々な国の徒手療法があり、なかには日本で体系化された徒手療法もあります。

主なものを下記にまとめました。

  • Kaltenborn-Evjenth-Concept(=Nordic System)
  • Maitland
  • Paris
  • Mulligan Technique
  • マッケンジー法
  • SJF(synovial joint facilitation)
  • AKA(Arthrokinematic Approach)
  • ドイツ徒手医学
  • オランダ徒手療法(Dutch Manual Therapy)

 

それぞれで用語における定義などが異なったり、評価や治療手技も異なります。

 

しかし、関節モビライゼーションや神経系モビライゼーションなど一部の治療手技に関しては、基本原則(凹凸の法則など)は変わらないためやり方は似ています。

 

どれが正解ということはないと思いますし、それぞれ重要視しているポイントが異なるため、こんなことが学びたいという目的を持って勉強会に参加してみるのも良いかと思います。

 

他の団体のことは詳しく述べられませんが、オランダ徒手療法が重要視しているポイントを「3つ」説明したいと思います。

 

① 問診による評価/仮説立て

② 結果にこだわった、柔軟で豊富なアプローチ/環境設定

③ 身体パフォーマンスを変えるトレーニング

 

 問診による評価/仮説立て

流派によっては、他動/自動の徒手的検査を重要な判断基準としていたり、そこで得られる反応を重要視することもありますが、オランダ徒手療法では、実際に触って評価をする前に、問診により原因となる組織や治らない要因、患者の身の回りの環境について細かく情報を集め、分析し、治療戦略や仮説を立てていきます。

 

そうすることで、リスクを排除でき、仮説を検証するために効率的に徒手的な検査を行うことができます。

 

また、複数の仮説を立てることで、1つの仮説が外れても思考が停止することなく、スムーズに他の選択肢を検討できるようになります。

 

 結果にこだわった、柔軟で豊富なアプローチ/環境設定

後で詳しく説明しますが、徒手を用いた治療手技のみでは、残念ながらリハビリテーションとしては不十分です。

 

そのため、オランダ徒手療法では、徒手的な治療手技だけではなく、自律神経や認知・ストレスコントロールに対するアプローチが含まれていたり、生活・仕事・趣味・スポーツなど個々の環境を細かくコントロールしたり、指導を行います。

 

身体パフォーマンスを変えるトレーニング

オランダ徒手療法では、再発予防を超えて身体パフォーマンスを改善することを目標としています。

 

例えば、日常生活レベルで頻繁に膝に水が溜まってしまう方がいたとしたら、膝の不安定性や原因組織の抵抗力が改善され、水が溜まることなく、歩行スピードが上がったり、歩行距離が伸びたりといった具合です。

 

そのために、動作分析やトレーニングの方法や戦略は、負荷量・回数に至るまで細かく設定します。

  

徒手療法で用いる治療手技とは?

徒手療法では、問題となる組織毎(筋、神経、靭帯、腱、血管…etx)に治療手技を選択していきます。

ここでは、オランダ徒手療法で取り扱っている治療手技の一部を紹介します。

 

関節マニピュレーション

<対象組織>  関節  <効果>  関節可動域の拡大、疼痛の軽減…etc

 

 

関節モビライゼーション

<対象組織>  関節  <効果>  関節可動域の拡大、疼痛の軽減…etc

 

 

神経モビライゼーション(ストレッチ・スライド)

<対象組織>  神経  <効果> 関節可動域の拡大、しびれの軽減…etc

 

 

軟部組織リリース

 <対象組織> 筋膜  <効果> 関節可動域の拡大、疼痛の軽減…etc

 

ストレッチング

<対象組織> 筋  <効果> 関節可動域の拡大、筋硬結の軽減…etc

 

 

治療手技だけでは治らない⁉︎

現在の理学療法士や柔道整復師、身体の治療に携わる多くの方は、より痛みに効く/可動域・姿勢が変わる治療手技…

 

つまり、その場での、目先の変化を求め過ぎているのではないでしょうか?

 

もちろん即時的な変化を引き起こす治療技術も必要ですが、

「over use」を例にとると、原因組織は「筋」にあったとしても、症状を引き起こす根本的な問題は、過剰な物理的ストレスの「負荷量」などにあります。

 

その場合は、過剰な負荷量をコントロールし、“組織を強く”していく運動療法やトレーニングプログラムを作成/処方できなければ、すぐ痛みが戻ってしまったり、再発してしまいます。

 

リハビリテーションに関わる方は、どうもこの部分のつながりが薄く、

 

治療手技で痛みや静的アライメントが戻ったから、

 

「スタビライズのために〇〇エクササイズ」

「コアを鍛えるためにピラティス」

 

など、個々の身体状況やリハビリの状況につながりが薄く、トレーニングの基本原則を無視した処方が多いように感じます。

 

これでは、いくら治療手技が良くても、患者は治りません。

 

しっかりと、リハビリ以外での生活/仕事/趣味/スポーツ…etcに関しても指導をできる必要があり、それが「徒手療法」の本質です。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?

少しでも「徒手療法」の認識は変わりましたか?

 

これから、保険診療はどんどん厳しさを増し、理学療法士や柔道整復師を含め、身体の治療に携わる方の人数も増える一方です(治療院の数はとっくに、全国のコンビニの数を抜いています)。

 

競合が増えることで自然と競争は激化し、「結果」が出せないセラピストは自分の望む環境の仕事に就くことは難しくなるでしょう。

 

そんな厳しい時代に、軸として「徒手療法」をしっかりと学ぶことは間違いなく武器になります!

 

今の時代はネット環境が充実しているので、まずは気になる団体の徒手療法を体験/比較してみてはいかがでしょうか?

 

オランダ徒手療法に関して言うと、定期的に勉強会も行っていますし、認定コースを無料で1日見学することもできます。

 

この機会にぜひ検討してみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


この記事を書いた人

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土屋 潤二

初のオランダ国家医療資格である「徒手療法士」。サッカー界に明るく、筑波大、オランダサッカー協会のインターン、サッカーの名門フェイエノールト・ロッテルダム、Jクラブの名古屋グランパスや横浜Fマリノス、SC相模原、陸上ホッケー女子日本代表、FC岐阜、プロゴルフなどに関与。国内外のアスリートやチームをサポートし続けるスポーツサイエンティストとの顔を持つ「医療」と「体力トレーニング」との2分野での専門家。