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診断名に惑わされた治療の末路
2020.07.14From:長島 将太
@自宅のデスクより
とうとう7月に突入しましたね!!
コロナ自粛ムードから一転、、、
あらゆる規制が緩和され、
あちこちで賑わいが戻ってきてますね。
また、リモートワークだった方も元の勤務体制に戻り
出張や営業で忙しさが戻ってきているようです。
ですが、
今回の一件で『働き方』が見直され、
リモートワークも『あり』と思っている方も多く
今後は仕事スタイルにもさらなる多様性が出てきそうですね。
ところで、リモートワークと言えば
長い時間PCに向かって会議したり、
資料を作成したりと長い時間座っている為か
リモートワーカーの肩こりや腰痛が急増しているらしいです。
個人的には、次回の国民生活基礎調査の動向が気になるところですが、、
もう一つ心配なのが『エコノミー症候群』です。
少し昔に遡りますが、、
サッカーの高原選手が2002年の日韓W杯を直前に『エコノミークラス症候群』を発症し、代表選考から外れる事になったニュースが非常に印象に残っています。
エコノミークラス症候群は、皆さんもご存知のように
長い時間同じ姿勢を続けてしまうと『静脈内に血栓』ができてしまうという病気です。
ただ、多くの方は無症状のため
血栓が出来てる事自体に気づかないのです。
ですが、
一度血栓が剥がれて心臓にまで飛んでしまうと
死の危険性もある非常にリスクのある病気。
もし、リモートワーカーの方がお近くにいれば
是非、予防法を教えて上げて下さいね。
さて、今回のテーマは
私たち治療家にも馴染みのある『〇〇症候群』について
話していきたいと思います。
よく疾患名のように用いられる『〇〇症候群』ですが、
この『症候群』がついている診断名には要注意です!!
何が要注意なのか?
私の失敗談を元に解説していきますね。
その痛み…本当に『〇〇症候群』が原因?
右肩痛で外来リハに来られた20代後半の女性。
診断名は『右肩インピンジメント症候群』
患者さんから話を聞くと、
・手を上げた時に右肩が痛い
・挙上80度〜100度あたりで瞬間的に痛みが走る
・右肩周りや首の付け根に重だるさがある(じっとしてても時々出現)
・右肩に凝りがある
・肩の動き自体に問題はない
・力の入りにくさが少しある
当時の私は、まだオランダ徒手の問診スタイルを知らなかったので
これらの情報を聞いた後、すぐに機能評価へ(苦笑)
評価結果は、、、
・肩の可動域制限なし(他動で動かしても痛みない)
・自動運動で一定範囲で痛み(+)
・インナーの棘上筋/棘下筋の筋力低下あり
・Neerインピンジテスト(+)
・肩甲骨を固定すると力が入りやすい
・・・・
・・・・
・・考え中
上記の評価から考える仮説としては、、
可動域は問題ないので、筋系の問題なと推測。
よくあるインピンジメントの典型例だな…
<仮説>
肩甲骨の固定する力が弱い:筋力低下?他の要因?
↓
インナーの力が入りにくくなっている:筋力低下?肩甲骨の問題?
↓
骨頭を関節に押さえつける力が弱まり
関節安定性が低下して痛みが出ている…
当時はこんな感じで考えていたと思います。
そして、リハビリでは
・肩甲骨周囲筋や腱板のトレーニング
・アンバランスになっている筋肉のリリース
・肩甲骨位置の修正指導など
こんな感じでリハビリしていました。
リハビリ後は患者さんも『楽になりました!』と
反応も良いのでそのまま経過を見る事に。
それから2週間…
リハビリ後の反応は良いもの、
なかなか症状が改善しない。
しかも、
首回りや肩周りの張りがだんだんと強くなっているとの事。
当時は自主トレの頑張りすぎかなと思っていたので、
運動負荷を下げたりしてましたが、それでも変わらない。
正直リハビリに行き詰まっていました…
そこで、
もう一度情報を見直して見る事に。
すると重要な情報を見落としていた事に気づいたのです。
それは、
・右肩周りや首の付け根に重だるさがある(じっとしてても時々出現)
・右肩に凝りがある
実はこの訴えが患者さんの問題の解決のヒントだったのです。
都合の良い解釈から生まれた失敗
肩インピンジメント症候群は、
肩の動きの中で「腱板」や「滑液包」が
挟み込まれて痛みが出るのですが、、、
今回の患者さんは、
そのインピンジメントの症状以外の症状も訴えていたのです。
私はその訴えを無視して、
痛みの原因を筋系の機能異常と判断してしまってリハビリをしていました。
自分で無視しているつもりは無かったのですが、
診断名という先入観が私の客観性を見失わせていました。
患者さんが訴えていた、これらの訴え。
・右肩周りや首の付け根に重だるさがある(じっとしてても時々出現)
・右肩に凝りがある
実はガングリオンによる『肩甲上神経の圧迫』が原因だったのです。
つまり、
インピンジは2次的な症状で、
根本原因はリハビリでは解決できない症状。
レッドフラッグです(命の危険性はないのですが、、)
このように、私たちは診断名や疾患名が先入観となり
患者さんの重要な訴えを聞き逃してしまう事があります。
その原因に、『問診情報を客観的に解釈できていない』『情報を解釈しないまま触って評価するため、一層先入観が強まる』などが考えられますね
診断名や疾患名に踊らされて、都合の良い問診情報を繋げて仮説立てをして
リハビリをしてしまう。
私は、この時に『問診』の重要性を痛感しました。
確かに評価方法も情報の確証を上げる為には重要ですが、
あくまで問診で大方情報整理が出来て初めて『成果』として出てくるものだと思います。
もし、リハビリの際にすぐに患者さんに触れて評価してしまっている方は、
一度問診をしっかり紐解いて見ると、治療結果に変化が出てくるかもしれません。
あなたの問診力向上が患者さんの問題の早期発見に繋がることでしょう。
PS
『症候群』という名前は、その症状の原因不明な病態の場合に用いられます。
そのため、症状の原因が筋肉なのか、血管なのか、腱なのか分かっていない。
つまり治療方針が定まっていない診断名なのです。
鼠径部痛症候群、頸肩腕症候群、胸郭出口症候群などですね。
これら症候群は、あなたの問診力が重要な鍵を握っています!
訴えの痛みの原因は『組織レベル』で、どこの組織なのか?
診断名に惑わされないで!!