神経生理から紐解く「力が入りにくい」の原因とは? | 日本オランダ徒手療法協会

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神経生理から紐解く「力が入りにくい」の原因とは?

2022.01.30

from 橋本 祐一 @自宅デスクより

 

人間ってサボりたがる生き物ですよね。

 

なんで急にこんな事言い出したかというと、私が結婚する前に結婚式に向けてダイエットも兼ねて毎日走ったり、筋トレしていたんです。

 

ランニングは毎日5〜10kmくらい。筋トレも1時間くらいかけてやっていました。

 

新婦が綺麗にドレスを着たいから運動するって聞いたことあるけど、新郎がダイエット!?って思ったかもしれませんが、

 

結婚式で担当したプランナーさんとどれだけ体重が減るかなんて企画したのがきっかけなんです。

 

ダイエット前の写真を時系列に撮りためて本番当日にお披露目!!

 

列席して頂いた方々にも「お前のダイエット企画なんて興味ないわ〜!」ってツッコミを頂戴して大成功となったんです。(自分ではそう思っています。笑)

 

でも、結婚後、子供が産まれて子育てや仕事が忙しくなったことを理由に走らなくなったんですよね。

 

ついついサボってしまいます。

 

その結果、、、結構太ってしまいました。(泣)

 

これではいかん!!と最近ではまた筋トレなどを再開していますが、あの時みたいには身が入らないんですよね。

 

ダイエット企画をしていた時は身が入っていたのになぁ、、、。

 

あの時の自分と今の自分での明らかな違いは、目標があるかないかの差です!!

 

でもその差ってかなり大きくて身の入り方が違いますよね。

 

気を引き締めて体づくりをしないといけないなと思う今日この頃。(反省)

 

さて、今日のブログは「力が入らない」という症状について書いてみようと思います。

 

「身が入らない」から「力が入らない」に繋げるのは力技すぎますが、そこはご愛嬌。

 

実際の臨床現場で「力が入りにくい」っていう曖昧な表現ってありますよね。

 

曖昧すぎてぶっちゃけどう治療をしたらよいのか困ることが多くないですか?

 

今回は、「力が入りにくい」という表現の時の治療のヒントになればと思います。

 

太もも裏に痛みを訴える患者さん

 

 

以前受け持っていた患者さんで50代の女性が今回のケースです。

 

主訴は「左太もも裏側が痛くて力が入りにくい」

 

「痛み」と「力が入りにくい」という表現だったんですよね。

 

「痛み」をもう少し深堀りするために問診を行うと色々なことがわかってきたんです。

 

 

・左太ももの裏に痛みか、しびれなのか、なんとも言えない感覚

 

・圧痛はなし

 

・炎症症状も見られない

 

・左のハムストリングスはずっと張っている感じ

 

・しびれなどの神経症状はない

 

 

 

この情報から考えた痛みの原因は、痛みを訴えている太ももには原因がないのではないかと考えたんです。

 

じゃあどこが問題なのか?

 

そのヒントは、「力の入りにくさ」なのではと考えました。

 

・階段を登る時が、特に力が入りにくい

・立って靴下を履くときがフラついてしまう

 

 そこで新たな仮説として、

 

「力の入りにくさ」の原因は「大殿筋」の弱さだと私は考えたんです。

 

今回の患者さんの訴えで、階段を上る際の「力の入りにくい」は大殿筋の収縮が重要になってきます。

 

さらには、骨盤帯の安定化にも大殿筋ってかなり関与しますよね。

 

階段を登る際、重心が前方へ乗ると上半身が前方に倒れすぎないようにブレーキの役割と股関節を伸展させ段を登るように同時に働いていきます。

 

この時に大殿筋がしっかりと働いていないと、その役割を補う形でハムストリングスがより過活動となって筋疲労が出てきてしまうのではないかと考えたんです。

 

大殿筋の筋力低下がハムストリングスの張りへと繋がって「力が入りにくい」のではと考え、この仮説から私が行なった治療プランは次の通りです。

 

1:大殿筋に対して  → 段差に登るため必要な求心性収縮で鍛える

2:ハムストリングス → 緊張をとったり、癒着をとるためにリリースする

 

 

大殿筋を鍛える必要があるので、約2〜3週間ぐらい治療を継続して、その効果を判定しました。

 

、、、

 

患者さんの表情も期待したほど良くはなく、思うような結果が得られませんでした。(泣)

 

多少の痛みや違和感は減ったと言われていましたが、未だ「力の入りにくさ」は残ったまま。

 

あなたもこのような経験はありませんか?

 

力が入りにくいというから筋力を鍛えればいいのではと考えてみたけれど、何故かうまくいかないこともあるんですよね。

 

そんな「力が入りにくい」の改善ですが、実はこんなこととの関係があったんです。

 

関連痛からの力の入りにくさとは!?

 

 

このケースからいうと、「痛み」と「力が入りにくさ」の原因は関節のズレから起こる

”関連痛”と関係があったんです。

 

大腿後面の痛みって、腰椎の5番目か仙腸関節が問題になっていることが多いんですが、これを裏付けるものとして、デルマトームを見てもらうと一致すると思います。

 

この患者さんの問題は仙腸関節でした。

 

関連痛とは痛みなどの症状が出ている場所には全く問題はなくて、脊柱や骨盤帯など痛みが出ている場所ではないところに本当の原因がある痛みのことを言います。

 

ちょっとややこしいんですが、

 

今回の患者さんで例えると、仙腸関節がズレて関節内の圧が高まっている場合に、本来であれば仙腸関節のところに痛みが出ればわかりやすいです。

 

ですが、骨盤帯には痛みを感じとる感覚神経の「受容器」が四肢よりも少ないために、そこで痛みを感じるのではなく、仙腸関節と同じ”四肢の神経支配領域”で痛みが出たんです。

 

これは「脳の誤認」からくるものなんですよね。

 

この患者さんは仙腸関節が問題だったのでそこの調整を行うことで一瞬で「痛み」はなくなりました。

 

それと同時に、「力の入りにくさ」もなくなったんです。

 

えー!?ってなりますよね?あれだけ筋力が問題だと思っていたのに!?

 

先ほどの関連痛で話をした痛みの受容器は「感覚神経」との繋がりなんですが、神経って他には何がありますか?

 

そう!「運動神経」ですよね。

 

感覚神経と運動神経って相互に関係していて、感覚が悪くなると、動かす為の筋力も悪くなっていき、深部感覚の運動覚や関節の位置覚などにも影響して「力の入りにくさ」が同時に症状として起きていくんです。

 

この患者さんからの話では、太もも裏の違和感が最初に出てきて、「痛み」に変わってきてだんだんと「力が入りにくさ」が起きたと言われていたので、繋がりがありそうだと思ったんです。

 

なので、仙腸関節の調整後に階段の上り動作をしてもらったら、ふらつきもなくなり、足が地に着いた感じで力が入ります!!って喜んでいたんですよね。

 

でも、今回の患者さんの場合は、すぐに効果が現れて解決できたんですが、

 

この「関連痛」や「力の入りにくさ」を長期にわたって患っていた場合ってどうなりそうですか?

 

永きに渡ってターゲットとなる表在感覚や筋肉へ神経の伝達が障害されてしまうと、

 

治療をしても痛みが若干残ったり、長い間筋肉を動かせなかったことで筋力が低下して力の入りにくさをすぐには解決できない場合もあるかもしれません。

 

ですので、症状だけで判断せずに、この患者さんの「痛み」や「力の入りにくさ」がどのくらいの期間起こっていたのかも聞いていくと治っていく期間も予測ができ、それを患者さんにもうまく伝えることができると思います。

 

過去の私は『力が入らない=筋力低下』って思っていたのですが、このパターンを知ると色々な患者さんに応用ができて治療の幅が大きくなったんです。

 

今回は、関連痛と力の入りにくさについてブログを書いてみましたが、このブログを読んでもらってあなたの明日からの治療のヒントになればと思います。

 

 

P.S.

今の自分の筋トレを継続するための目標は、

 

『息子の運動会などでかっこよく他のお父さんたちをごぼう抜きして走る姿を見てもらう』

 

です!!

 

コロナの影響で運動会などに未だ参加できていないのですが、未来のイベントに向けて子供のためなら身が入ると思い頑張っています。

 


この記事を書いた人

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橋本祐一

福岡県在住の理学療法士。【JADMT公認】オランダ準徒手療法士。四肢コース・福岡校講師研修中。総合病院、整形外科クリニックを経験。普段は、主に一般の整形疾患からスポーツ障害の中学生・高校生などの治療を行なっている。休日に息子と戯れ合う時は、全力で遊ぶ一児の父。