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慢性的な足関節捻挫はどんどん動かせ!(サッカー編)
2021.06.25from 杉山貴規 自宅デスク
今日は最新のトピックスから話したいと思います。
その内容は、ここでも何回も紹介している「アイシング」「RICE処置」について、です。
肉離れ直後にアイシングするのはどうか?
その質問に関しては、ここでもなんども言っていますが、答えはNO!
それは、治癒過程を遅らせるからです。
これに関しては、ここで様々な海外の文献や自分が海外に行った時の経験で話したと思います。
で、今回なのですが、
神戸大学大学院保健学研究科の大学院生(当時)川島将人さん(現川崎医療福祉大学助教)、荒川高光准教授、千葉工業大学の川西範明准教授らの研究グループらが
肉離れなどの重い筋損傷後のアイシングは、筋再生を遅らせることが、神戸大などのマウス実験で明らかにしました。
これは、本当に素晴らしい結果で、ようやく日本国内におけるアイシングやRICE処置の是非に終止符を打つかもしれないからです。
詳しい話は、こちらを読んでください
↓↓↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/dac4a62b719cbbb912ff7b907553442519f148cd
しかも、この記載の中には1回でもアイシングを行えば筋損傷においては治癒速度を遅らせる結果になるとのこと。
すなわち、筋損傷においてはアイシングは有効ではないという結果がマウスの実験で証明されたということなんです。
これが、様々なスポーツ協会や学校教育において浸透して、時代遅れの応急処置がなくなることを願って読んでいました。
こういう話は、どんどん拡散され、スポーツ現場でトレーナーの方々が実践してほしいです。最先端の研究結果がこうなのだから、それを実践する手はありませんよね。
早く、怪我=アイシング・RICE処置がなくなればいいのになぁと思っています。
さて、今回話す内容は足関節捻挫についてです。
これも、先に述べたように捻挫したらアイシングっていう法則がありますよね。
今回の論文では、重篤な筋損傷においてのアイシングの是非だったので靭帯損傷は未確認ですが、海外論文やこの記事から推測すると、靭帯損傷においてもアイシングは治癒経過を遅らせる可能性があると自分は思っています。
そんな足関節捻挫なんのですが、
今回紹介するのは、1度の捻挫をして1ヶ月程度経過しているサッカー選手が復帰できていない件です。
歩けるし、ランニングも可能
というのも、痛みが続きどうしても復帰が難しくなっているということなんですが、
あなたはこういう選手や患者さんを目の前にした時に、どうしますか?
①痛みがあるから、もう少し休ませて様子をみる
②患部の痛みをみながら、患部の局所のリハビリを積極的に行う
③患部の痛みをみながら、積極的にアスリハを行う
④全体練習に復帰、もしくは試合復帰させる
答えは?
自分の選んだ答えを持って、読み進めてください。
サッカーやっていいですか?
今日はグラウンドレベルでの仕事。
その中で、
足首の捻挫でなかなか復帰できない選手が俺のところに来たんだよね。
選手「なかなか痛みが取れなくて、復帰ができないんです。できるといえばできそうなんですが、痛みがネックになってできないんです。」
こういう選手多いと思う。
痛みが取りきれない。
次のステップになかなか進めなくて、立ち往生している選手はとても多い。
捻挫というのは結構軽視しがちな怪我の一つ。
というのも、この怪我の名前が良くない。
捻挫=靭帯損傷っていうのがあまりピンとこないからなんだよね。
多くの足関節捻挫といわれるものが、前距腓靭帯損傷だと思う。
この疾患名を病院の先生も選手に伝えてくれればいいのだが、
大概が、『ただの捻挫ですね』っていうフレーズ
だから、監督もコーチもこんな風な感じの答え方になる。
『捻挫ね〜』
これが、やばい!
結局、病院でも学校でも家でもチームでも
こんな感じの受け止め方になるんで、選手自体も大した怪我じゃないっていう刷り込みが出来上がるんだ。
だから、『軽い捻挫』という風にいわれて、復帰が1ヶ月ともなると本人が焦りだすんだよね。
これが、『前距腓靭帯損傷』となれば、捉え方が変わってくるんで、選手もその周りも気持ちのところで変わってくる。
かなり話が脱線しましたが、
この1ヶ月復帰できていないかどうかが妥当なものかを知ることが必要。
それは、組織損傷の程度を知ることと捻挫をした組織の炎症度合いを評価する必要があったんだよね。
組織損傷は前距腓靭帯損傷の1度レベル
現状の炎症レベルは発赤・腫脹・機能低下・疼痛・熱感共にない状態。
痛みがあるというが、組織を直接押しても痛みはなく、広範囲に痛みがあるということなんだよね。
であれば、いつも通り広範囲通なので関連痛の可能性があるから、そこの治療やケアをする必要がある。
普通なら、ここでケアを始めて、治療をして、ようやく機能的なトレーニングに移るんだけど。
時間が圧倒的に少なく、今後の練習メニューを教えて欲しいていうことなんで、治療はしないで進めていったんだよね。
そんなことあるのかって話なんだけど、
これはよくある話。
だから、治療に関しては他の先生にお任せすることはよくある。
現場でだからできることを優先したんだ。
で、何ができるかを考えるんだけど、
どんなどんなメニューかを作るときに重要なのは、
靭帯組織の状態なんだ。
じゃ〜何で見るのか?
①治癒経過
→今回は軽度の靭帯損傷なんで靭帯に軽度の傷がついた程度だから、1〜2週間程度で治癒する。そこからさらに2週以上は経過しているから、無理な負荷をかけていなければ組織は治癒完了のはず。
②靭帯の評価
→今回損傷したのは前距腓靭帯なので、そこに対してストレステストをかけて、疼痛度合いの確認して特に痛みもなく、靭帯の緩みも感じられなかったんだ。
③日々の生活と今までの練習の聴取
→日常生活は問題なく、階段や坂道の上り下りも問題ない。日々の練習はジョギングと100mのスプリントやインサイドキック・インステップキックも軽くなら可能。それ以上はやっていないということ。
この3つでメニューを立てていくんだ。
じゃ〜どこまでのメニュー立てるか?
それは、靭帯損傷をした患部が耐えられるギリギリのところ。
それは次の2つで決める。
1つは目は選手が感じる痛み
2つ目は足関節の動揺や他の関節に変なストレスがかかっていないかどうか
この2つで決めるんだ。
で今回どんなメニューをこなったのか?
コツコツ階段を登る
動的に足部の状態を見るためにはまずは歩きから見ていくんだけど、この選手の場合もう既にランニングや100mスプリントはできているということだったんで、足部の底屈背屈の動きは特に問題はないかなって思ったんだよね。
だから、次に行う動きは足首の内反・外反を動きを見る必要があるんだ。
そういうときに行うのが、サイドステップ
この動きを最初は自重でゆっくり行って、痛みがないようならスピードを上げて、それでも痛みがないなら重りを持って行う。
これをやったんだけど、特に痛みもなく、各関節に変な動揺もない状態。
そして最後に、ジャンプトレーニング、まずは自重でその場で飛んで、次に前後左右に飛んで、最後に高いところから飛んでちゃくしてもらう。
ってな感じで、徐々にレベルを上げてやってもらうんだ。
そうすると、ある程度1軸的な動きに関しての足部の評価はクリアできているっていうことになるんで、次に複合的な動きを取り入れるんだよね。
複合的な動きの練習とすると
5m四方にマーカーを4つ置いて、
①バックステップ→②サイドステップ→③スプリント→④バックステップ→⑤サイドステップ→⑥スプリント
これを最大限のスピードで1分間やってもらう。もちろん選手の状態に合わせて、時間や負荷はかえるべきです。
これに、ジャンプヘディングや基礎を加えてやったり、ドリブルをしながらやってもいいです。
ってな感じをどんどんやらせていったんです。
痛みの状態を確認すると、
最初は、少し痛みがあったようなんですが、徐々に痛みが無くなったっていうんです。
こういうとき、練習を進めるべきかどうか迷うと思うんです。
自分は続行です。
理由は2つあります。
①患部に溜まっていた痛みが患部を動かすことで、患部の循環が良好になって痛みがなくなる。
②長期に動かしていないことで、周りの軟部組織(皮膚・筋肉・靭帯・神経など)の癒着が剥がれ足部の可動性が増し、痛みがなくなった。
だから、続行し、より負荷のあるトレーニングを行います。
しかし、各々のメニューで痛みがある場合は負荷を減らしたり、メニューを変更させたりします。
で、結局この選手には300m8本のスプリントをその後やってもらいましたが、特に足部の痛みはない状態。
今後に関しては、チームトレーナーと話して復帰日を決めて復帰してもいいかなという風に伝えたんです。
今回の選手のように、足関節捻挫で長期にわたる離脱をした場合、痛みをクローズアップして患部ばかり見てしまうことは多々あります。
なんで治癒期間を過ぎているのにもかかわらず、足部に痛みが生じているのか?
ここの評価をしっかりして、科学的な数字を組み合わせた自分の尺度を基準を作れば、どんどん積極的にアスリハをやっていいと思います。
つまり、最初の答えは③の
『患部の痛みをみながら、積極的にアスリハを行う』
が、今回の正解でした。
もちろん様々な意見はあると思います。
慎重にやったほうがいいとか、もっと足部の評価を細かくやったほうがいいというのもあると思います。
しかし、治癒期間を過ぎても、ず〜と患部の細かい筋トレをやっているのはナンセンスです。
どこにゴールを持って、いつまで復帰させるといった道筋を立てられることができれば、この答えは当然だと自分は考えています。
もし、長期の足関節捻挫で悩んでいる選手や患者さんがいた場合はぜひ参考にして見てください。
PS
日本のスポーツ現場や学校などで怪我をしたらアイシングはNGっていう日はいつ来るかな。
日本は保守的だから、この考えが浸透するまではまだまだかかりそう(笑)