グロインペインは腰椎1,2番が原因 | 日本オランダ徒手療法協会

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グロインペインは腰椎1,2番が原因

2019.03.15

from 杉山貴規 広尾オフィス

 

選手「あの、あの、あとでいいんで診てくれませんか?」

 

杉山「まだ、残ってるだろ!!集中しな!」

 

選手「あっ、はい。すみません。。。」

 

杉山「今は集中」

 

先日、ハーフタイムにこんなやり取りを選手とした。

 

わかる人にはわかると思うけど、

側からみると杉山酷くない!!って思うかもしれない。

 

確かにこれだけみると酷いかも。

 

痛みがあるから、自分のところに来る。それを怒るようなことはしてはダメかもしれない。

 

しかし、まだ試合中。

 

気の緩みが大きな怪我に繋がる可能性があるし、パフォーマンスも低くになる恐れがある。

 

だから、自分は叱咤激励をした。

 

でも、ここまでなるのには自分としてもずいぶん時間がかかった。

 

以前なら、このシチュエーションでもおそらく。優しく声をかけていた。

 

でも、実際その選手を追うとやはりパフォーマンスがかなり落ちてくるんだよね。痛みなのか、気の緩みなのか。。。

 

それはよくわからないが。

 

選手の状態が格段に下がるんだ。

 

この経験を自分はたくさん積んで、痛みの度合いや怪我の状態にもよるけど。よほどのことがない場合は、叱咤激励をしている。

 

実際、今回の試合はそのせいなのかパフォーマンスは落ちず、後半も乗り切ってプレーしていた。

 

この選手が痛いのは股関節。

 

痛みはあるけど、全くサッカーができないわけではない。

本人もサッカーをした後だけ、痛みが出て、しばらくすると治るから深刻にはなっていなんだ。

 

だから、自分もケアをし続けることでどうにかなると判断したんだ。

 

でも、自分はこのケースで過去に失敗したことがあって、患者さんの痛みが長期化させてしまったことがある。

 

股関節痛で自転車乗れない

まだ、自分が病院勤めで、スポーツ現場に関わる前の話なんだよね。

 

50歳代の男性で、股関節の痛みを訴えて自分のところに来たんだよね。

自転車が趣味で大会にも出るほどやり込んでいた人なんだ。

 

最近になって、股関節がすごく痛くなって、歩くのは大丈夫なんだけど、自転車の乗り降りや自転車を長時間こぐと痛くなるって話だったんだ。

 

診断結果は鼠蹊部痛との診断(グロインペイン)

 

この鼠蹊部痛痛みの箇所が様々で、これをやれば治るっていうのがエビデンスとしてはないものなんだよね。

 

ドクターは自転車をとりあえず禁止したんだ。

 

自分もそれに賛同して、リハビリを行うことになったんだけど、

 

その方が、

どうしても4ヶ月後の富士山のヒルクライムに出たいって話。

 

この富士ヒルクライムっていうのはあの富士山をの自転車で登っていく競技。

 

聞くだけでゾッとするでしょ。

 

でも、その人にとってはそこを目標にして練習して来たから、どうしても出たいんだよね。

 

それで、ドクターと話してどうにか出る方法を模索したんだ。

 

するとドクターが痛みが取れたら、やってもいいよってことになって、その人も痛みを取ることを目標に毎日リハビリに来たんだ。

 

リハビリはなるべく負担のかけないように、寝た状態で股関節の運動や姿勢が良くなかったから姿勢の改善から、股関節屈曲時に痛みが出ないようにしたんだよね。

 

今考えると浅くて、なんとも言えないリハビリ。。。

 

で1ヶ月ぐらいで、日常生活でも痛みは取れて、自転車をまたぐ動作やこぐ動作をやっても全然痛みが出なくなったんだよね。

 

それで、ドクターも自転車の練習に復帰していいって話になって、リハビリも毎日から隔週でするようになったんだ。

 

これで、この患者さんの目標達成って感じで終わると思ってた。

 

それは、自転車の練習を始めて1ヶ月後くらいに起きたんだ。

 

L1,2の関連痛!?

予約を入れていない時に悶絶した顔で受診して来たんだ。

 

聞くと、急に痛くなって、歩くのも辛い状態になったとのこと。

 

診断結果は特に変化はないが、痛みが強くなったのは自転車練習のしすぎだった。

 

自分はその間、スポーツ外傷の勉強会に行って、自律神経系、循環系、心理的な要因から痛みが長引くことを学んでいたんだ。

 

そこで学んだものをフルに活用して

 

その方の痛みって局部っていうよりも股関節全体に広がっていたんだ。でも、腫れや炎症はない。だから、組織の損傷はないって考えたんだ。

 

ただ、股関節周囲の筋肉はかなり緊張していて硬く、左右を比べると痛みのある側が少し温度が低い感じ。

 

もしやこれって関連痛ってやつかなって思ったんだ。

 

そこで、股関節周囲の痛みがある箇所を全部チェックしたら、デルマトームでいうとL1〜2だったんだよね。

 

これで何がわかるかっていうと、運動の神経系と感覚の神経系って相互に関わりあってるんだって。

 

じゃぁ、もしかしたら、L1、2の腰に問題があるかもしれないって思って、脊柱を中心に左右差を色々みたんだ。

 

すると、痛みのある側の腰椎が軽度側屈していて、緊張も高い、そして何より強い圧痛があったんだよね。

 

それで、その周囲の筋肉の緊張をとったり、側屈を中間位に持っていくリハビリしたら、股関節の痛みが瞬く間になくなったんだ。

 

嘘〜って思うかもしれないけど。

 

自分もその当時はそんな感じ。

 

ただ、痛みが取れても、また同じことを繰り返すと思って、自転車の練習メニューを一っしょに考えるようにしたんだ。

 

そして、自分でケアする方法を事細かに指示した。

 

治るまでに3ヶ月ほどかかってようやく、自転車競技に復帰したんだよね。

 

でも、結局富士山のヒルクライムには間に合わなかった。

 

その患者さんに色々聞いたんだけど、再受傷した時点でヒルクライムは諦めて来年の大会を目指そうって切り替わってたらしいんだ。

 

つまり、今回の股関節が長期に渡ってしまったのは

・痛みが取れてすぐに復帰したこと

・徐々に負荷量をあげていなかったこと

・股関節だけでなく腰椎にも原因があったこと

・大会に出たいがあまり、焦っていた心理的な要因

 

これらの要因を把握していなかったんだよね。

 

今だったらこんなことは、まずしないだろうけど。

この経験がなかったら、おそらく今もその当時のままだったんだろうね。

 

その方は、結局痛みも無くなって、大会に出場!今ではマラソンもやっているくらい良くなっている。

 

PS

スポーツは心理的な要因がかなり大きい。

プレーはもちろん、怪我をした選手が治りにくいのも焦りや葛藤やストレスなどの心理的な要因がかなり大きいかもしれないね。

 

そこをどう汲み取って、心理的なストレスを感じさせないで、ゆるやかで早期に復帰させることが、スポーツ選手を診る治療家には求められるかもしれない。

 

PSS

であの選手がどうなったかっていうと…

 

試合後声をかけると

杉山「大丈夫か??」

選手「あっ、大丈夫です。でも少し痛いんで、診て欲しいです」

杉山「・・・」

 

こんなもんだ笑笑