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【徒手】理学療法士/合田祥人 先生 | 日本オランダ徒手療法協会

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【徒手】理学療法士/合田祥人 先生

2019.06.13

〜患者さんを笑顔にするために必要なこと〜

はじめに

私は、DMT マニプレーションスクール(以下 DMT スクール)の徒手コースを終了するにあたって、DMT スクールで学んだ技能が臨床にどう活きたか、またそれを通じて自分自身が変化したことについて述べたいと思う。

DMT スクールに入ろうとした契機

そもそも、私が DMT スクールに入ろうとしたきっかけは 2 つある。

1.問診の重要性

学生時代の臨床実習において、「問診」の大切さを実感した。 

「問診」が行えることで、患者さんの問題がどの組織であるか特定することができるためである。また問題箇所を特定できることで必要な治療を選別し提供することができるようになると考えられたからである。

2.考える癖を作るため

「A という原因は B である」と言われれば、私はそれを鵜呑みにしていた。また分からないことがあればすぐに正解を求めようとしたり、他人から聞いたアドバイスを実践したりしていた。 

講師が正解を教えると言った形ではなく自分で考え、試行錯誤していくという DMT スクールの授業スタイルで“考える癖”をつけたいと思ったためである。

DMT スクールの徒手コースに進もうと思った契機

DMT スクールのコースは 

  • 基礎コース
  • 準徒手コース
  • 徒手コース(最上位クラス) 

と3つに分かれている。 

基礎/準徒手コースでは主に、オランダ徒手療法の核となるテクニックや理論の習得、患者さん/選手にそれぞれに適したゴールの設定、そしてゴールに向けたプログラム作りの実践などといった学習を行なった。 

しかしプログラム作りを行う際に、プログラムがどの患者さんに対しても同じであり、差別化の図れたものとはいえなかった。 

特に今自分が病院で担当している内部疾患の患者さんにおいては、20分のリハビリ時間の中で可動域訓練や筋力訓練を行い、その後歩行訓練をするといったパターンの繰り返しになってしまっていた。 

そのため自分自身が納得いく治療を提供できていないことに対して不満もあり、患者さん一人一人に合ったプログラム作りができるようになりたいと思ったため、DMT スクールの徒手コースで学習しようと思った。 

また漠然としたプログラムをいかに大きく(幅広く)できるかを知りたかったためである。

 徒手コース参加して何を身につけたか?

徒手コースで学ぶ内容としては、「頚椎に対する治療」「分析」「プログラム作成」「デモンストレーション」「コーチング」などに分けられる。 

その中でも自分ができるようになってきたという実感としてあるものが徒手コースに入る目的としてあげた「プログラム作成」である。 

また、「プログラム作成」と同様に、作成したプログラムを指導するにあたって「サーキットトレーニング」「コーチング」という技術を習得することができたと実感している。

技能を使って何に取り組んでみたのか?

自身の取り組みについて述べる前に、用語について説明したい。

1.サーキットトレーニング

サーキットトレーニングとは何かというと、目的とした動作を獲得させるために、局所のトレーニング(非機能的トレーニング)と全身動作のトレーニング(機能的トレーニング)を併用することである。 

非機能的と機能的トレーニングは一見異なるように見えるが、共通点がある。動きづくりを行うには繰り返し動作を行うことが必要であるため、非機能的トレーニングと機能的トレーニングを交互に行うことでより効果的に目的の動きに近づけることができる。

2.コーチング

コーチングとは、指導の際に一方的に指導するティーチングとは異なり、患者さん自身に考えさせたりに気づかせたりして自主性を促す指導方法のテクニックの一つである。 

私はプログラム作成を行い、その後「サーキットトレーニング」と「コーチング」の二つの技術を用いて患者さんへのプログラムの提供及び指導を実施した。 

非機能的・機能的トレーニングプログラムを数種類作成し、サーキットトレーニングと して患者さんに実践していただいた。またコーチングの技術を用いて、指導する際に一方的ではなく患者さん自身に意識するポイントなどを理解していただいた。

実施した結果や変化について

自分の対象は循環器疾患の患者さんが中心で、基本的には高齢で⻑距離歩くことが難しい方が多い。 

また歩行時のふらつきが強く不安定な歩きをしている方も多い。 

トレーニング実施前と実施後を比較すると、動作が良くなっていることが視覚的にみてとることができた。また私の主観的な考えのみならず、患者さんから「動きやすくなった」といった発言が得られるようになった。また即時効果として歩行の安定性が増し、一時的ではあるがふらつきが減り、患者さん自身が自分の変化に気づく機会が増えた。 

このことから自分が狙った部分に対してしっかりとアプローチができると患者さんの変化がしっかりと確認することができた。また患者さんに納得してもらいながら進めていけたため、患者さん自身でどのような運動を行えば良いか理解してもらえた。

症例紹介

DMT スクールで学んだ考え方はスポーツ選手やトレーニングをしている方だけでなく、入 院している方や高齢者、寝たきりの方…などに対しても通用することができるといったことが実体験であったため、症例を通して紹介する。

症例 1~寝たきりから歩行まで繋げられた症例~

➢ 患者背景

60 代後半女性で急性呼吸不全にて入院された患者さんを担当。既往に COPD、リウマチ、リウマチ性関連間質性肺炎があった。

➢ リハビリ開始時の状況

元々の ADL は自立していたが入院当初、呼吸状態が悪化し人工呼吸器管理となり、加えて体動が激しいため安全を守るために抑制帯が施された。ほとんど離床が進められず、リハビリが本格的に始められる段階になったときには寝たきりで、筋力も落ち可動域制限も生じている状態であった。

➢ 患者さんの希望などについて

患者さん自身は「また元のように歩きたい」という希望を訴えていたが、同時に「自分ではどうすることもできないから先生何とかして」と医療者側に依存する形が強かった。

➢ どのように対応したか

まずは信頼関係を築いていったのちに、DMT スクールで学んだコーチングの発想を利用して、患者さん自身で足りない機能は何か?歩くためにはまず何が必要であるかなどといったことを考えてもらった。加えて、自分から患者さんへ歩くために必要な要素や歩くために必要な手順(寝たきりの状態から歩くに向けてどういった訓練が必要になってくるのか)を説明した。

➢ 経過

寝返りから起き上がれるようになり、座位時間が向上したが既往のリウマチが悪化し、疼痛の訴えが強くなった。疼痛の原因の一つとしては、患者さん自身が持っている抵抗力、すなわち耐えられる力と我々が与えたり動作時にかかったりする負荷量のバランスが崩れてしまったことが考えられた。 

そのため、負荷量をコントロールし、かつ痛みに応じながら立ち上がり訓練などを実施した。最終的には点滴棒を用いながらではあるが歩行を少し行える状態になったところで転院となった。

➢ 患者さんからの感想

患者さんからは「寝たきりから歩けるところまでこられるとは思っていなかったし、ここまでやってくれてよかった」と感謝の意を述べていただけた。

 

症例 2~歩行時のパフォーマンスを上げることができた症例~

➢ 患者背景

80 代女性の心不全にて入院された患者様を担当した。

➢ リハビリ開始時の状況

入院前の ADL は自立だったが、入院してから2週間程ベッド上臥床が続き介助がないとほとんど歩くことができない状況。痛みや可動域制限はなし。筋力低下によって歩行時に跛行が出現し、また歩行時に短い距離で息切れ症状が出てしまう状況だった。

➢ 患者さんの希望などについて

障害のある娘の介護があるため早く帰りたい、自分のことは自分でできないと帰れない。今のままでは歩くのが怖いからなんとかしたい。

➢ どのように対応したか

筋力強化と歩行時の耐久性を上げるためのプログラムとしてサーキットトレーニングを作成した。 

プログラムとしては、

  1. 片脚立位訓練
  2. ステップ動作訓練
  3. 立位での股関節外転訓練
  4. 歩行訓練

と基本的な訓練のみで構成した。 

局所の筋力強化と全身動作の歩行訓練を1セットとして、3〜4セット繰り返し実施した。 

サーキットトレーニングで注意したポイントとしては2つあり、 

1つ目は筋力強化する局所のポイントを一つに絞ったこと。今回は歩行で足が接地する際にしっかりと臀筋を働かせることに重点を置いた。 

2つ目は歩行訓練時の息切れが出現するギリギリのところまで歩いて疲労が出現してきたら休憩を挟むといった負荷量のコントロールを工夫したことである。また、指導の際にはティーチングのみならずコーチングを使用した。

➢ 経過

臀筋に重点を置いてトレーニングを組んだが、それだけでも歩行の安定性向上につながった。コーチングによって、患者さん自身で理解納得していただいて訓練に取り組んでもらったことで自主トレをどんどん行っていただけるようになった。また徐々に歩行での不安が軽減していき、最終的に杖歩行で自宅に退院した。

➢ 患者さんからの感想

もっと早くからリハビリをやっておけばよかったと後悔しました。お家に自信をもって帰れます。ありがとう。

症例を通して自分が感じたこと、DMT スクールで学んでよかったこと、自分の変化について

今回の症例を通じて自分が感じたこととして、DMT スクールで学ぶ前と同じ訓練やトレーニングであっても伝え方やトレーニングの順番を変えることによっても効果が異なってくること。 

そして基本動作(寝返り、起き上がり、立ち上がり…など)の訓練を1つ1つ深掘りするだけでも患者さんの能力を引き上げられることを実感した。また深掘りすることで自然と自分で考えるようになってきたという実感があった。 

そして何より自分の中で納得がいく結果が出た際に、患者さんから感謝された時の喜びは本当に嬉しい限りであり、もっと良くしたいという気持ちが掻き立てられた。

最後に

最後に今回のレポートを締めくくるにあたり私が一番伝えたいこととして、患者さんは困っているからこそ私たちの所に来られると思う。だからこそ患者さんに寄り添って笑顔にして帰してあげる必要があると思う。 

そのために患者さんが求めていることを把握し、患者さんと目標設定や具体的にどのように進めていくかなどといった話し合いを行うこと。そして患者さんの笑顔にさせられるように試行錯誤していくことが大事だと考える。 

自分が試行錯誤するきっかけになったのが、DMT スクールであったため、学んだことを軸として色々なことに応用していきたいと思う。

 

自己紹介

名前…合田祥人(ごうだよしと)

都内の大学病院に勤務している理学療法士。スポーツで怪我したことをきっかけに、理学療法士を目指す。現在は循環器をはじめとした内部疾患の患者様を中心に担当している。将来的には一般からスポーツ選手まで様々な患者さんのサポートができるようになりたいと考えている。