【徒手】理学療法士/櫻井佑樹 先生 | 日本オランダ徒手療法協会

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【徒手】理学療法士/櫻井佑樹 先生

2019.04.23

ゴールや成果から逆算した治療プログラムの重要性。細部のこだわりが結果を左右した!

みなみ整形・痛みのクリニック 理学療法士 櫻井佑樹

はじめに

 私は理学療法士として、岡山にある整形外科のクリニックに勤務しています。臨床では腰痛や骨折などの整形疾患、スポーツなど年齢やジャンルを問わずに診ています。

 今後、スポーツに特化してメディカルとフィジカル両方を診られる治療家を目指して日々臨床に励んでいます。

徒手コースを受講してどう臨床に活かせたか

 DMTスクールの準徒手コースを終了した時点で、患者さんや選手に対して根拠だった仮説を立て評価や治療することに手応えを感じ始めていました。

しかし動作改善やパフォーマンスを上げていくといったようなトレーニングメインとなった途端に何から手をつけるべきか分からず、設定したゴールに対して一貫性のない治療となっていました。

 

 例として、散歩の際に犬と同じ速いスピードで歩けるようになりたい高齢の患者さんや当たり負けしたくないラグビー選手などそれぞれのニーズやゴール対して筋力トレーニングやフォーム修正を行っていました。その中で結果が出ない場合や逆にパフォーマンスを落とす場合がありました。ゴールを達成するにあたり、深く掘り下げて評価出来ていなかった点や問題点を全て修正しようとした点、トレーニング難易度設定が不十分だった点などが上手くいかない原因だったと考えられます。

 

 徒手コースで学んだ理論や手技は多くありますが、その中で印象的なものはゴールに至るまでのプロセスを細かくこだわりをもって難易度別に考えられるかが結果を左右してくるということです。

 

 犬がチワワなのか大型犬なのかでスピードは変わるかもしれないし、リードに引っ張られる力の強さで歩行パターンが変わるかもしれない、散歩の道は何キロで坂道なのか不整地なのか、エネルギー消費はどうなのか。ラグビーだとブロックなのかタックルなのかで強さや姿勢が変わってきます。

 

 まずは対象の分析やリサーチを徹底して行い、ゴールを達成するためのKeyを明確とした上でゴールに近い実践的な機能トレーニングから、単発的な非機能トレーニングなど難易度別に考えていきます。この作業を行えるようになったことで効率的にトレーニングが出来て結果も出せるようになったと思います。

ケース紹介 

 

20代男性Tさん、身長180cm体重68kg、趣味でサッカー(FW)を行っている。

 

試合中に相手DFに競り負けないように高くジャンプを飛んでヘディングを打てるようになりたいというのが要望でした。約1週間かけてトレーニングを行い、介入前後での評価を行いました。(Drop-Jump動画参照)

 

具体的なアプローチとしてまずは分析やリサーチから行いました。

 

動画サイトで一流選手のヘディング場面を診ることでどのような姿勢、条件、環境下で動作を行っているのかを把握しました。その上でTさんの動作と比較していきます。

 

運動の構造をSprint、Stop、Jumpの3つのパターンに分けて考えた場合、Tさんの動作はstopが上手く出来ず前方方向へそのまま流れていく印象を持ちました。

 

結果、鉛直方向への蹴りは脚力優位で行っている状態でした。それらを踏まえてゴールは「キレのある高いジャンプを飛んでヘディングを打つ」でパフォーマンスupのためのKeyとしては「床からの反力を上手く使う」と設定しました。

 

治療は常にkeyを意識して行い、その部分がブレないようにプログラム作成を行っていきます。

 

ゴールから逆算すると最終段階の機能的トレーニングでは芝や土の上でスパイクを履いて、Sprint、敏捷性、俊敏性やボール、障害物や人などを組み合わせたJumpなど実践に近い状態でのトレーニングが必要となりますが、まずは非機能的なトレーニングでJumpの感覚を掴むことを行いました。

 

その場でのDrop-Jumpから始め、BOXを使用や下り坂を利用したJump、バーベルを担いでJump(左右均等から片方に寄せる)、などと徐々に難易度を変えたプログラムを作成しました。

 

実際にトレーニングを進めていくと体幹のブレや不安定さなどの代償動作が目立つようになった為、原因を追求すると立位動作時の体幹深層筋の働きが不十分ではないかという仮説に至りました。難易度を臥位や座位に下げてトレーニングを行った結果、立位での安定性は向上しました。

 

トレーニングの難易度の重要性を再確認出来た場面でした。また、徒手療法の部分では胸郭、肋椎の可動性にも着目し、高く飛ぶ為に必要なアライメント修正も行っています。

 

今後はより実践的な機能的なトレーニングに移行していき、ゴール達成を目指します。短い期間の中でもゴールにこだわった段階的なトレーニングを行うと結果が出たケースでした。

 

 今回、一週間かけてトレーニングを行ったTさんの感想として高く飛べている感じが体感出来る。飛んだ時の安定感が全然違うということでした。

おわりに

 トレーニングの方法は世の中に多く存在していますが大事なのはゴールを明確にし、それらのトレーニングを何の目的や根拠で、どのタイミングで治療プログラムに取り入れていけるかが結果に左右してくると学んだ徒手コースの1年間でした。今後も trial and error を繰返しながら一流の治療家となれるように努力していきます。