【徒手】理学療法士/黒田雄太 | 日本オランダ徒手療法協会

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【徒手】理学療法士/黒田雄太

2020.02.03

高齢者の歩行が劇的に改善した5つの秘訣!

〜DMT徒手療法コースでの学びから〜

DMTマニュプレーションスクール徒手療法コース

第4期生  黒田雄太(理学療法士)

 

あなたにはこんな悩みがありませんか?

 

・担当患者をゴールとする動作(レベル)まで期間内に到達させることが出来ない。

・入院中には出来ていた動作が退院後は出来なくなってしまう。

・どの患者にも同じようなリハビリプログラムになってしまう。

・効果が出ているかが分からないため、ころころメニューを変えてしまう。

・効果がないメニューを続けてしまっているのではないかと不安に思う。

 

実は私もあなたと同じような悩みを抱えていました。つい10ヶ月前までは…。

 

ただ、その悩みは今は完全になくなってしまいました。

それを解決してくれたのはDMTマニュプレーションスクール「徒手療法コース」。

 

そして、悩んでいたことが解消されただけでなく今ではどのような患者やスポーツ選手を担当しても運動療法(トレーニング)プログラムを考えることができ、「成果」を出せる自信があります。

 

なぜ、たった10ヶ月でそのようになれたのか…?不思議に思う方も多いでしょう。

 

巷で流行っているトレーニングメソッドを学んだから?

 

それは間違いです。DMTではただ単にハウツーを教えるだけのことはしません。

 

治療にも運動療法にも成果を出すために必要な「原理原則」があります。

 

多少実際のトレーニング手段、いわゆる「トレーニングの引き出し」がなかったとしてもそれは今ネットで検索すれば山のように情報は集めることが出来ます。ですが、多くの人はその多すぎる情報を選びきれずにいるのです。あなたもそうではありませんか?多くの情報に翻弄されて何が目の前の患者さんに必要な事なのかを見失ってしまうのです。それでは成果の出方もマチマチでしょう。かく言う私自身も以前はそうでしたから…。

 

高齢者、スポーツ選手、脳卒中、脊髄損傷…

 

様々な人や疾患を対象にしたとしても運動療法の「原理原則」は全て同じです。あえて違いがあるとすればゴールのレベルや到達するまでのスピードでしょうか。

 

つい10ヶ月前まで運動療法に自信がなかった私が徒手療法士コースを受講する事でなぜこれほどの成果と自信を手に入れることが出来たのか?

 

この理由を是非皆さんとシェアさせてください。なぜなら私と同じような悩みを抱える皆さんにこの情報を届けたいからです。あなたの目の前の患者さんや選手を救って欲しいからです。

 

では早速、その秘訣は…と言いたいところですが、その前に私がどんな人なのか?

自己紹介をさせてください。

 

【プロフィール】

黒田雄太(Kuroda Yuta)長崎県在住

 

DMTマニュプレーションスクール

基礎コース(第7期)修了

準徒手療法士コース(第4期)修了

徒手療法士コース(第4期)在籍中  

*2019年1月現在

 

日本オランダ徒手療法協会メールマガジン執筆者

 

  • 資格:【JADMT公認】オランダ準徒手療法士

           理学療法士(国家資格)

 

  • 所属:日本オランダ徒手療法協会

            日本理学療法士協会

            Nagasaki Orthopaedic & Sports Physical Therapy(NOSPT) 役員

 

  • 学歴・職歴

2010年 長崎医療技術専門学校 理学療法学科卒業

            理学療法士免許取得

            同年総合病院に入職

            急性期、回復期、外来、デイケアなど様々な分野に関わりながら運動器疾患のリハビリテーションに従事する。

2014年 整形外科クリニック入職

            高齢者の腰痛や膝痛、肩痛などの運動器疾患のリハビリテーションと痛みの治療に従事する。

2018年 特別養護老人ホーム入職(現職場)

            要介護度3以上の入居者に対して機能訓練指導員として機能訓練を実施すると同時に今までの経験を生かして部署の立ち上げなど職場環境改善にも取り組む

 

オランダ徒手療法との出会い

 偶然にも当スクールが開校する前に、現スクール代表の土屋先生が長崎で講師を行なったセミナーに参加したのがはじめての出会いだった。その当時はあまりのスクール費の高さに驚くばかりでまさか数年後に自分が受講するなんて夢にも思っていなかった。しかし、総合病院を退職し整形外科クリニックに転職してから痛みが取れない患者が多く治療に行き詰まる。そんな時にたまたまフェイスブックで当スクールの記事やスクール生の投稿を目にしオランダ徒手療法の存在を思い出す。問診から仮説を立てることや多角的視点に基づく原因分析などのコンセプトに魅了され、受講を決意する。

私のミッション

「腰痛で困っている人を助ける!」

 

 基礎コース修了後、私には具体的な将来の目標はなかった。何をしたいのかが自分でもわからなかったので、しっかりと治療できる軸を身に付ける!という事は目標に掲げていた。そんな時に大阪で「TMSジャパン」の長谷川先生のセミナーを受講する。そこで治療家としての自分の無知さを思い知ると同時に、腰痛でこんなにも多くの人が困っているということを初めて知る。それがきっかけで腰痛で苦しんでいる人のために自分が学んでいるオランダ徒手療法や「TMSジャパン」の考え方を使ってなんとかしたいと思ったのが私が「腰痛で困っている人を助けたい!」と思ったキッカケだった。

 その後もその思いを持ち続けオランダ徒手療法を学んでいたのだが、その最中に自分自身が辛い腰痛を患ってしまった。これも偶然であるが、腰痛(神経根症状)を患ったのが2018年1月で当スクール準徒手療法士コースの前日だったのだ。何とか痛みに耐えながら受講していたが、そんな私の姿を見かねた代表の土屋先生が施術をして下さった。神経根が炎症を起こしてしまう一歩手前のところで施術をしていただいたため、無事に準徒手療法士コースの試験にも合格出来た。あの時、あのタイミングでの土屋先生の施術がなければ今の私はないだろうと思う。このように自身の“辛い腰痛”の経験から、「世の中の腰痛で苦しむ方を助けたい」という使命がより一層高まった。一時的に自覚症状を解消するだけの対処療法だけではなく、腰痛の患者様を「施術」から「トレーニング」までトータルにサポートしていくことを信条としている。

 そして、現在学んでいるオランダ徒手療法を使って「腰痛で困っている人を助けたい」というミッションを達成すると同時に「腰痛で困っている人を助ける」ということを通じて『ホンモノの医療を日本に拡める』という事を達成したいと考えている。これはDMT全体のミッションでもある。特に日本の西の果て「長崎からホンモノの医療を拡める」そんな活動をしていきたいと胸に秘めている。

 

 私が「腰痛で困っている人を助けたい」というミッションを持っていることは十分にご理解いただけたのではないかと思います。それもあって私のメルマガは腰痛ネタばかりなんです(笑)

 

さて、ここからは実際に私が徒手療法コースで身につけたことを使ってどのような事を行なったのか?またどのような成果を出すことが出来たのかを紹介したいと思います。

 

 私が現在勤めている特別養護老人ホームに入所されている利用者に対して歩行改善のための運動療法を行いました。まだ運動療法は継続中ですが現在までの状態の変化をご紹介したいと思います。

【症例紹介】

 

80歳代の女性。ニーズは「歩けるようになりたい!」。

 現在は主に車椅子での生活。車椅子への移乗は自立しており、約30メートルほどの居室とフロアを結ぶ廊下はゆっくりであるが、車椅子を自走することにより移動できる。認知症などは特になく日付などの見当識もはっきりしている。リハビリに対するモチベーションはとても高く、明るい前向きな性格の持ち主。

 趣味は施設内で行われる風船バレー。大会を楽しみにしていたが、台風により大会が中止になり残念に思われていた。

 

特に現在痛みの訴えはないが、変形性膝関節症により左膝は内反動揺がある。また、約半年前には熱発により1ヶ月半ほど入院している。よく介護施設や病院にいらっしゃるような可愛らしい女性の方だ。

 

  • 運動療法開始当初(動画出せたら出す)

 約5メートルほどの居室と居室の間にある手すりを持ちさらに私が手引きしても1往復するのがやっとの状態だった。

 左下肢で荷重すると左膝の内反動揺や骨盤が後方に引けるなどの反応が見られた。また、左の立脚期は右と比較すると長く、ゆっくりとした歩行となっていた。

 

このような利用者に対して次のような取り組みを行いました。

 

【私の取り組み】

①目標設定

 「歩けるようになりたい!」という利用者の希望を元により具体的な目標を設定した。

居室からフロアまでの距離が約30メートルある。室内のため特に床に不整地はない。この環境を杖歩行で歩けるようになるという事を本人と相談しながら目標に設定した。

 

②プログラムの立案

 以下のようなプログラムを立案した。

・歩行訓練:介助量や距離を変化させながら行う。

・前方ステップ練習

・カーフレイズ

・階段の降段練習

・下肢筋力訓練(中臀筋、大臀筋、大腿四頭筋)

・体幹トレーニング

・左大腿部や臀部のリリース・ストレッチ

・左膝関節包のストレッチ

 

③プログラムの実施

 週2回/週で1回約30〜40分程度②のプログラムを行なった。毎回全てのプログラムを実施するわけではなく、段階に応じて少しずつ負荷量などを上げていった。

 

 これを見たあなたはこう思ったのではないでしょうか?

 

 「自分たちがやってる事と同じじゃないか…。」

 

 ただ、まずはこれを行なって得られた結果から紹介させてください。

 

【取り組みの結果】(動画が出せたら出す)

 現在は(2019年1月時点)片手把持(手すりもしくは手引き)で約15〜20メートルの連続歩行ができるようになりました。

 歩行中の左膝の内反動揺が少なくなり、左下肢でしっかりと床からの衝撃を受け止めることが出来るようになっています。そして、何よりも変わったのが歩行スピード!はじめはゆっくりと恐る恐る歩いていたのですが、今はスタスタ歩けるようになっています。

 

【利用者へのインタビュー】

リハビリをして前よりも歩けるようになりました!ちょっとずつ良くなっている感じがします!

 

どうでしょうか?あなたがいつも担当している高齢者とさほど変わりないと思います。この利用者がスーパー高齢者というわけでもありません!(笑)

 

高齢者ですがしっかりと成果が出るんです!何故このように成果が出るのかというと、ここに大事なポイントがあるんです。ただ単に先程の私の取り組みに書いているような事をやっただけでは成果は出ません。

 

では、ここからは高齢者でもしっかりとした成果が出せる運動療法の「原理原則」ともいえる5つの秘訣を紹介したいと思います。

 

【高齢者でも成果が出せる5つの秘訣!】

①最重要!成果を出すための結果設定

 

 ここを間違えるとどんなに凄い「結果」が出せても「成果」にはつながりません。

 ここで「成果」と「結果」という似て非なる2つの言葉が出てきます。まずはこの2つの違いを紹介したいと思います。

 例えば、陸上選手で考えると「成果」はオリンピックで金メダルをとる!、記録を出す!などとなります。

 一方で、「結果」とは爆発的なスタートダッシュや後半でバテないスタミナなどのようにしたら勝てるのかという勝つための条件と考えます。この結果設定はスポーツ種目のルールやその選手のプレースタイル、動作の特徴などをリサーチ/分析して決定します。ライバルとの差を埋めるにはどこを強くしたら良いのか?逆に今の自分の強みをさらに伸ばすのか?はリサーチ/分析次第です。そのためこの部分にかなりの時間をかけます。実際のスクールの授業では約1日かけて考えたこともあります。それだけ重要なのです。もし、この結果設定を間違ってしまうと動けるカラダが出来たとしても、その人が望む「成果」には残念ながら繋がりません。

 

 この利用者の「成果」と「結果」は次のように設定しました。

 

・「成果」:居室からフロアまで(約30メートル)を杖で歩ける!

 

・「結果」:左右の動揺がない安定した歩行の獲得

 

 このようにこの利用者の場合は左右の動揺がない安定した歩行が獲得(結果)できれば、居室からフロアまで杖で歩く(成果)事が達成できると私は考えたのです。

 

②これによってオーダメイドの運動療法プログラムが作れる!〜パフォーマンスアップのkey〜

 

 ①でその人が得たい「成果」から、その条件である「結果」の設定を行いました。さらにDMTでは「成果」をあげるために“ある”ことを設定します。その“ある”こととは「パフォーマンスアップのkey」というものです。皆さん聞いたことがない言葉だと思います。

 

 例えば、①でも例で出した陸上選手で「結果」の設定を後半バテないスタミナとしたとしましょう。おそらくですが試合の最終場面で何らかの理由でバテてしまい、試合に負けてしまう事が多いのだと思います。

 

その中で、あくまでその選手の動作や特徴をリサーチ/分析した上でですが、

 

・持久力自体がなくバテてしまう(有酸素能力が低い)

・後半フォームが乱れて、しっかりと地面を蹴る事ができない

・特に後半体幹がブレて重心の上下動が大きくなってしまう

・ピッチが多くなってしまう(ストライドが小さくなる)

などの問題があるとします。

 

 そうした場合に上記の全ての問題に対して取り組んでいると満遍なく運動療法を行うことになります。これではおそらくこのように後半バテてしまう陸上選手に対しての運動療法プログラムは似たような画一的なものになってしまうでしょう。

 

 そうではなくここである問題に焦点を絞る、もしくはさらに強みを伸ばすという事をすれば、その部分に特化したプログラムを立てる事が出来ます。その着目するポイントのことを「パフォーマンスアップのkey」と呼びます。

 仮にピッチが多くなってしまうという問題に対して、後半も一定のピッチを保つということを「パフォーマンスアップのkey」に設定したとすれば、それだけにポイントを絞った、そのポイントは他のどのライバルにも負けないようなプログラムが完成します。

 

そしてこの「パフォーマンスアップのkey」は運動療法の指導者側も指導を受ける患者・選手側もが共通で認識する事ができるような言葉である必要があります。言い換えるとスローガンみたいなものでしょうか?

 

 なので、先程の陸上選手で「ピッチを落とさずに一定のピッチを保つ」という言葉で指導者側も選手側も理解・納得出来ればそれでも良いでしょうし、「後半も一定のリズムで走る」というような言葉にしてピッチを保つということを選手に意識させないようにしながら運動療法を行っていくこともできます。

 

 実際のDMTの授業ではこの部分にかなりの時間をかけます。昨年12月の授業では2日間の授業のうち、この「パフォーマンスアップのkey」の設定を考えるワークを1日半行いました。頭から煙が上がりそうなぐらいでした(苦笑)

 

 話を戻しますが、この利用者の「パフォーマンスアップのkey」は次のように設定しました。

 

パフォーマンスアップのkey:衝撃に負けない足腰を作る!

 

 高齢者なので難しい言葉はあまり使わずに、ただししっかりとポイントは理解してもらうということでこの言葉にしてみました!

 

③ゴールから逆算するプログラム設計

 

 ①の「成果と結果」、②の「パフォーマンスアップのkey」がしっかりと設定出来れば、次はそれを元にプログラム設計を行なっていきます。

 

 プログラムを作っていくのですが、ここでもちょっとしたポイントがあります。今までの私もですし、皆さんもそうだと思いますが、おそらく目の前で出来ることから積み上げていきながらプログラムを作っていくのではないでしょうか?

 

 例えば先程の陸上選手が実は膝の手術をしていたと仮定します。すると私たちが行いがちなのはまず炎症の管理、そして愛護的に関節可動域訓練や筋力増強訓練などを行い、その後荷重量を調整しながら、起立や歩行につなげていく…そのような形で運動療法を実際にしながら先のプログラムを考えていくというのが多いのではないかと思います。

 

 そのようなプログラム設計をした場合にある問題が起こったことはありませんか?

そのある問題とは「ゴールに近づいてきてから本来は必要な機能が足りない」ということです。

 どういうことかというと、先程の陸上選手で例えるとすればランニングにはアキレス腱の柔軟性が必要なのですが、実際にゴール近くでランニングなどのトレーニングをしようとした時に膝の機能回復に集中するあまりに足関節の可動域制限やアキレス腱の柔軟性が足りずにランニングができないなどというケースです。

 

 そうならないようにDMTでは「ゴールから逆算するプログラム設計」を行います。これは②で設定した「パフォーマンスアップのkey」をもとにゴールに近い動作を身につけるためのメニューから考えていくのです。陸上選手であれば、もちろんランニングのトレーニングになるのですが、ただ単に走るのではなくてその選手の競技特性に合わせたプログラムを考えるのです。長距離ランナーであれば5000mや10000m、フルマラソンなどの距離になるでしょうし、スプリンターであれば100mなどの短距離になるでしょう。

 

 このようなゴールに近い最終場面でのトレーニングをDMTでは「機能的トレーニング」と言っています。

 

 その他の競技でも野球選手であればピッチングやバッティングを実際にやることになりますし、サッカーやバスケットボールなどの対人スポーツであればボールを使った練習であっても個人練習よりはチーム練習にイメージは近いはずです。

 

 では、始めからこの陸上選手は膝の手術の直後からこのようなランニングの練習ができるでしょうか?出来ませんよね?なので、次に考えるべきことは立案した「機能的トレーニング」ができるための条件を考えていかなければなりません。

 

ランニングが出来るには…

・大腿四頭筋や中臀筋などの下肢の筋力

・衝撃に耐えられる体幹機能

・ランニングをするための有酸素能力

・ランニングに耐えられる膝周囲の軟部組織の強さ

 

など、挙げたらキリがありませんが「機能的トレーニング」に必要な条件をトレーニングする必要があります。これをDMTでは「非機能的トレーニング」と呼んでいます。

 

 この「非機能的トレーニング」も膝の手術を行った直後にすぐに開始できるでしょうか?これも答えはNOです。

 

そのため、今度は「非機能的トレーニング」を行うための条件が必要になります。

・大腿四頭筋や中臀筋などの筋力トレーニングを行う筋の硬結の解消

・脊柱の硬さやアライメント不良の解消

・股関節や膝関節、足関節などの可動域改善

・膝関節のアライメントを崩す膝周囲の軟部組織のリリース

・痛みのコントロール

 

など、これも挙げたらキリがないのですが、「非機能的なトレーニング」を行うために必要な条件をDMTでは「準備/ケア」と呼びます。

 

 トレーニングを行っていく上で必要な自律神経機能(体内環境)を整えることもこの「準備/ケア」に含まれます。この自律神経機能に対するアプローチはオランダ徒手療法の最大の特徴といっても過言ではありません。しかし、これは基礎コースや準徒手療法士コースで主に学ぶことなので、今回は詳しくは触れません。またの機会に紹介させて下さい。

 

以上をまとめると「ゴールから逆算するプログラム設計」とはこのようになります。

 

「成果」の設定

→「結果」の設定 = 「成果」を達成するために必要な条件

→「パフォーマンスアップのkey」の設定 = より特徴のある結果を生み出すための強調ポイント

→「機能的トレーニング」の立案  = ゴールとする姿勢/動作を身につけるためのトレーニング

→「非機能的トレーニング」の立案 =「機能的トレーニング」を行うために必要な条件

→「準備/ケア」の立案 = 「非機能的トレーニング」を行うために必要な条件

 

 この「ゴールから逆算するプログラム設計」を行うことの最大のメリットは不必要なメニューが含まれたり、逆に必要なメニューが足りなかったりということがないという事です。また、「準備/ケア」や「非機能的トレーニング」の段階においても常に「ゴール」を意識したプログラムになります。

 

 同じ足関節の可動域ひとつ取っても、陸上選手の足関節とクラシックバレエダンサーの足関節では求められる可動域が違いますし、その動作をしている際の他の関節の位置関係も変わってきます。そのような場合には足関節周囲の組織のみを対象にするのではなく、カラダ全体を強固に覆っている筋膜の繋がりなども意識したストレッチやリリースなども行なっていきます。

 また、非機能的トレーニングにおいても同様で、体幹トレーニングやウエイトトレーニングを行うにしても、どのような姿勢で行うのか、どのようなアライメントで行うのかの決定は常に身に付けたいゴールの姿勢/動作に出来るだけ近いかたちを設定していくのです。

 

 このような思考でプログラムを設計していくと、担当する患者さんや選手毎で同じプログラムになるということはまずあり得ないのです。逆にその患者さんや選手独自のプログラムになっていくはずです。

 

 私が担当している80代の女性は以下のように「ゴールから逆算するプログラム設計」を行いました。

 

「成果」:居室からフロアまで(約30メートル)を杖で歩ける!

→「結果」:左右の動揺がない安定性した歩行の獲得

→「パフォーマンスアップのkey」:衝撃に負けない足腰を作る!

→「機能的トレーニング」

・階段を降りる:衝撃を受け止めるために必要な体幹や下肢を鍛える

・前方ステップ:階段を降りるトレーニングの負荷を減らしたバージョン

・カーフレイズ:つま先立ちになるのが目的ではなく、その後に靴の音がなるぐらいの強さでストンと踵を落とす。その振動によって体幹を固めることが出来る

→「非機能的トレーニング」

・大腿四頭筋訓練:特に0〜30°付近の伸展を強調して行う

・中臀筋訓練

・骨盤帯に対するPNF:内腹斜筋など

・体幹を固める練習:徒手による外乱に対して座位で体幹を固める練習

→「準備/ケア」

・臀部や大腿部のリリース

・股関節のモビライゼーション

・自動運動による脊柱の伸展運動

 

④繰り返し見れる動画で効果をチェック!

 

 ①〜③までのことをしっかりと行うことでかなり結果を出すことが出来ると思います。ただし、結果が出ているのかは運動療法プログラムの実施前後でしっかりと評価をしなければわかりません。

 

 皆さんはどのようにして変わった変わっていないの評価を行なっていますか?

 理学療法士であれば動作分析を行いますよね。ただし、その動作分析患者さんに何回も同じ動作をさせ続けていませんか?何回も続けていくうちに動きが変わってしまったという経験はありませんか?

 

 そんな問題を解決してくれるのが「動画撮影」です。最近ではデジカメ以外でもスマホやタブレットなど簡単に動画を撮影できるようになっていますよね。

 

 動画撮影を行う最大のメリットは繰り返し見返せるということです。患者さんに何回も動作をさせることなしにですね。患者さんにも負担をかけません。

 

 ただ、この動画撮影を行うメリットはこんなものだけではありません。これは撮影をする事自体というわけではなく、ここに至るまでにご紹介した「パフォーマンスアップのkey」をもとにしたプログラムを立案しているからこそ、より効果が出ているのかいないのかを確認することが出来るのです。

 

 どういうことかというと運動療法の指導側も患者・選手側も「パフォーマンスアップのkey」という共通認識のもとに運動療法を行なっています。ということはある運動療法メニューを行った後にその効果をチェックする際に、動きのどの部分に着目するのかが明確になっているのです。そのため動画撮影をして動作分析をした際にどの部分を見たら良いのかに悩むことがなく、そのメニューの効果の判断をすぐに行うことができるのです。

 

 すると、治療と同様に運動療法もこのメニューはある動きを身につけるのに関係しているのか、関係していないのかを評価することが出来ます。やっているメニューをやめる、継続するを自信を持って判断することができます。

 

 私が運動療法を行なっている女性の利用者さんの評価を行う際には、歩行中に下肢で接地した時の下肢のアライメントが一直線上にあるかどうかや骨盤の揺れがないかなどのポイントを確認しています!

 

⑤動きを身につけるための負荷設定!キーワードは「運動パターン」

 

 5つのポイントの最後になりました。これは運動療法を行なっていくときに大変必要なポイントです。と言って5つのポイント全て大事なんですけどね(苦笑)

 

 皆さんは「運動パターン」という言葉をご存知でしょうか?

 人間の運動は運動神経と筋の関係などのような動きを起こすシステムだけではないのです。いわゆる出力系と呼ばれるものなのですが、どのようにしてその出力系は働くのでしょうか?

 それは、感覚受容器や感覚神経などから入る情報が中枢部(脳や脊髄)に入力されることによってはじめて出力系に信号がいくのです。

 

 このように「運動パターン」とはある運動が行われる際の感覚受容器ー感覚神経ー中枢ー運動神経ー筋の流れの回路のことをいいます。

 

 この「運動パターン」は人間のカラダには数え切れないほど無数にあります。

 単純な収縮様式の違いでも「運動パターン」は全く異なるのです。

 

 例えば、求心性収縮と遠心性収縮でその違いを見てみましょう。

 

 求心性収縮では、筋肉が短縮しながら収縮するので筋紡錘や腱紡錘、関節受容器、筋の反応は次のようになります。ちなみに筋紡錘や腱紡錘は伸張されると反応します。

 

(求心性収縮)

筋紡錘:反応なし

腱紡錘:やや反応あり

関節受容器:反応あり

筋:反応あり

 

 一方で、遠心性収縮では以下のようになります。

 

(遠心性収縮)

筋紡錘:反応なし

腱紡錘:かなり反応あり

関節受容器:反応なし

筋の反応:かなり反応あり

 

 1つの筋の単純な収縮様式の違いによってもこれだけ「運動パターン」は異なりますし、さらに拮抗筋も含めるともっと複雑になります。1つのある関節のことを考えてもこれだけ複雑なので、人間がカラダ全身を使った運動を行うときには無数の運動パターンが存在することが分かると思います。

 

 また、この「運動パターン」一見外見上同じような動きをしていてもスピードが違ったりすると全く異なる「運動パターン」になってしまうのです。筋の収縮スピードが変わるとそれに反応する筋紡錘や腱紡錘、関節受容器の反応も変わってしまいますよね。それが理由です。

 

 ここで本題に戻りますが、何か新しい動作を身につけるときに皆さんはどのように負荷設定していますか?ここでいう負荷設定は回数やセット数などの量のことではなく、運動の難易度などの強度のことをさします。

 

 よく膝の術後にスクワットの指導をしますよね。スクワットの時には様々なポイントを確認すると思いますが、代表的には膝が外に向いていないか?内に向いていないか?を確認します。

 しかし、実際にスクワットをやってみたら膝が内に入ってしまった!そんな時に皆さんはどうしますか?

 内に入ったのを確認しつつもそのまま続けてしまい、プロトコールに合わせて次の難易度の動作の練習に移行する…そんな事はありませんか?

 

 もし、「パフォーマンスアップのkey」で下肢の各関節が一直線上のアライメントで動作を行う…などに設定していた場合に膝が内に入ったままの動作を続けてしまうと、その間違った「運動パターン」を学習してしまいます。身に付けたい動きでないものを繰り返すことは全く効果が上がらないばかりか、逆効果になってしまうのです。

 

 そのような場合にどのようにスクワットのやり方を変えたら良いでしょうか?

 考えるべきことは「代償動作や間違った動作にならない!」難易度での動作に変えるのです。具体的にはゆっくりとしたスピードにするやバーベルを担いでいたら自重に戻すなど「正しい、身に付けたい動作が出来る!」難易度に設定し直すことなのです。

 

 実際に私が担当している利用者さんも同じ考えのもと動作を身につける運動療法を行いました。

前方へのステップ動作は自分だけでコントロールが難しかったので、膝の揺れがしないように膝の支持を私がしたり、足をつく位置を調整したりしました。それを何度も繰り返すことで足のつく位置を調整したりせずとも正しいアライメントで前方ステップが出来るようになっていきました。「運動パターン」を身につけるためには地道な努力を重ねる必要があるのです。

 

 以上の5つのポイントを押さえることで私は高齢者でも運動療法で結果を出す事が出来ました。是非皆さんも参考にしてみてください。

 

【DMTが私にくれたモノ…】

 

それは「確かな自信」と「成長する楽しさ」です。

 特に徒手療法コースを受講したこの1年は運動療法(トレーニング)に対して、「確かな自信」を持つことが出来ました。裏を返せば「不安がなくなった」と言っても過言ではないでしょう。なぜ「不安がなくなった」のか?それは自分の中にある失敗という概念がなくなったからです。

 運動療法で結果を出すために必要な「原理原則」をしっかりとこの1年では身に付けました。ただこれだけでは「不安がなくなる」と自信を持って言うには不十分です。

 DMTで学ぶことが出来るものは治療や運動療法に関する専門的なスキルだけではありません。結果を出すために必要な治療外スキル、例えばプレゼン能力や習慣化させるためのコツ、リサーチ能力なども学ぶことが出来ます。さらに治療家としてや1人の人間としての哲学についても授業を通して学ぶことが出来たと私は思っています。(基本的にDMTでは答えは教えてくれないので、自分で考える中で様々な事に気づき、学び、身に付けていきます)

 

 特に「トライ&エラー」という言葉は今の私にとってなくてなはらない哲学です。

 

 自分が知らないことや自分にとってはじめてのことは一歩踏み出すのに大変な勇気と覚悟が必要です。上手くいかないかもしれません、失敗するかもしれません、とても不安ですよね。ただ、その一歩を踏み出さないと失敗すらできないのです。失敗するからこそ、次の一歩が生まれるのです。私も昔はじめの一歩を踏み出すのがとても不安な時期がありました。そのままの状態のほうが自分にとっては心地よいですからね。ただ、変化がないそのままの状態は現状維持どころか後退しているんだと私は思います。

 

 そして、今では一歩踏み出した後には必ず次に繋がる何かが待っていることがわかっているので早く一歩を踏み出してみる事を心がけています。また、一歩踏み出して上手くいかなかったとしてもそれを失敗だとも思わなくなりました。上手くいかないことがあったとしてもきちんとそれを分析して改善策を考えるとさらに次の一歩を踏み出すときには確実にもっと良くなるのですから。

 そのような気持ちで何事にも臨むと「確実に成長できている自分」がそこにいるのです。周りからすると低いレベルのことをやっているように見えるかもしれないですが、自分にとってはそれがその時のベストなことであり、それを更によくするために分析と改善策を考え、またトライする!どんどん成長していく自分を実感でき、今は楽しくてたまりません!!

 

 まだまだ運動療法で最高の結果を出すには私の身に付けた運動療法に関するスキルだけでは十分ではないかもしれません。ですが、結果を出すために必要な最低限のスキルは身につけることが出来たと思います。今まで知らなかった世界の事を学ぶのでDMTで学んでいることだけで既にお腹いっぱいな状態なのですが(苦笑)、答えを教えてくれない授業スタイルだからこそ、自分の頭をフルに使い、考え続け、思考を回転させ続けます。自分の中で腑に落ちていないモヤモヤしたままの事もまだ残っていますが、自分で考え続けていることでふとした時にそれが繋がる!徒手療法コースを受講するようになってそのような自分の中に腑に落ちることや閃きが数多くあっています。その度に自分の成長を楽しみ、実感するのです。

 

DMTで私は”自分自身の力で成長し続けることが出来る自分“を手に入れることが出来ました。

 

【皆さんに伝えたいこと】

このレポートを通して皆さんにお伝えしたいこと…

 

それは、

・高齢者であっても運動療法で結果を出すことは出来るということ

・結果を出すために必要なことは巷のハウツーではなく「原理原則」だということ

・一歩踏み出すことが成長につながるということ

・考えることをやめないこと

 

 そして、あなたの目の前にいる患者さんや選手が望む「成果」を手に入れるまで決して諦めないでください。あなたの目の前にいる患者さんや選手を救えるのは貴方しかいないのです。

 

 治療でも運動療法でも確実な結果が出せるDMTのスキルが世の中に広まり、救われる患者さんや選手が増えていくことを切に願います…。

 

【謝辞】

 徒手療法コース講師の土屋代表、橘田先生、撮影の坂本先生ご指導や授業風景の撮影などをしていただき誠にありがとうございました。また、一緒に学んだ仲間の吉田先生、伊東先生、境田先生、合田先生、櫻井先生、米山先生、本当に1年間ありがとうございました。楽しく学ぶことが出来ました。またみんなで集まりましょう。

 最後にいつも私の考えに最大限の理解と協力をしてくれる妻や娘、妻のご家族、自分の家族に大変感謝致します。

 最後まで学ぶことが出来たのはここでご紹介させていただいた方々だけでなく、他にも多くの皆様のご支援のおかげだと思っております。

 本当にありがとうございました。