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炎症が組織に及ぼす影響とは?
2017.07.26こんにちは。日本オランダ徒手療法協会の木内です。
「炎症」って、痛みを扱うことが多い我々セラピストにとって、避けて通れないワードですよね。
皆さんは、炎症が身体に及ぼす影響をどこまで理解し、臨床に落とし込むことができていますか?
ここで強調したいことは、一般的な炎症のメカニズムや、4徴候など教科書に乗っているようなことを知っているかではなく、どれだけその知識を現場で活かせているか?ということです。
例えば、炎症により局所の循環が悪化することで、組織の抵抗力は著しく低下します。
この状態で刺激が入れば、炎症を起こしている組織の抵抗力は低下しているため、リハビリが組織破壊を引き起こし、簡単に「オーバーユース」の状態を引き起こしやすくなります。
そこで今回は、炎症が生体に及ぼす影響を、オランダ徒手療法の独自の考え方である「局所循環」や「組織の抵抗力」などの視点から、現場に落とし込む方法についてお話したいと思います。
ボディーワークの方などにも読みやすいように、専門的な用語をあまり用いず書かれていますので、是非とも最後までご一読ください。
月刊スポーツメディスン No.189 4月号 2017年
連載 実践力を上げるための「根本原因と推察しうる要因や理論の使い方」①
-「刺激」×「休息」×「栄養」と局所循環とを臨床ではどう考えるか?-
炎症時に刺激を入れると…
T:もし仮に組織に炎症が起こったら、損傷部位の修復や周囲の組織の「抵抗力」をつけることはできますか?
S:え?
T:痛みや腫れがあった場合、組織の「抵抗力」を強化したり、筋肉を肥大させたりできますか?
S:大きな炎症があったら、炎症反応により「十分な栄養」の供給や循環はできないので・・で、できません。(汗)
T:そうですね。で、どこからが「大きな炎症」なんですか?
S:・・・
T:炎症のコントロールができないでいると、「刺激」は入れても、「適度と思われる休み」も挟んでも、他の患者さんと違って、明らかに治りが悪いです。
S:炎症反応?
T:そう、炎症反応! 具体的には何が起こっている?
S:出血や毒が体中にまわらないように、温度が上がって(発熱・発赤)、パンパンに腫れて(腫脹)、痛覚が敏感になってちょっとした刺激でも激痛となり(疼痛)。さらに炎症を引き起こす・・・。
T:詳しくは調べてもらうとして、局所組織の細胞間の循環はどうなっていますか(図1)?
S:間質液は膨張して基本、動かなくなっています。
T:細動脈が血液供給していたとしても、酸素と栄養の交換効率が落ちます。
毛細管の発達していない局所に酸素/栄養を届ける方法は何だっけ?
S:・・・スポンジ効果?<図2を参照>
T:そう動かない。動きたくない。動けない。それは「刺激」を入れないことと同じ。
「刺激」がない話、どこかでしませんでした?
S:あ、宇宙飛行士の話。
T:そう、「刺激」がないと凄まじい勢いで組織は劣化していきます。一方で、局所的の間質液の循環はかなり悪いのだから、不動のままでいると酸素と栄養とが局所には本当に不足していきます。というか、ない!
S:ない?
T:そう、なぜだかわかりますか?
局所循環の本当の意味
T:不動で酸素と栄養とがないと、組織間/組織内でどんどん癒着が広がっていきます。
厳密にいうと筋膜と筋膜ですが、筋肉と筋肉、筋膜と皮膚、皮膚と関節包・・・と動作に伴いお互いが滑走し合わなければならない組織が癒着により、柔軟度を落としていきます。
「第2の心臓」である筋肉が、お互いくっついたり、滑走しなくなったりすれば、血液循環はどうなりそうですか?
S:そこまで誘導してもらえるんでしたら簡単です。静脈血を心臓へと押し戻す“筋ポンプ”作用が弱く、うっ血しやすくなります。
T:そう。では、皮膚と表層の筋膜がくっついてしまったら?
S:硬くなりそうです。
T:それだけですか?何か忘れていませんか? また今、話題は局所循環の話をしています。「動脈の流れ」「静脈の流れ」「筋ポンプ」「スポンジ効果」「間質液の浸透圧」・・・などの他に忘れていませんか?
S:リンパ!
T:そう、リンパの流れはそのまま、間質液の排出を司りますから、皮膚が四方八方に伸び縮みできなくなる=リンパが流れなくなります。
S:静脈とリンパとが排出できなくなれば、八方ふさがりだ!
T:このような状況は、二次的に、「不動」と「酸素と栄養との不足」とが同時に起こり生じます。
① 炎症反応
② 局所の硬結+癒着により、筋ポンプ作用低下
③ 局所周囲の表層の癒着を原因としたリンパによる間質液排出機能の低下
④ 自律神経機能低下/不全:疾病もしくはか過剰なストレス反応として
・・・続く。
※なお、この文章は編集部の許可を得て掲載しております。