疼痛コントロールに必要な視点とは? | 日本オランダ徒手療法協会

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疼痛コントロールに必要な視点とは?

2017.08.02

こんにちは!日本オランダ徒手療法協会の香取です。

今回は、疼痛コントロールをする上で必要となる視点として、「弱くなってしまった組織を強くする要素」についてお伝えしていきたいと思います。

 

「弱くなってしまった組織・・・」と言われても、全くイメージできないですよね。

 

例えば、以前はバレー部に所属していて、部活を卒業した後はバレーをあまりやっていなかった方がいたとします。

 

久しぶりにバレーをやる機会があって、スパイクを受けるとレシーブする腕が真っ赤に腫れて、痛くなってしまいました。

 

部活をやっていた時は、全然平気だったのに。。。

 

これは単純に、刺激がなくなったために、部活をやっていた時に比べ、腕の組織が弱くなってしまったということです。

 

この方に対して、レシーブする時の腕のアライメントが…

って治療をやっても、その場では痛みは軽減するかもしれないですけど、もう一回スパイクを受けたら同じですよね?

 

ちょっと極端な例えでしたが、これはリハビリテーションにおいて非常に重要な考え方であり、運動療法やエクササイズの負荷設定をする際に重要となります。

 

では、どうしたら弱くなった組織を強くすることができるのでしょうか?

 

大きくポイントが、2つあります。

 

①  外部からの物理的な負荷量をコントロールする

②  局所循環を高める

 

①はイメージできると思いますが、②に関してはよくわからない方も多いのではないでしょうか?

 

今回は、弱くなってしまった組織を強くするために必要となる、「局所循環」について少し掘り下げていきたいと思います!

 

また、今回の記事は以前に紹介した記事の続きになります。ぜひ下記の記事も併せてお読みください。


月刊スポーツメディスン No.189 4月号 2017年

連載 実践力を上げるための「根本原因と推察しうる要因や理論の使い方」①

-「刺激」×「休息」×「栄養」と局所循環とを臨床ではどう考えるか?-

 

[ケースの情報]

30代 男性サラリーマン:事務職

学生時代はサッカー選手で活躍していたが、4年次の10月に行われた試合中に、接触プレー中に右膝外側を痛めてしまい、残りのシーズンを棄権。結局、保存療法ではあったが、復帰には十分な局所の抵抗力/体力が戻らず、プロ・サッカークラブでのセレクションがかなわず、サッカーを諦め就職。

 

その後は、サッカーをやらなくなったが、最近になって10年ぶりに社内のフットサル同好会に参加。翌日以降、腫れてはいないが、数日ほど同じ右膝外側が痛かった。

炎症/腫脹による組織の影響

T:10年前、サッカーを辞めた時点では膝に炎症が認められ、日常生活レベルでの負荷に戻っています。質的にも量的にも激減した負荷に対して、体が構造的に組織が細く、弱くなり、その日常の負荷に合った変化を通常はします。この患者さんは通常にサッカーを辞めていますか?

 

S:いえ、腫れたままの状態です。

 

T:ということは、腫れているとどうなるんでしたか?

 

S:さっきやったばかりですので、答えられます。炎症反応が「酸素と栄養との不足」状態を生じ、組織が構造的に弱くなっていきます。あ、だけれど求められる「負荷」がちょうど、サッカーを辞め「サッカーレベルの負荷」ではなく「日常レベルの負荷」だからいいのかな??

 

弱くなった組織に対するアプローチ方法とは?

T:身体をつよくする、「刺激」×「休養」×「栄養」のどれか1つの項目だけでも十分でないと、凄まじい勢いで人間の体は弱体化していきます。一週間も病気か何かで寝たきり=「刺激」がないと、その間の筋萎縮のスピードは相当で、人によっては長い距離を歩けなくなったりします。

 

不動のように「休息」が長すぎるとすぐに組織同士がくっつき=排出ができなくなったり、筋ポンプが使えなかったり(イメージを参照)など局所の「栄養」供給ができず、もし、圧力が加わろうものなら床ずれのように簡単に組織が壊死します。それぞれは相互に関係し合っています。

筋膜による癒着のイメージ

引用元:アナトミー・トレイン.医学書院

 

同じ日常生活「負荷」が左右の膝にのしかかっているとしても、このケースの患者さんの場合、健側と比べると、炎症下にある右膝局所はかなり脆くなっていることが予想されます。その状態でフットサルをしたら・・・。

 

S:抵抗力がないところで、膝が内側に入る癖があるとすると、日常生活では何でもなくてもフットサルは激しすぎます!

 

T:たしかアプローチは大きく2つ合ったけれど、「局所への負荷を下げてあげる(=負荷)」と「抵抗力を強化する」と。どうしますか?

 

S:局所への循環が改善されてこその「刺激」×「休息」×「栄養」だから、局所循環を改善することを第一目標に、炎症が治まる「局所への負荷を下げてあげる(=負荷)」を最初に「真」というか、その順番なしでは、炎症が治まらず、構造的に組織を強くするという意味の「抵抗力を強化する」ことはかないません。

 

T:今、Sさんが自分の力で答えを出した過程が、多角的な視点から自分で論理的に組み立てて、ひとつの「仮説」を組み立た・・・ということなんだ。オランダ徒手療法ではこの症状と病態と、それに根本的な原因を推定しながら、治癒過程を阻害していく要因に優先順位をつけてアプローチを考えていきます。このやり方の場合、「仮説」があまり適合していなかったときに、他の「仮説」をまた立てやすいというメリットがあります。そのメリットについては、また次号に体験してもらいます。

 ・・・続く。

※なお、この文章は編集部の許可を得て掲載しております。

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この記事を書いた人

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土屋 潤二

初のオランダ国家医療資格である「徒手療法士」。サッカー界に明るく、筑波大、オランダサッカー協会のインターン、サッカーの名門フェイエノールト・ロッテルダム、Jクラブの名古屋グランパスや横浜Fマリノス、SC相模原、陸上ホッケー女子日本代表、FC岐阜、プロゴルフなどに関与。国内外のアスリートやチームをサポートし続けるスポーツサイエンティストとの顔を持つ「医療」と「体力トレーニング」との2分野での専門家。