努力家の患者さんほど治療に失敗する!? | 日本オランダ徒手療法協会

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努力家の患者さんほど治療に失敗する!?

2021.05.15

From:長島 将太

 

@姪浜スタバより

 

『ねぇねぇ、youtube見ていい?』

 

夕食後、決まって

youtubeを見る息子。

 

そんな息子のお気に入りは、

 

『フィッシャーズ』のチャンネルか

 

『ヒーロー系オモチャ』か『プラモデル』を作るチャンネル

 

なんでそんなに動画を

見たくなるんだろうと思い、

 

息子に聞いてみた。

 

長島「なんでそんなにyoutubeを見たいと?」

息子「面白いけん!」

 

なんてシンプルな回答だ(笑)

 

長島「どんなとこが面白いとよ?」

 

息子「だって、毎日新しい動画が見れるし、自分が欲しいオモチャを作ってるとこ見てると、楽しくなってくるけん!」

 

長島「なるほどね〜」

 

毎日配信される新しい動画コンテンツ

 

自分の欲しいオモチャの中身や遊び方を

知って擬似体験できる内容。

 

これって、

クリスマスの頃に届く

オモチャの折込チラシを見てワクワクしていた

子どもの頃の自分と同じだな〜って思ったんです。

 

20年前は「折込チラシ」

 

現在は「youtube」になってるんだと実感。

 

それにしても、

 

毎日動画を配信し続ける

ユーチューバーの方々、

本当に尊敬します。

 

私も週1本の動画配信をしてますが、

つくづく継続して配信することの大変さを

身をもって痛感してます。

 

たった10分に満たない動画でも、

撮影、編集作業、字幕づけ、サムネ作りなど

を含めると3~5時間以上はかかるんですよね。

 

プロはもっと早いんでしょうけどね(汗)

 

この作業を毎日繰り返してることを想像すると

ほんと脱帽ものです。

 

でも、そのおかげで子どもたちが、

楽しませてもらっているんだな〜と思うと、

自然とそのチャンネルを応援したい気持ちになります。

 

さて、今回は定期的な配信にちなんで

『習慣化』というテーマで話をしたいと思います。

 

習慣化と聞くと、

 

『運動の習慣』『勉強の習慣』などの

 

良いイメージがあると思いますが、

 

臨床においては、

 

その習慣が身体に

マイナスな影響を与える場合があります。

 

 

膝の腫れが引かない半月板損傷 

 

半月板の縫合手術を受けて、

1ヶ月半ほど過ぎた50代の患者さん。

 

退院時の状況は、

・可動域:伸展−7°/屈曲120°

・全荷重での歩行許可

・300mほどの屋外歩行もOK

・歩行時の痛み 、VAS 20mm

・階段昇降は、二足一段づつOK

・膝の腫れ:なし(膝蓋骨バロットメントテスト:陰性)

 

この時期にしては、

膝の状態は良い方だった患者さん。

 

この状態で退院されて、

外来担当の私に引き継がれたのですが、

外来リハ当日。

 

退院時には、

なかった膝の腫れが出現していたんです。

 

『膝蓋骨バロットメントテスト:陽性』

 

でも、これはよくある話。

 

日常生活に比べ、入院中は

歩く量が圧倒的に少なくなるので、

 

術後は膝の腫れ/痛みの状況をみながら、

 

病棟1周(70m)

病棟3周(210m)

病棟5周(350m)

屋外歩行へ

 

このような具合で

段階的に活動量を上げていくんですよね。

 

今回もここまでは順調でした。

 

退院後に膝が腫れるケースでもっとも多いのが、

『活動量の急激な増加』なので、

 

退院前には必ずこの点は注意するよう

指導しているはずなんです。

 

そこで患者さんに確認してみました。

 

長島「もしかして、退院後歩き過ぎてしまいましたか?」

 

患者さん「いや〜そんなことないです。入院のリハビリ担当の方の注意を守って生活していました」

 

長島「それ以外に心当たりはないですか?」

  「自宅の片付けをしたとか?」

 

患者さん「思い当たる節がないんですよね〜」

    「それなのに、だんだん膝が重たくなってしまって、、」

    「やっぱり、これ腫れてますよね?」

 

長島「そうですね。3センチくらい腫れてますよ(汗)」

 

歩き過ぎたり、動き過ぎたり以外で

考えられる原因ってなんだろう?

 

と頭をグルグル働かせながら、

問診、問診、問診。

 

ようやく半月板への

『負荷量増加の原因』の

正体が掴めたんです。

 

その原因は『自主トレ』!!

 

習慣化が招いたまさかの弊害

 

『なんで、自主トレが?』ってなりますよね?

 

実はこの患者さん

非常にリハビリ熱心な方でした。

 

リハビリ担当から指導された注意事項や

自主トレ内容をしっかり守って、

しっかり実践してくれる方だったんですね。

 

しっかり自主トレをして、

注意事項を守っていたにも関わらず、

なぜ腫れが出てしまったのか?

 

その原因は、

『自主トレのやり過ぎ』

 

退院してから外来リハまで

1週間ほど期間が空いてしまうので、

 

膝の筋力を落としちゃいけないって

頑張って自主トレに励んでいたとのこと。

 

そして、自主トレの中でも

大腿四頭筋を鍛える『パテラセッティング』を

より入念に頑張ったらしいんですね。

 

その結果、

大腿四頭筋はガチガチに。

 

膝周囲の筋群の柔軟性がなくなり、

膝蓋骨の動きも低下。

 

膝も伸びにくい状態となっていることに気づかず

無理に『パテラセッティング』をするので、

半月板の前方に圧縮負荷が増加。

 

その結果、

膝の腫れが出現しまったんです。

 

この話を聞いた後で

私が患者さんに再度お伝えしたことは、

 

・腫れの原因を説明

・腫れの原因と予想される自主トレの一時中断

・腫れが引いてくる日数

・腫れが引いた後のリハビリプラン

 

これらの指導をして、

1週間後にリハ予約をして帰って頂きました。

 

1週間後・・・

患者さん「あれから自主トレを自粛した2日後から、膝の腫れがだんだんと引いてきました」

    「今日は、膝の曲げ伸ばしもしやすくて」

    「膝周りの重だるい感じもありません」

 

このように、

患部への『負荷量』を分析していくときには、

 

『膝に対する全体的な負荷量(活動量)』に加え、

 

『膝の組織に対する局所的な負荷量(半月板)』

 

を考慮すると、

症状悪化の原因に辿り着けるかもしれません。

 

徒手的な関節機能の改善もとても重要ですが、

それと同じくらい患者さんの状態/状況分析は、

治療をスムーズに進める武器になります

 

この『分析力』は、

きっと治療家のあなたの武器になります!

 

PS

保育園に息子を迎えに行った帰り際、

必ずお友達同士で『アデューーー』って叫んでいます。

 

最初は謎のワードでしたが、

最近判明しました。

 

このワードは、

ユーチューバー『フィッシャーズ』

のクロージングワードだったんですね(苦笑)


この記事を書いた人

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長島 将太

理学療法士。南川整形外科病院(http://minamikawa-hp.com/about/rehabilitation.html )JADMT認定 徒手療法士。プロの選手からインカレ・インターハイ選手など数多くトップアスリートを診てきている。また、オランダ徒手療法ではチーフ講師として本物の医療を伝えるために後進の育成にも余念のない。サーフィンをこよなく愛する2児の父。