運動負荷の悩ましい設定基準 その1 | 日本オランダ徒手療法協会

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運動負荷の悩ましい設定基準 その1

2022.06.19

from 橋本 祐一 @自宅デスクより

 

こんな驚きのニュースが飛び込んできたんですが、

 

連続で651回の懸垂を達成してギネスに載った日本人がいることを知ってますか?

 

651回!?

 

えぇ〜〜〜!?マジで〜〜〜〜!?

 

そんなに連続でできるわけないじゃん!!って思っちゃいませんでした?

 

私も同じ感想を持った一人です。

 

でも、本当にこの大記録を打ち立てた人がいるんです。

 

補足させてもらうと、今回の連続懸垂記録のギネス認定は、

・順手での連続懸垂鉄棒にぶらさがる

・15秒以内に最低1回

・あごを鉄棒より上に出さなければならない

 

などが条件だったそうです。

 

651回ですよ!?凄すぎます。焦

 

あなたもこれを聞いて驚きませんでしたか?

 

そんなにできるのならどんな屈強な人なんだろうと思って検索してみたんです。

 

徳山県の海上保安部の3等海上保安正、安達健太さんという方で、年齢は34歳。

 

県内では徳山に4人しかいない海保の潜水士の1人。

 

高校時代にはスポーツはしていなかったらしいんです。

 

そこにも驚きで、バリバリスポーツをしている人だと勘違いしてしまいました。

 

ちなみに、安達さんが潜水士になったきっかけは、潜水士の活躍を描いたドラマ・映画「海猿」に憧れて2007年に海上保安学校に入ったそうです。

 

自分も世代が一緒なので、憧れる意味がわかる気がします。

 

そして、憧れの海上保安学校に入ってすぐの時は、懸垂12回しかできなかったらしいですよ。

 

でも、繰り返し練習していくうちに力が付いて、昨年の9月には連続430回を達成したそうです。

 

それをきっかけに今回のギネス記録をめざすようになったそうです。

 

ちなみに、これまで連続懸垂のギネス記録がなかったみたいで、ギネスの委員から530回以上を提示されたそうですよ。

 

そして、ついに今年3月に挑戦!!

 

1時間27分かけて連続651回を達成!!

 

本当にすごいことをやり遂げている姿には感動してしまいました。

 

ちなみに安達さんのシルエットは、脱いでいる動画があって筋肉はムキムキなんですけど、意外と細身だったんですよね。

 

この大記録を打ち立てるにはどれだけの努力をさせているのか?気になりますよね。

 

実際、本番前の2カ月間は1日おきに300回の練習を課したというんです。

 

練習の数も驚愕過ぎて人間ってこんなことまでできるんだと驚きの連続です!

 

でも、300回できるようになるにはどんなトレーニングメニューを組んでいったのか気になりませんか?

 

臨床現場でも目標にしていることを成し遂げるには、どうプログラムを進めていくのか。

 

流石に今回のギネスの懸垂については、極端なトレーニング負荷の内容なので、一般的な負荷とは違って強度が強すぎますが、運動の負荷量をどうやって設定しているのか?

 

トレーニングで、

・何kgでするのか?

・何回するのか?

・何セットするのか?

 

って負荷の設定をすごく考えると思うんです。

 

これを間違えると、怪我につながりそうだし、また痛くなるんじゃないのかって考えると思います。

 

逆に負荷が足りなくて変化が現れないことも、、、。

 

これが案外難しいんですよね。

 

そして、後輩からの質問も多かったので、今回は運動の負荷についてお話ししたいと思います。

 

あなたは運動の負荷をどう設定していますか?

 

後輩からの質問で多いのは、

 

・どの時期に職場復帰やスポーツ復帰をさせるのか?

・運動の開始時期をどう設定するのか?(走っていいのか?練習に参加していいのか?)

・スポーツでの怪我が再発しないようにするには?

などなど

 

これって、私の後輩に関係なく、臨床現場では多い悩みなのではないのかなと感じています。

 

復帰に関してどう運動負荷を設定しているのか?

 

ちなみに私が考えている負荷設定の基準というのが、3つあるんです。

 

それが、

 

・痛みがなくなっていること

・損傷した組織の治癒期間を把握すること

・損傷した組織が目標の負荷に耐えられるか

 

そのうちの1つ目である痛みが無くなっていることを基準としている理由は、

 

痛みが出ると体にどんな反応が起こるのか?ということを考えて設定しているんですよね。

 

痛みが身体に及ぼす影響

 

痛みが出ることで局所はどのような状態になるのか?

 

・循環が悪くなる

・痛みで動かさなくなる

・関節を硬くする

・筋肉の萎縮

・筋力低下を引き起こす

 

 

痛みを堪えながら頑張ってしまうと怪我した部位の局所循環は悪くなってしまうんです。

 

一言で循環が悪くなるといっても、痛み刺激によって自律神経の交感神経が優位になって、血管が収縮してしまうことで体を治すために必要な良い栄養がいかなくなったりします。

 

良い栄養が巡らないだけでなく、老廃物や痛みの物質を洗い流せなくもなるんです。

 

要は排水管が詰まってしまって悪いものがどんどん溜まっていくイメージです。

 

局所の組織が治ろうとする過程から逸れてしまって、怪我していたところも治らなくなってしまい、それ以外の周りの組織にも必要な栄養が行き渡りづらくなるんですよね。

 

そして、結果的に関節の動きを固くしてしまいます。

 

さらに、強い『痛み』を感じると、その刺激は脳が過敏に感知します。

 

痛いという情報というのは損傷している箇所を動かさないように脳は指令を出すんですよね。

 

これはイメージしやすいと思うのですが、その状態がずっと続くと、損傷部にブラジキニンっていう物質が溜まっていくんです。

 

このブラジキニンという物質は、痛みを捉えた脳、脊髄が、反射により交感神経を働かせて、周辺の筋肉の血管収縮を行うんです。

 

なので、酸素欠乏が発生し再び発痛物質が生成されるという悪循環が発生し、筋肉を萎縮させるんですよね。

 

こんな状態で、いくら負荷をかけてトレーニングさせようとしてもうまくいかないんです。

 

さらには、痛みがあって、筋肉の萎縮が起こってしまっている状態なのに、私たち治療家が運動指導をしたとしても、萎縮して動かせなくなってしまった筋肉以外で代償動作になってしまいます。

 

それが健康な組織に負担をかけながら繰り返しメカニカルストレスをかけていくことで元々の運動動作のパターンが行えなくなってしまいます。

 

そしてさらに、痛みの刺激が強ければ強いほど筋肉へ起こる現象があるんですが、それがサイズの原理です。

 

サイズの原理を簡単に説明すると、負荷が軽いときは、サイズの小さい筋肉(インナーマッスル)が働いていて、サイズの大きい筋肉(アウターマッスル)は休んでいる状態。

 

逆に負荷が重いときは、働きは反対になります。

 

サイズの原理でいうところの負荷というのも、痛みの刺激の大きさも負荷で考えるとわかりやすいかもしれません。

 

このサイズの原理が崩れてしまうことで、関節を安定させる機能もあるインナーマッスルが働かずにアウターマッスルが優位に働いてしまうので、関節への圧迫ストレスが強まってしまいます。

 

そうなると関節にある軟骨は圧縮ストレスが高まり続けて厚みがなくなり、骨膜への刺激が強くなることで痛みがさらに強くなるんです。

 

そうすると、痛みを出したくなくなるので、人間って痛みの出ている場所を動かさなくなりますよね。

 

動かすことで恐怖心も生まれるし、痛みのせいでストレスも溜まります。そうするとさらに自律神経系は乱れて治らない身体になってしまいます。

 

さらに痛みで動かさなくなくなると、組織への局所の循環も全身の循環も悪くなっていきます。

 

これだけのことが起こるから、治療家たちが痛みをとることに必死になるのは当たり前ですよね。

 

この話だけでもお腹がいっぱいになってしまうかもしれませんが、痛みによる身体への反応はまだまだあるんです。

 

なので、痛みの出ないように運動負荷をあげる基準の大切さを改めて感じることができるのではないでしょうか?

 

この痛みの出ない運動負荷の設定基準を持つことができるか。

 

そして、痛みのないギリギリの運動負荷を設定することで筋力や動作を身につけるか。

 

これがすごく大切になります。

 

なので、運動の負荷を設定する一つの基準として痛みのないことを念頭に置いて負荷の設定を行なってもらえればと思います。

 

まだまだ、話し足りないのですが、他にも負荷に対する基準はあるのですが、残りの基準は次の機会にお話をさせてもらおうと思います。

 

P.S.

すごいギネス記録を打ち立てた安達さんも、学校に入学した当初は懸垂12回しかできなかったのを聞いて、

 

今の私も懸垂10回くらいしかできないから練習すればできるようになるかもと、私も刺激を受けて現在進行形で懸垂練習しています。

 

まずは目指せ100回!!

 

その前に体を軽くするのもメニューに入れないと。焦

 

それと、三日坊主にもならないようにしないとな。笑

 


この記事を書いた人

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橋本祐一

福岡県在住の理学療法士。【JADMT公認】オランダ準徒手療法士。四肢コース・福岡校講師研修中。総合病院、整形外科クリニックを経験。普段は、主に一般の整形疾患からスポーツ障害の中学生・高校生などの治療を行なっている。休日に息子と戯れ合う時は、全力で遊ぶ一児の父。