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“放散痛” と “関連痛” の違いとは? | 日本オランダ徒手療法協会

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“放散痛” と “関連痛” の違いとは?

2017.08.12

こんにちは。オランダ徒手療法士協会の杉山です。

今日は「痛み」について生理学的な分類や、痛みを引き起こすメカニズムについてお話ししたいと思います!

 

「痛み」は治療に携わる者にとって、一生の挑戦ですよね。

みなさんはどのようにして痛みの原因組織を評価し、治療をしていますか?

 

私はオランダ徒手療法を学ぶ前は、とにかく運動連鎖や局所にかかるメカニカルストレスを中心に評価し、治療を行っていました。

 

・・・今考えれば、そりゃ上手くいかないですよ(苦笑)。

上手くいくこともありましたが、痛みの種類や原因となっている組織を評価できていないので、たまたま上手くいったに過ぎません。

 

現在、触診や機能解剖、アプローチ方法について多くのセミナーが開催されていますが、残念ながら痛み』について正しく理解/評価ができなければ効果は半減してしまいます!

 

そこで、オランダ徒手療法では「痛み」の分類やメカニズムを、どのように捉えているのかを少しだけ紹介したいと思います。

 

 

オランダ徒手療法を学んだ先生と、患者のことでディスカッションをすると良く使われる言葉があります。

 

それは、『この痛み、Ⅲb?Ⅳ?どっち?』です。

 

 

すぐにピンと来た方もいると思いますが、Ⅲb・Ⅳというのは神経線維の分類です。日本の教科書や論文では、「Aδ、C」と表現されていることが多いです。しかし、これは単に分類の表現(文字・数字)の違いで、基本的には同じ内容のことを言っています(図1)。

 

図1 神経線維の分類法

引用:南江堂 痛みの考え方

 

神経線維の分類について、大まかにⅠ〜Ⅳまでの4つに分けれらます。

 

Ⅰ、Ⅱに関しては振動覚・位置覚・触覚に関与し、感覚異常を引き起こすと「しびれ」などを引き起こします。そして、Ⅲbは鋭い痛みⅣは鈍い痛み・ハッキリしない痛みを感じます。

 

この関係を知っておくことが重要で、局所的な疼痛であれば、鋭い痛みに関与するのでⅢbであり、広範囲にわたる疼痛であれば、鈍く・ハッキリしない痛みなのでⅣに分類されます。

 

ここがポイントです!

 

Ⅲbが反応している痛みであれば、組織損傷を伴っている痛みの可能性が高いため、比較的簡単に原因組織を特定することができます。また、損傷した組織に対して一部の神経線維が反応しているので、割と簡単に治療介入や計画を立てることができます。

 

複雑なのは広範囲の痛み、鈍痛やハッキリしない痛み、大雑把な痛みの訴えの場合のⅣタイプの痛みです。このⅣタイプの痛みの原因を理解するのにキーとなるのが、放散痛関連痛です

 

皆さんは、放散痛と関連痛の違いをきちんと説明できますか?

 

放散痛は、その名前の通り限局的な痛みではなく、痛みが広がるというものです。もともとはⅢbなどの局所的な痛みだったのが、時間経過と伴にⅣの神経繊維が反応し、範囲が鈍く広くなっていったということです。また、この放散痛はトリガーポイントなどで良く説明されているのですが、ある程度パターンがあります(図2)。

 

メカニズムには、Ⅳの神経線維のある特徴が関係しているのですが、今回は説明を省略します。また、文献によっては放散痛は反射による筋の連縮が関係すると説明されているものも多いですが、それだけでは説明ができないものも多く経験されるため、オランダ徒手療法では神経繊維の特徴による影響も強いと考えています。

 

図2 放散痛のパターン(一例)

 

次に関連痛について、説明をしたいと思います。教科書では、内臓で説明されることが多く、あまり筋骨格系で紹介されている文献は少ないですが、同じような機序で筋骨格系の痛みに関しても関連痛が存在します。

 

例えば、腰椎3/4の椎間関節に圧迫ストレスが加わり続け、それを痛み刺激として神経系が反応し、信号が脳へ送られるとします。しかし、脳では腰椎3/4(同レベル)が支配する皮膚や筋などの領域から痛み刺激がきていると勘違いしてしまい、実際には下肢の局所で痛みの信号が出ているわけでもないのに、下肢の局所が痛いと感じてしまうのです(図3)。

 

これは、問題を引き起こしている椎間関節に対して、徒手的に圧縮ストレスをかけたり、動作でストレスを再現することで簡単に評価することができます。

 

図3 同レベルの四肢に向かう神経と椎間関節に向かう神経

 

簡単にまとめると、放散痛はトリガーを中心とした局所に問題が起こっている場合が多く、関連痛は局所とは離れた部分に問題がある、ということです。

 

ここが見極められるようになるだけでも、今まで1つの視点でしか捉えられていなかった痛みに対して、原因毎にアプローチを行うことができ、なぜ脊柱にアプローチをしているのかなど目的もはっきりとします。

 

痛みは、1つだけの原因で引き起こされている場合の方が少なく、複数の要因が絡んでいることが多いです。しかし、だからこそ多角的に評価/仮説をたてることで、1つの仮説が外れた場合にすぐ他の仮説をたてることができるのです!

 

局所、広範囲?
Ⅲb、Ⅳ?
放散痛、関連痛?

 

この疑問を常に持ち続けることで、少なくとも局所なのか、脊柱なのか? 痛みに対するアプローチは変化していきます。今、手元にある技術でも的確にアプローチすることで確実に成果を出すことができます!

 

下手に枝葉を広げようとして治療アプローチの方法を学ぶのではなく、まずは基本的な評価から見直してはいかがでしょうか?

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。