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痛みのプロになるための話 | 日本オランダ徒手療法協会

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痛みのプロになるための話

2021.06.18

from 橋本 祐一 @自宅デスクより

 

テレビで紹介していた企画に私が目を奪われてしまったので、紹介したいと思います。

 

その内容が、林修先生がダルビッシュ投手にインタビューをする二人のシーンなんですよね。

 

自身の意見をYouTubeやSNSで発信し続けているダルビッシュ投手が重視する「メンタル面のアプローチ」というワード。これに私は釘付けになったんです。

 

ダルビッシュ投手は、アスリートのコンディション維持について、ここ数年メンタル面のケアを身体的なトレーニングと同じくらい重視しているとおっしゃっていたんです。

 

その理由が、福岡ソフトバンクの吉住晴斗投手が契約の問題で引退を考えていると聞き、面識がないにもかかわらず接触したらしいんですよね。

 

ポジティブな言葉がけでアドバイスを送って、これが契機となって吉住投手は現役続行を決意させるまでに及んだんです。

 

どうしてそこまでメンタルケアを重要視するのか?それは、ダルビッシュ投手が語ったのが「頭にたたき込まれている」という自身のつらい経験だったそうで、

 

”ネガティブな言葉は人に恐怖や不安を植え付ける”

 

「レンジャーズで活躍している時代、『フォアボールが多い』とか『昨日はフォアボール4個だ』とか『コントロールが悪い』とかずっとネチネチとチーム内で言われ続けて、それが頭から離れなくなってしまい、いろいろ崩れちゃった。ネガティブな言葉って人にここまで恐怖や不安を植え付けるんですよね。だから、ポジティブな言葉をかけたいというのは、そういうところから来ています」と明かしていたんです。

 

その後、ドジャース、カブスと活躍の場を変えていく中で野球の楽しさを取り戻しながら、ポジティブな言葉が自分に変化をもたらすことも実感をしたそうなんですよね。

 

「ポジティブな言葉がどれだけ人を助けるか、いい時も悪い時もコーチがその選手に対して同じ態度で接することがどれだけ大事か。

 

いろんな人の言葉がずっと残っていて、今、自分が人を助けられるようになっていると、メンタルケアの重要性に気付いた経験を振り返っていました。

 

この話を聞いて、ダルビッシュ投手は日本でも海外でも順風満帆に活躍しているだろうと思っていたんです。

 

ですけど、ダルビッシュ投手も悩み続けて、同じ悩みを持つ選手にポジテイブな言葉をかけることの大切さその言葉1つ1つに気持ちを込めているんだと、説得力のあるインタビューだったと思ったんです。

 

この”ネガティブな言葉は人に恐怖や不安を植え付ける”という言葉。

 

言葉だけではなく、リハビリの場面では『痛み』って恐怖や不安を植え付けませんか?

 

今回は、そんな痛みによって恐怖が植えつけられてしまった患者さんのお話をさせて頂きます。

 

肩痛がひどくリハビリが恐い患者さん

 

50歳代の女性、右の肩関節周囲炎で悩む患者さんを今回は担当したんですよね。

 

「首も痛いが肩の全体が痛くてたまらない。動かすのも痛いし、寝ていてもじっとしてても痛いんです。」

 

問診の冒頭でこの表現なので、これは炎症しているんじゃないかな?と思い、問診を進めていこうとすると、こちらから質問する前に「1年以上前からずっと痛いんです。」

 

ん!?1年以上前から!?これはおかしい!

 

1年も同じところが痛いわけではなく、別のところも痛くなったと痛みが広がっているみたいなんです。

 

問診をさらに進めていくと

 

・1年前は肩の前の方が痛かったけど、今は肩のてっぺんあたりが痛い(肩峰のあたり)

・肩をすくめると痛い

・車で立体駐車場に止める時に駐車券を取ろうとするとズキっとする

・ズボンや下着を挙げたりするときに肩を後ろに回すと痛い

・肩を水平に保つ動作もすぐに痛みが出てしまい、力が抜ける感じ

・夜も疼くような痛みで起きてしまう

 

安静時にも痛みがあるため、腱板損傷を疑って一度MRI検査をした方が良さそうだなと判断。

 

Drへ再度診察依頼して、結果は腱板損傷。ちなみに棘上筋前部繊維でⅡ度損傷だったんです。

 

その後にリハビリ再開したんですが、その患者さんが表情がすごく落ち込んでいたんです。

 

その理由っていうのが、他病院で良くなると思って1年間もリハビリして、このような結果になったからリハビリへの不信感が募っていたんですよね。

 

詳しく聞いていくと、痛くても動かさないと硬くなって、さらに酷くなると言われてそれを信用してやっていたとのこと。

 

痛みがひどくなってきたような気がしてそのことを伝えても、まだまだ肩甲骨周りは硬いからですよの一点張り。動かす頻度が少ないからもっと動かしてと教えている自主トレをしてくれと言われていたらしんです。

 

痛みのコントロールの大切さ

 

痛みが出ていることで局所ってどんな状態になりますか?

 

・循環が悪くなる

・関節を硬くする

・筋肉の萎縮

・筋力低下を引き起こす

・運動を制御する

 

『痛み』を堪えながら頑張ってしまうと怪我した部位の局所循環は悪くなってしまうんです。一言で循環が悪くなるといっても、痛み刺激によって血管は収縮し、いい栄養がいかなくなったりします。

 

栄養がいかないばかりか、要らなくなった老廃物や痛み物質を洗い流せなくなるですよね。

 

組織を作り直す、言い換えれば身体の治ろうとする過程から逸れてしまって、怪我していたところ以外の周りの組織である皮膚や筋肉、筋膜、関節包などに必要な栄養が行き渡りづらくなり、そして関節の動きを固くしてしまうという結果になってしまいます。

 

さらに、強い『痛み』を感じると、その刺激は脳が過敏に感知します。

 

その痛いという情報が損傷している箇所を動かさないように脳は指令を出すんですよね。

 

それが、ずっと続くと、損傷部にブラジキニンっていう物質が溜まっていくんです。このブラジキニンという物質は、痛みを捉えた脳、脊髄が、反射により交感神経を働かせて、周辺の筋肉の血管収縮を行わせることにより、再び酸素欠乏が発生し再び発痛物質が生成されるという悪循環が発生し、筋肉を萎縮させるんですよね。

 

そして、萎縮して動かせなくなってしまった筋肉以外で代償動作になって、それが健康な組織に負担をかけながら繰り返しメカニカルストレスをかけていくことで元々の運動動作を行えなくなってしまってしまいます。

 

それによってインピンジメントが起こったりと、負のスパイラルが出来上がってしまいます。

 

なのでリハビリのストレッチやリリースの治療としての負荷に耐えられない状況へ陥って、少し触っただけでも痛みを訴えるという状況になってしまいます。

 

今回の患者さんも1年間痛みを耐えながら動かし続けた結果、筋肉の萎縮や関節可動域制限、損傷した周囲の組織も脆弱化してしまっていたのだと思います。

 

痛みを我慢して行なっていくが、一向に良くならないことや、自主トレをしていても悪くなっていくことにリハビリに対して恐怖を感じていたんではないかと思うんです。

 

でも、振り返って見ると自分自身も過去に痛みをないがしろにして、運動をさせ続けていたりしていたこともあった気がするんです。

 

それではダメだと気づいて、痛みによってどんなことが起こり得るのか?どんな痛みなのか?など細かく考えながら患者さんと向き合うようにしています。

 

そうしていかないと、痛みという恐怖を患者さんから取り除けないと思いますし、治療家としても患者さんの痛みがなくなっていかないという恐怖も取り除けないと思います。

 

痛みはここで話した内容以外にも色々な影響を与えていきますし、患者さんの痛みの経験値からも捉え方が違ってきたりしますので、痛みを診るだけでなく、患者さんの『痛み』を診れるようにしていきたいですね。

 

P.S

ダルビッシュ投手のようにポジティブな言葉かけをしてメンタル面でもケアをしていけるように、私も患者さんを笑顔で元気づけることをモットーに悩んでいる方へのサポートをしていきたいと思います。

 


この記事を書いた人

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橋本祐一

福岡県在住の理学療法士。【JADMT公認】オランダ準徒手療法士。四肢コース・福岡校講師研修中。総合病院、整形外科クリニックを経験。普段は、主に一般の整形疾患からスポーツ障害の中学生・高校生などの治療を行なっている。休日に息子と戯れ合う時は、全力で遊ぶ一児の父。