blog
「痛みのない範囲で動かしてください。」をどう考える(生理学編)
2020.03.21from 杉山貴規 吉祥寺スタバ
新型コロナの影響で、子供いる時間がものすごく増えたんですが、
一日家を開けることもあって、そんな時は学童に連れて行くんですけど、
給食はないので、お弁当が必要になってくるんです。
この間こんなことがあって、
息子(息)「お弁当パパが作ってよ。」
杉山(杉)「えっ、、、いいよ。作ってやるよ。うまいの作ってやるよ」
大風呂敷広げちゃったんです。
ま〜料理を作るのは好きだし、これでもバーでキッチンやっていてイタリアンやフレンチも作っていたんで。。。
どうにかなるだろうって思ったんです。
でも、弁当を作るのは人生でお初。
すげ〜気合い入れて、食材集めから、初めて手作りで作ってやったんです。
息子からのリクエストはこちら
・ご飯(俺の頭の中→大丈夫!)
・肉団子(俺の頭の中→ハンバーグと同じだろ。なんとかなる!)
・だし巻き卵(俺の頭の中→作ったことないけど、ひっくり返せればできる)
・きんぴらごぼう(俺の頭の中→無理!セブンで調達)
でも、これだけじゃかわいそう。
そうだ!カポナータ作ろう
で、悪戦苦闘して、
前日からこしらえて作ったんですよ〜
楽しくて楽しくて、
寝たの深夜0時
朝6時に起きて、全部弁当箱に詰め込んで(詰めるのも初めて)
眠気まなこで起きて来た息子にドヤ顔で弁当渡して、
早々に軽やかに出勤!
ってな感じの日だったんです。
でも、これって弁当作るのって本当に大変でも楽しいって!
さて、さて、弁当作るのに、何回かやってしまった指を切る行為
とても痛いです。
血が出るからやっぱり痛くて、指をどうしても曲げちゃいがちですよね。
痛みが出ると筋が収縮してどうしても曲がってしまう。
生理的な現象なんですが、
今回は、痛みに関して話したいなって思います。
痛みのない範囲で動かして
よくこの言葉、使っていませんか?
自分も使います。
じゃ〜何で、この言葉使うんでしょうか?
- 痛みは体に良くないから
- 手術後は、修復したところを悪化させてしまうから
- 損傷した部位を悪化させてしまうから
これって、誰もが思って言いますよね。
自分も、そう思ってリハビリや施術をしていました。
当時、大腿骨頚部骨折で全置換術をした人なんか、よくこの言葉を使ってリハビリをしていたものです。
- 可動域の練習
- 筋力訓練
- 基本的な生活動作(寝返り、起き上がり、座位、立ち上がり、、、歩行など)
とにかく、患者さんにこの言葉をかけ続けていたんです。
特に問題はないですよね。
だって、痛みを伴うことはいいことじゃないし、痛い動作を繰り返すことは心理面においても悪影響を引き起こし、リハビリをやってくれなかったり、代償動作をたくさん引き起こす可能性があるから、なおさらですよね。
そんなある時、
この疾患の患者さんに可動域練習をやっていたんです。
股関節の可動域を拡大していかないと、生活動作に悪影響があるから他動・自動運動を行なっていたんです。
すると、ある角度で痛みと筋緊張が出て、それ以上角度が上がらないことに出くわしたんです。
いわゆるスパズムってやつです。
なんですけど、その患者さん、ガンバちゃうんです。
だから痛みが少し出ても、我慢してどんどんリハビリを進めようとするんです。
で、次の日その人の可動域を見ると、悪化していたんです。
なぜか?
それは簡単ですよね。
痛いのを我慢して、運動をやり続けたからスパズムが生じたからなんです。
だから、またその患者さんに痛みが原因だという話をするんです。
すると、動きはどんどんできるようになっていくんです。
歩行もピックアップや両松葉杖で可能になっていて、スムーズに進んでいる。
だから、こちらとしても、大丈夫かって、
少しの痛みは伴っているけど、このまま生活に戻れるだろうって思っていたんです。
しかし、ある時停滞期が来たんです。
それは、
独歩が不安定で手術をした方の足に体重が乗らなく跛行に。。。
階段は手すりがないと登れない。。。
うまくいっていたと思っていたんですが、、、
生活動作の可動域は確保できていたんです。
それは動作の中で。。。
でも、寝てもらって可動域や筋力を見ると。
手術直後とあまり変わっていなかったんです。
なぜだろう???
それは痛みを抱えてリハビリをしていたことが原因だったんです。
では?なぜ痛みを抱えてリハビリや施術するのは良くないのでしょうか?
痛みは全て組織を脆弱にする
知っている人もいるとは思いますが、
痛み刺激っていうのは侵害刺激の連続なんです。
これが、起きているとどのようなことが体の中で起きているのか?
痛みは以下のこと起こします。
・筋肉の萎縮
・循環を悪くする
・筋力の低下を引き起こす
・関節を硬くする
・運動を制御する
このようなことを引き起こすんです。
人間の頭の中では、痛いっていう刺激が出るとそれを制御するんです。
なぜか?
体の一部が痛みを感じると、その刺激が脳に行って、脳がその損傷している箇所を動かさないように指令を出すんです。
そうすると代償動作などのを行い、逃避反応を引き起こします。
でも、それでも動かそうとすると、損傷部にブラジキニンっていう物質がどんどんたまり、排出されない状態になるんです。
それが厄介な状態を引き起こすんです。
この物質は筋肉を萎縮させるんです。
そして、萎縮すると筋肉のコンプライアンス(伸縮)が悪化するんで、可動域にも影響が出るんです。
もう、悪循環ですよね。
つまり、何が言いたいか?
痛みの出ない範囲はとてもいい言葉です。
でも、多くのセラピストがここまでの生理学的なこと知らないでリハビリや施術をやっているんです。
痛みのない範囲での意味は心理的な問題も確かにありますが、生理学的に考えると
筋肉が萎縮して、
筋肉のコンプライアンスを低下させ、
筋力・筋肥大を低下させ、
可動域を低下させ
損傷部位の治癒速度を遅らせ
さらに、損傷した周囲の組織も脆弱化させるんです。
これをわかっていて、リハビリのプログラムを構築させることが重要なことなんです。
だから、痛みっていうのはよくなし、表出させないようにすることが重要なんです。
「痛みのない範囲で動かして。。。」の
この言葉の意味をもっと深く理解して使えるようになると、リハビリや施術の結果は大きく変わり、成果として身を結ぶはずです。
PS
ちなみに、大腿骨頸部骨折で後方侵入の場合は外旋筋群の萎縮が起こりやすいです。
屈曲可動域がうまく出せない時は、そこの循環を良好になさせ、ブラジキニンなどの物質をそこから出す作業を行うない、さらに外旋筋同士がくっついている可能性が大きいです。
なので、リリースなどを行い使えるようにしていくと、可動域も拡大し、筋力も向上していく環境ができるから、跛行などの問題も改善していくことがあるので、ぜひ参考にしてください
PPS
息子が帰って来て、
「おいしかったよ〜」
空の弁当箱を見たときは嬉しさのあまり、感極まりそうになったんです。
でも、もっと包丁さばきをうまくしたいですね。
指は切りたくない(笑)