大腿骨頚部骨折全置換術の大胆なリハメニューで痛みが寛解!(後方侵入編) | 日本オランダ徒手療法協会

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大腿骨頚部骨折全置換術の大胆なリハメニューで痛みが寛解!(後方侵入編)

2020.10.08

from 杉山貴規 広尾オフィス

 

「えっ、なんか怪しい」

「この痛みどこかでやったやつ、来そう、やばい」

 

ギックリ腰の前兆だ!

 

先週末、急に腰椎らへんがブルブルしてきて、

少しの姿勢の変化でも

 

『ピキッ!』

 

ってやつが来たんです。

 

もう7年くらい前に一度ギックリ腰をやっていて、その時も同じような前兆があって、そのままにしてたら、この世のものじゃない痛みが襲って、そのまま撃沈。

 

人の手を借りないと歩けないない状態になって、家のトイレに行くのも四つ這いになって、便器に座るのも一苦労だったんです。

 

そんな経験をしているから、

 

(これはヤバイって!)

 

って心の中で思って、近くのドラッグストアでコルセット即購入→装着!

 

腰椎部分が安定してどうにかこうにか、病院への受診を免れたんです。

 

その場で組織の鑑別と評価をして靭帯損傷かなってことになったんです。

 

おそらく3日は痛みは継続、その後落ち着くだろうと踏んで、様子を見たんです。

 

その間はコルセットはつけず、ギリギリのところでとにかく腰を動かすように徹底。

 

腰部は常に温めて、風呂では交代浴を実施。

 

多裂筋の萎縮も心配だったので、痛みのない範囲で運動療法を行ってたんです。

 

すると、どうでしょうか?

 

5日目になるんですが、今では痛みもなく普通の生活を送れているんです。

 

コルセットもなしです。

 

コルセットはあまり意味をなさいっていう文献を知っていたので

施術中やトレーナー業で他人に迷惑をかける可能性があること以外では装着せずに。

腰痛は本当に怖いですが、正しい対処を知っていれば早期に通常の生活に戻れるんですよね。専門医が「安静にしてください。」っていう一言でかなりビビちゃうと思うんですよね。

 

トリアージを行い、レッドフラッグでなければどんどん動いて元の生活に戻っちゃいましょう!その方が絶対に腰にいいですから。

 

コルセットをつけると楽なんですが、つける時間が長いほど、腹部や腰部の筋肉つまりコアの筋萎縮が急激に加速して、取った時には腰を支えられなくなって、再発のリスクが余計高まっちゃいます!

 

って、これでブログを終わりにでもいいかなった思うんですが、これはあくまでの前説。

 

で、今回紹介する話の内容は大腿骨頚部骨折全置換術2ヶ月後のリハビリについて話そうと思います。

 

曖昧な情報をアップグレードする

 

スタッフ「杉山先生、〇〇さん何ですけど、手術をして最近病院から退院して、今日からリハビリをお願いします。」

 

杉山「了解です。」

 

ま〜こんなこと日常茶飯事の出来事で、二つ返事で了解するんです。

 

こんな時に考えるのが、

・どんな人?

・何で入院して、退院したのか?

・どんな手術をしたのか?

・ADLはどんな状態なのか?

・どんな症状なのか?

 

などなど

 

色々なことを想像しますよね。

 

最初はサマリー(情報提供書)で上記のこと確認して、本人に会いに行くんです。

 

すると

・左大腿骨頚部骨折全置換術

・歩行は歩行器にて可能

・杖歩行や独歩は不安定

・痛みはない(自動運動・他動運動・歩行時)

・コミュニケーション良好

・リハビリは積極的に行なっていた

・股関節の伸展・外旋は禁忌

 

などなど

そのほかにも入院先の情報が書かれていたんです。

 

でも、やはり完璧な入院情報を送られてくることはまずないんです。

 

というのも、これって人それぞれだとは思うんですが、『疑問』っていうのがあると思うんですよ。

 

自分の場合 

・術式は前方侵入?後方侵入?

・歩行器の歩行可能って連続何メートル可能?何分の耐久性があるの?

・リハビリを積極的って、どんだけの時間リハビリやっていたのか?

・どんなリハビリを入院期間中やっていたのか?

・歩行の不安定性ありってどんな不安定性だったのか?

・精神疾患はある人なのか?

・コミュニケーション良好って、片言でも良好っていう人はいるし、どれだけ良好?

 

などなど

 

この疑問をぶつけることは、実は退院してからだと難しいんです。

というのも、常駐のスタッフではない自分は、退院前や退院時に病院に行ってこれらの疑問をぶつける機会がないんです。

 

だから、そこのスタッフさんや本人から聞くしかないんです。

 

つまり、得られる情報は

・施設スタッフさんからの情報

・入院していた病院からの情報

・本人から直接聞いた情報(問診)

 

これらを聞いて整合性があるかどうかを確認するんです。

 

そして、そこから

・今まで自分が培ってきた経験

・最新の知見・情報

 

これらから、 

この患者さんのリハビリのプランやプログラムを作成して行くんです。

 

文書で書くと気の遠くなるような感じですが、

 

実際はこれを20〜40分くらいかけて行います

(主に患者さんとスタッフからの問診が8割)

 

痛みの原因はアンダーワーク

 

情報提供書はやはり退院時のものなんで、やはり少しタイムラグが出ているんです。

 

実際、スタッフさんや患者さんに聞くと

・歩行は歩行器で連続20m程度

・歩くと痛みが出現して、跛行になる

・実際の移動方法は車椅子の自操

・痛みの出現場所は手術した左側の股関節から膝を経て下腿まで

・他の痛みは右側の股関節・膝

・本人が一番困っているのは膝の痛み

・入院時はリハビリとトイレ以外はベッド上で生活(2ヶ月間)

・傷口は前方にありと禁忌が股関節伸展・外旋(前方侵入)

 

やっぱり、情報提供書っていうのはある程度の情報しかないってことなんです。

 

最新の情報は自分で取るしかないんですよね。

 

でここから、

・この患者さんの主訴の痛み

・スタッフさんが望んでいる歩行の自立

 

という二つの目標に取り組んで行くんです。

 

痛みの部位を見てみると下肢全体っていうことなんですよね。

しかも、右にも出ている。

 

耐久性は20m程度

  

これらを見てみると明らかにアンダーワークが原因で痛みが下肢に出ているんじゃないかった思ったんです。

 

実際、歩行をやってもらうと、歩行器に前方に寄りかかるような感じで歩行しているんです。

 

となると、股関節周囲の筋肉の収縮を使わない状態なんですよね。もちろん体幹もです。

前がかりになっているから体幹は働かないし、脊柱は常に円背状態不動の状態ですよね。

 

となれば、歩いていいてもこれは自立に向けて行くのは相当な時間がかかるし、痛みも取れない可能性が大きいって思ったんです。

 

自律神経レベルで考えれば、末梢神経からの指令を促しにくい状態になるし、下肢は筋収縮は行われないから循環は不良の状態。

 

これじゃ〜ってな感じです。

 

そこで、こんな提案をしたんです。

 

それは。。。

 

もう、普通に動いちゃいましょう!

 

簡単に言えば、運動不足が問題

 

確かに、病院リハビリで行うような可動域訓練や局所的な運動療法も重要です。しかし、圧倒的に基礎体力っていうところが今回は問題って考えたんです。

 

だから、スタッフさんに提案したのは

・歩行器でどんどん歩いてもらいましょう!

・痛みが出たら休む

・夜は車椅子移動

・ベッドで横になる時間は日中は2時間まで

・身の回りのことはどんどん自分でやってもらう。

 

すると、かなりスタッフさんもビックリして

(大丈夫??)ってな声が聞こえてくる感じの表情

 

でも、お願いしたんです。

 

じゃ〜なんでここまでアクティブで積極的な提案ができたのか?

それは先にも行った答えと、

 

この手術方法に答えがあるんです。

 

『前方侵入』だからOKしたんです。

これが後方侵入なら、かなり慎重になったと思うし、かなりスタッフさんに注文をつけたと思います。

 

しかし、この術式は生活動作するときに制限となる動作が少ないんです。

 

また、本人の自覚症状の訴えが的確で、痛みの度合いを相手にしっかりと伝えられ、その情報の整合性があるというところなんです。

 

だから、ここまで大胆な要求を本人にもスタッフさんにもしたんです。

 

つまり、重要なのは何が原因でこの痛みを生じているのか?

そこが重要なんです。

 

今回の場合は、細かい局所的なリハビリはほどほどにして、日常生活は制限なく行うことが痛みを取り除き、強いてはADLの拡大を促してくれると仮説を立てて行ったんです。

 

最近では、歩行器に寄りかからなくなり、背筋を伸ばして日常生活を遅れています。しかも、下肢の筋肉も出力も出てきて、痛みものかなり減弱しているようになったんです。

 

次は、T字杖歩行での日常生活獲得と屋外に出て歩行距離の拡大を目指したところを本人も施設側も目指すようになっています。

 

このように、手術後のリハビリを任されたときに重要なのは、その手術の内容を把握しておくこと。

 

・その手術でどんなところを切っているのか?

・その手術の利点と禁忌

・入院中の生活リズム

など

 

これらを知っておけば、特に怖いものはないんですよね。

 

もし、手術後のリハビリを任された時はまずは手術の情報収集を行なってみてください。

 

そこからかなりの情報を得られ、リスクの少ないリハビリが可能になりますよ。

 

PS

にしても、最近はドラッグストアに行けばなんでも揃っているから本当に大助かり。

なかったら、街中で四つ這いになっていたかもしれない(笑)