冷やさずに腫れを管理する方法 | 日本オランダ徒手療法協会

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冷やさずに腫れを管理する方法

2018.11.13

From:長島 将太

 

@近所のスタバより

 

「ちゃんと〇〇してるんですけど、、、(泣)」

 

それは先週の業務終了後の時だった。

職場の後輩が少し神妙な表情で、患者さんのことで相談をしてきたんですね。

 

いつも後輩から受ける臨床の質問に対して「もっと考えてみて…」と答えを出さず

返してしまう事が多いんですね。

 

これには、理由があって。

決して冷たい態度を取っている訳ではないんです。私が後輩の質問に安易に答えてしまうと、私の見立てで治療しようとするので、後輩自身が「考える機会」を失ってしまう恐れがあるからなんですね。

 

ですが、後輩の気持ちは十分に分かるんです。

正直、何が正解か分からない臨床では経験者からのアドバイスは非常に頼りになりますよね。特に経験年数が浅ければ浅いほど、その傾向にありますね。

 

でも、私はその場凌ぎの解決より、自分自身で解決できるように「考える力」をもっと磨いてほしいと思っているので、心を鬼にして

 

「もっとこの点について考えてみて…」

 

「どうすれば良いと思う?」のような返答しかしないんですね。

 

こんな感じで、なかなか解決方法を提示しない私なので、後輩が質問に来る時は

よっぽど困った時なんですね(笑)

 

でも、本当は教える事が好きなんですよ。

 

個人的には、分かりやすい解説で有名な「池上彰さん」を目指しているので

「理学療法士版の池上彰」って呼ばれたいと思っています(これ本気です!!)

 

少し脱線しましたが、そんなこんなで後輩からある相談を受けたんです。

その相談が、こんな内容だったんです。

 

# 足部の腫れが引かない 

後輩が担当していた足関節骨折の術後の患者さんの相談でした。

 

「色々と工夫してアプローチしているけど、なかなか腫れが引かない」との事でした。

さらに腫れの影響で足首の動きも出ずらく、歩き方もぎこちないらしい。

 

後輩は、このまま同じようなアプローチで大丈夫なのかと心配になったようでです。そこで、後輩にこれまでにどんな事をやってきたか確認してみたんです。

 

そしたら、

「お湯や水に交互につける交代浴や超音波などの物理療法」

 

「足首周りの筋肉や軟部組織リリース」

 

「足首のモビライゼーション」

 

「足首周りの筋力強化」

 

「リハビリ前後の徹底したアイシング指導」など

 

聞いた感じ、全然問題ない。

後輩本人もやっている内容に関しては、結構考えてやっていたようなんですね。

 

でも、後輩はとても大事なことを見落としていたんです。

 

それは、、、

「腫れ」を引かせる為に行なっているアプローチの時期だったんです。

 

#腫れを引かせるための条件

よく臨床場面で「炎症=冷やす(アイシング)」という対処をよく見かけますよね。

これは術後に炎症や痛みが強い場合には効果的なんですが、炎症が落ち着くと逆に腫れを引かせるには逆効果の場合があるんですね。

 

「嘘だろー」と思う方もいますよね。

 

実は私も同じ意見だったんです。

 

新人時代は腫れをなんとかしたかったので、患者さんに「術後のアイシング」は徹底的に行うように指導していましたし、病棟の看護師さんにも徹底するようにお願いしていました。

 

ですが、アイシングをすればする程、腫れが引かなかったんですね

ちゃんと術後の腫れの管理を徹底しているのに、思ったような結果が出ない。

 

なぜなら「患部を冷やす事で関節内や関節外の流れを悪くさせていたから」なんです。

もっと簡単に言うと「患部の循環不良」を引き起こしていたんですね。

 

今回の場合で言うと、アイシングの時期が長かったんです。

アイシングの効果は諸説ありますが、今のところ「痛み」には効果的ということのみです。

アイシングが不必要な時期に余計に患部を冷やしちゃってたんですよね。

 

ですから、術後の痛みが落ち着いた患部を余計に冷やす事は避けた方が時にはいいかもしれません。きちんと時期を見極めて、アイシングというアプローチを止めるだけでも患部は循環し始めます。

 

勿論、これだけでは腫れは引かないんです。

(「当たり前だろー」って声が聞こえてきそうですが、、、)

 

# 腫れを引かせるには循環改善が必須!

腫れを引かせるには、「水が流れる環境整備」と「水を流す事」が重要なんですね。

 

「水が流れる環境整備」=血管が拡張している/リンパの流れが良い状況

「水を流す」=筋ポンプ作用/足首を動かすなど

 

これらは皆さん、理解していると思うんです。

だから一生懸命に「水を流す」アプローチをしますよね。

 

足指の運動したり、踵上げさせたり。

ですが、もっと重要なのは各軟部組織間の動きなんです。

 

それは、、、

皮膚の伸縮性であったり、皮膚と筋肉であったり、筋肉と筋肉であったり、腱と腱であったり、関節周りの組織が十分に動くことが「水を流す」ためには重要なんですね。

 

これらが十分に伸び縮みすることで不要な水はリンパ管や静脈から出ていけるのです。

そして、さらに不要なアイシングを避ける事で血管自体も流れる環境になっているので

これで腫れが引く条件が揃うんですね。

 

この条件に気をつけるようになってから、ほとんどの患者さんで腫れ管理で悩むことはなくなりました。

 

今回のように腫れが引かず、何をやればいいか迷っている方は一度自分の行なっているアプローチの時期を見直してきては如何でしょうか?

もしかすると、ちょっとしたタイミングの違いが結果を左右しているかもしれません。

 

PS

考える機会ばかり与えすぎると、「あの先輩は何も教えてくれない…」

という噂が流れますのでご注意を(笑)


この記事を書いた人

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長島 将太

理学療法士。南川整形外科病院(http://minamikawa-hp.com/about/rehabilitation.html )JADMT認定 徒手療法士。プロの選手からインカレ・インターハイ選手など数多くトップアスリートを診てきている。また、オランダ徒手療法ではチーフ講師として本物の医療を伝えるために後進の育成にも余念のない。サーフィンをこよなく愛する2児の父。