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ぎっくり腰を繰り返させる残念なリハビリとは?
2020.04.20from 永重諒 佐世保の自宅
3年ほど前のある真夏の朝のこと。
「かゆい〜〜〜〜!!」
両足の強烈なかゆみで目が覚めた。
見てみると、ふくらはぎから足首にかけてたくさんの湿疹が…
実は、前日に職場の同僚達とバーベキューをしたんだけど、虫除けスプレーが途中で切れてしまうというハプニングが。
そのため、上半身しかスプレーが出来なかったんだよね。
それから1週間ほどかゆみと格闘。
「スプレーが切れた時になぜ買いに行かなかったんだ」
当時は、何度思ったことか…
今回は、そんな未然に防ぐことができたはずの臨床での失敗談について書いたから読んでみてね。
辛いぎっくり腰…復職目的のAさん
腰を押さえながら辛そうな顔をして来院された40代男性のAさん。
ホームセンターで働いており、2日前に20kgほどの物を床から持ち上げた瞬間に腰に痛みが走ったとのこと。
いつも通り問診からスタート。
・寝てたり、座っていると痛くない
・寝返りや立ち上がりの時に下の腰が痛む
・寝起きの動き始めが辛い
・身体を反ったりすると痛む
・仕事は今は重い物を持たないようにしている
以上のような情報が得られた。
骨折や感染などもとりあえずは否定できそう。
安静時や夜間の痛みも無いし、炎症が起きている可能性も低い。
おそらく、椎間関節の圧迫ストレスによって痛みが出ている可能性が高いんじゃないか。
その考え、圧迫ストレスを逃すような治療を行ってみると痛みは来院時の半分ぐらいまで軽減。
2週間ほど通院しながら治療を行うことで、日常生活での痛みはほとんど無くなり、軽作業であれば仕事も問題なく行えるようになった。
「痛みは無くなったし、もう復帰してOKです!」
前の自分であれば、この時点でそう言ったかもしれないが、急性腰痛後は多裂筋が急速に萎縮するという事実をオランダ徒手で知ったんだ。
多裂筋は背骨に直接付いて椎体を安定させる役割があるため、萎縮が起こると背骨がグラグラと不安定になってしまうとされている。
そこで、多裂筋の機能評価を行ってみると、やはり明らかに低下していた。
実際に、仕事で必要となるしゃがみ込む、床の物を持ち上げる、これらの動作を行ってもらうと腰が反ったり、丸まったりと腰部はかなり不安定な状態となっている。
当たり前だけど、このまま完全に復職するとまたぎっくり腰を繰り返す可能性は高いよね。
そのため、再発予防のために不安定性を改善するコアトレとして多裂筋再教育やドローインなど難易度が低いトレーニングを行っていくことにした。
ホームエクササイズも行ってもらいつつ、徐々にプランクやブリッジなどの難易度の高いトレーニングも実施。
3週間ほど経過すると、トレーニングでもインナーに力が入るようになり、だいぶ安定して行えるようになった。
また、座位、立位などの静的な姿勢やハーフスクワットなどの簡単な動作では、腰はグラつかず、真っ直ぐに安定して保てるようにもなったんだ。
「完全復帰までもう一息!」
Aさんもそう言いながら一生懸命頑張ってくれていた。
問題発生…すぐに復帰?!
順調にいっていた矢先、突如問題が発生。
勤め先の社員が急遽退職することになり、すぐに以前の力仕事を行わないといけないとのこと。
まだ、想定していた復帰時期より2〜3週間ほど早い…。
どうするか悩んだんだけど、
「全然大丈夫だよ!もう復帰するからね!」
そんな本人の意欲と強引さに負けて復帰を許可することにしたんだ。
不安な気持ちもあったけど、「痛みも取れて不安定性もだいぶ改善できたし、まあ大丈夫だろう!」
心の何処かでそう楽観的に思っていた。
その後、何度かリハビリに来られるも、徐々に姿を見せなくなり、
「仕事も忙しいし、順調なんだろう」
そんな風に思っていたある日のこと。
初めて来院された時と同じような表情で待合室に座っている彼の姿が…
「久しぶり!また、やってしまったよ〜。」
前回と一緒で、床にある重い物を持ち上げようとした時に腰に瞬間的な痛みが走ったとのこと。
痛みの場所も同じ部位。
やってしまった…そう、ぎっくり腰の再発です。
未然に防げたはずの再発…
なぜ今回再発させてしまったのか。
結論からいうと、腰部の安定性が重たい物を持ち上げる負荷に打ち勝てるまでに至っていなかったから。
そもそも、この方の受傷機転『しゃがんだ状態から重い物を持ち上げる』、これは仕事上で必ず必要となる動作だった。
・しゃがみ込んでいる姿勢はコアに力が入るいい姿勢が作れているか。
・立ち上がる動きが加わった時から立つまでの間でコアが抜けていないか。
・実際に同じ大きさや重さの物を持ち上げた時にでもコアに力が入り、腰が真っ直ぐ安定できているか。
復帰時に最低でもこれらの目的動作での腰の安定性はチェックしておくべきであった。
例えば、
肩を痛めて休んでいた野球選手がキャッチボールできたからといって、いきなり試合のマウンドで投球するはずはない。
普通は、キャッチボールができたなら遠投、それもできてピッチングを始め、徐々に球速や投球数を増やして実践に近づけていくと思う。
それと一緒で、
今回のケースは想定外の復帰ではあったものの、仕事で必要な動作や負荷でもコアがちゃんと働いて安定出来ているか?
そういった「機能的な場面ではどうか?」といった視点を復帰の判断基準に組み込まなかったため再発となった、まさに未然に防げたはずの今回のケース。
結局、1から振り出しのスタートとなり、完全復帰まで余計に時間をかけさせてしまうこととなった。
Aさん、ほんと申し訳なかったです。
そんな失敗談から、学べることもあるですよね。
今では、この失敗は無しで、リハをやっています。
プロとして、2度の失敗はしないように日々研鑽の日々です。
あなたは、失敗を引きずってリハしていませんか?
PS
現在は、腰痛もなく元気にお仕事を頑張られているAさん。
一度、温泉でお会いして笑顔でそう話された。
裸同士だったけど(笑)