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リンパ性浮腫はドレナージだけでは治らない | 日本オランダ徒手療法協会

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リンパ性浮腫はドレナージだけでは治らない

2021.06.04

from 杉山 貴規 自宅デスク

 

『人』が大事っていう話なんだけど、

 

自分は物を買うときに、何を大事にしているのか?

 

それは、物の価値、物の見栄え、物の値段ではないということ。

 

何かが欲しいとき、きっと値段を見るかと思う。

 

それは、重要な要因

 

自分もそこは重要視している。

 

しかし、値段、価値、見栄えを測るときにそこにいる人を自分は重要視しているんだ。

 

自分は欲しいものがあったときに、ネットで買うことはまずしない。

 

何故ならば、ネットを信用していないし、ネットで買うことに価値を見出していないからだ。

 

店員さんと話をして、そのものの価値を知っている人から買いたいから。

 

何故ならば、それをお店に入れるまでの過程やその商品の歴史を本当に知っている人はそのものの価値を知っている人だから。

 

価値を知った上で、その値段をつけているのであれば、どんなに高くても、安くても買う。 

これを読んでいるあなたは、そんなの同じものであれば、安いものを選んで、買うのは当たり前だろうと思っていると思う。

 

しかし、『人』を感じながら買うことは、その後の購入したものに命が宿ると自分は思っている。

 

ネットで買ったものには、それがないように感じるんだ。

 

そのものの、価値・歴史・販売するまでの過程など

 

そのものの本当の価値を知って、初めて購入すると思う。

 

それが、今はネットでどんどん買える時代になっている。

 

そこには、大変失礼かもしれないけど、ものに命が宿っていないんだよね。

 

だから、今でも、自分は欲しいものを買うときはお店に行ってそのものを見て買うようにしているんだ。

 

なんて、こんな自分のエゴにも聞こえる話はここまでにして、

今日は、『人』を診ることの重要性について話したいと思う。

 

それは、がん患者さんについてだ。

 

実は、自分の母は乳がんでこの世を去っている。

 

いまでも、PTである自分が母にしてきたリハビリは本当に間違っていなかったのか?

 

それを自問自答する日々です。

 

何を自問自答しているのか?

 

それはある固定観念があったんだ。

 

がんの浮腫=リンパドレナージ

 

ってことなんだよね。

 

ま〜このほかにも、母には運動療法を一緒にやったりと頑張ってきたつもりなんだけど。

 

最後はホスピスまで行って、静かに息をひきとったんだ。

 

で、今回そんな自分が、がん患者さんを診ることになった。

 

はじめは、すごく気乗りをしなかったんだよね。

 

でも、目の前で困っている人を放っておけない。

 

それが、『がん』ならなおさらなんだ。

 

それで、今回は今まで培ってきたリハビリのすべを動員して、母にはできなかったところまで介入して浮腫を軽減させ、患者さんが笑顔になったっていう話をしたいと思う。

 

浮腫が酷くて困っている患者さん 

 

今、がん患者さんを診ている。

 

今回は、あまり詳しくは紹介しないけど、ステージ3の乳がんの方だ。

 

手術もして、今では元気に生活を送っているんだ。

 

そんな、患者さんの世話をしている人から依頼があったんだよね。

 

その依頼は、

 

『浮腫をとってほしい』

 

っていう依頼。

 

むくみは本当に厄介なもので、なかなか摂ることが難しい。

 

むくみにも色々な種類がある。

 

1.局所性浮腫:静脈やリンパの流れの障害や局所の炎症で生じる浮腫。原因によって更に4つに分けられるんだよね。

 

  1. a) 静脈性浮腫
  2. b) リンパ性浮腫
  3. c) 炎症性浮腫
  4. d) 血管神経性浮腫

 

2.全身性浮腫:何らかの疾患によって浮腫を生じたもので、原因によって幾つかのグループに分けられるんだ。

 

  1. a) 腎性浮腫
  2. b) 心性浮腫
  3. c) 肝性浮腫
  4. d) 栄養障害性浮腫
  5. e) 薬剤性浮腫
  6. f) 内分泌疾患による浮腫
  7. g) 特発性浮腫

 

こんだけ、ある。

 

すごい数。

 

で、今回のむくみはこの中なの局所性浮腫に当たる、リンパ性の浮腫なんだよね。

 

局所性っていうくらいなので、本当に左右差や部位差が大きく診られる。

 

今回は左の上肢全体の浮腫がかなり強い。

浮腫に対するリハビリっていうと、

 

リンパドレナージ

弾性包帯

運動療法

 

が思い浮かべると思う。

 

そう、これがスタンダードというか多くの施設や病院で行なっていると思うんだよね。

 

しかし、まず、この施術の選択をいきなりして行うことは自分はしないんだ。

 

じゃ〜何をするのか?

 

それは、やっぱり問診なんだ。

 

なんで、問診なのか?

 

それは、浮腫の原因が他に隠れているかを見つける必要がある。

 

確かに、がんの術後に起こる浮腫は本当多い。

 

がんの手術後の当たり前に出る症状といっても過言ではない。

 

そのくらい、この浮腫は手術後の後遺症といっても当然。

 

しかし、がん=浮腫っていう数学の方程式みたいにするのは、自分の中では危ないと思っている。

 

なぜなら、浮腫の種類だけでも上記あげた数あるわけなんだよね。

 

それは、これまで臨床現場で出会ってきた様々な固定観念やこの疾患にはこの方法というのが、ことごとく通じないことが多いからだ。

 

だから、がん術後の浮腫=局所性の浮腫=リンパ性の浮腫っていうこの方程式があっているのか、本当にあっているのかを確認する必要がある。

 

術後なんだから、リンパ性の局所性の浮腫だろ!

 

いやいや、これを決めつけるのは早い!

 

そこで、この患者さんのデータ、本人からの問診やスタッフからの問診をしたんだよね。

 

するとある事が分かったんだ。

 

浮腫の正体は???

 

問診やカルテデータを見ているとある事が分かったんだ。

それは、認知機能の低下、心理的に落ち込む事が多い、うつ症状あり

 

っていう事だったんだよね。

 

つまり、浮腫の種類でいうと

 

全身性浮腫の可能性も高いって事なんだよね。

 

その中でも、突発性の浮腫っていう事。

 

そうなってくると、全身の状態を確認しないといけない。

 

そこで、全身を確認すると

 

両上肢・下肢に浮腫の状態にあったんだよね。

 

脛、足の甲、手の甲などなど辺りを押すと凹になるんだよね

 

腹部などの体幹や頭部・顔面などには出ていない。

 

そんな感じなんだよね。

 

そこで、自分の中では全身性のむくみがもともとあって、その上に今回のむくみが左上肢に乗っかったものだと仮説を立てたんだ。

 

そうなってくると、

 

考えるのは、全身と局所をやっていかないと、なかなか治らないと思ったんだ。

 

じゃ〜浮腫改善に行うリハビリをどうするのか?

 

それは次の二本柱で物事を考えようと思ったんだよね。

 

・局所性の浮腫(リンパ性浮腫)の改善

・全身性の浮腫(突発性浮腫=今回は心理的なところ、つまり自律神経を整える)の改善

 

じゃ〜何をやるのか?

 

それは、

 

局所性と全身性の浮腫

 

まず、自律神経の改善を実施することに決めたんだ。

 

とはいっても、自分が介入するのは2個だけそれは、全身のドレナージと脊柱のモビライゼーションや脊柱周辺の筋肉を含む軟部組織のリリース何だよね。

 

あとは、日々見ているスタッフの人おまかせしたんだ。

何を任せたかというと、

 

日中なるべく体を起こしてもらって、日光浴をしてもらうようにしたんだ。

 

とは言っても、がん患者さんの場合は紫外線は大敵なんで、

 

直射日光ではなく、少し陽の光が当たって外の外気に触れられるようなところに連れて言って欲しいと言ったんだよね。

 

また、少しでも自分でできる作業をやらせてあげて欲しいって提案したんだ。

 

すると、スタッフの方々、本人も快く快諾してくれたんんだ。

 

ここでの目的は、体を動かすこと、日光浴をすることでセロトニンが分泌され、落ち込みやすさや鬱の改善を試みたんだよね。そして、自律神経系の循環を好循環にすることで、全身性のむくみの改善に繋がると考えたんだよね。

 

先に行った、脊柱にアプローチするのも自律神経にアタックしているんだ。

 

この2個の方法で全身性のむくみの改善を試みたんだよね。

 

ここから、局所の浮腫の改善に着手するんだよね。

 

ここで行うことは、

 

・リンパドレナージ

・上肢の運動療法

・胸椎のモビライゼーションとリリース

 

これを行ったんだ。

 

何で、胸椎に関してアプローチしたかっていうと

 

それは、胸椎に上肢の栄養血管が存在するからだ。

 

当然そこにはリンパ系も関係しているんで、アプローチする必要があるんだよね。

 

胸椎にアプローチして、リンパドレナージを行うと、かなり効果が違う。

 

リンパドレナージオンリーよりかなり違う。

 

また、そこのスタッフさんにも簡単なドレナージを伝授。

 

結構、むくみの取り方を知らない人が多い。

 

近位部から末梢に向かって流す人も居たぐらいなんだよね。

 

それからしばらくして、その患者さんの左上肢を見るとかなり改善されていたんだ。

浮腫は当然あるんだけど、浮腫で上肢がカチカチになっていることはなく、患者さんが訴えていた手の甲が痛いということもなくなってきたんだよね。

 

それどころか、患者さんの笑顔も増えたのと比例して、全身の浮腫も徐々に引いてきてたんだよね。

 

少し、ホッとしたよね。

 

浮腫っていうのは本当に放っておくと感染症や潰瘍などの2次被害を被ることがあるから、早期の対応とチームで動くことが重要なんだ。

 

ってな感じで、浮腫に対しての話だったんだけど。

 

浮腫=ドレナージ=弾性包帯(弾性ストッキング)

 

っていうことは絶対ではないんだ。

 

その人の心理状況を見て、介入できるところは介入して、もし自分だけで無理なところがあれば、臨床心理士さんや他のスタッフさんと一緒になってやらないと治らないことがある。

 

浮腫で治らない時は、もう一度問診をして何が原因なのか、探って見るのも重要ですよ。

 

PS

『人』をみることは本当に重要だと思う。

 

自分はその点、『人』に恵まれている。

 

もちろん全てではないけどね。

 

医療人は『人』をみる前に『疾患・症状』をみてしまう。

 

それは、大きな間違いで、まずその『人』をみて、困っているところを改善するための術を考える必要がある。

 

その途中の原因に『疾患・症状』があると思う。

 

もっと、『人』をみて物事を考えてリハビリや施術をするべきだと思う今日この頃だ!