歩きたい!を叶える高齢者コアトレ | 日本オランダ徒手療法協会

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歩きたい!を叶える高齢者コアトレ

2019.03.12

from 黒田雄太  自宅デスクより

 

最近はものが片付いていないと落ちつかない黒田です(笑)

 

どんどん家からものが減っていきます(苦笑)

 

ある日の夕方、1日の仕事が終わり帰宅していたんです。すると、家に近づくにつれてこんな音が聞こえてきたんです。

 

「USA!USA!」

 

「カーモンベイビーアメリカ!」

 

そう、DA PUMPのUSA。世間的には少しブームは落ち着いてきているはずが、うちの娘には今が最大級のブームらしいです(苦笑)

 

そして、

 

「ただいまー」と家の中に入ると

 

今度は

 

ドン!ドン!ドン!ドン!

 

娘が絶叫しながら踊り狂っている(笑)飛んだり跳ねたりで床が抜けそうなぐらいの勢い!かなり微笑ましいんですがね。

 

その日は3月でちょっと寒さを感じるほどの気温だったのに、娘は家の中で汗びっしょりになっていました(苦笑)

 

ただ僕は理学療法士。

娘の微笑ましい光景を見るだけでは済まないんですね。どうしても動作分析をしてしまいます(汗)

 

今まで自分が身につけてきた知識で娘には健康でいて欲しい!そう思うとつい分析しちゃうんですよねー(苦笑)。完全なる職業病です(汗)

 

「前よりもちゃんとジャンプ出来ていて、着地も出来ているなぁ」

 

しみじみ感じました。

 

実は飛んだり跳ねたりっていう動作は結構運動療法の中で使える動作なんですよね。僕は高齢者の運動療法でその考え方を応用して使うんです!

 

あ、ただ、実際にジャンプさせたりしているわけではないですよ(汗)

 

今回は腰痛ではないのですが、高齢者の運動療法で体幹をどの様にして鍛えるのか?について僕が実践している患者さんのことを紹介しようと思います。

 

体幹を鍛える!要はコアトレーニングのことですね。

 

整骨院やクリニックだけでなく、病院勤務の治療家の皆さんも必見です!

 

歩けるようになりたいんです…。

80代後半の施設に入所されている女性の方。普段は車椅子で生活しています。特に体のどこかに痛みがあるというわけではないんです。

 

車椅子は自分で漕ぐことが出来るので、比較的自分の思った通りに生活することが出来ています。食事や着替えなどの身の回りのこともほとんど自分でされます。

 

車椅子への乗り移りもOK!です。

 

施設の中では比較的お元気な方です。身体的な特徴を挙げるとすればかなり猫背が強いのと、昔左膝が痛かったようで左下肢の筋力が右よりも弱いという感じでした。

 

そのような方のリハビリを行なっていたんですが、実際にやっていたことは

 

・下肢の筋力維持

 

・関節の拘縮予防

 

・起立訓練

 

など、今の生活を維持するためのプログラム。

 

ですが、いつものようにこのプログラムを行なっていたある日。その方からこんなことを言われたんです。

 

「先生、私歩けるようになりたいんです…。」

 

心の中ではそんなことを思っていたようなんです。現状維持のためのリハビリでも少しずつ筋力は強くなっていたので、ちょっと希望が湧いていたんでしょうね。新たな目標を掲げてくれました!

 

昔の僕なら

 

「いやー、無理でしょ…。もうこんな年だし」と心の中で思っていたと思いますが、今は

 

「わかりました!じゃあ、歩けるように頑張りましょう!」と自信を持って言えます!というか言いました!(笑)

 

その後きちんと目標を共有するために話し合いを行い、生活の中で歩行を取り入れるのではなく、リハビリのプログラムの中で歩く練習をするということに設定しました。

 

ただ、ちょっとの歩行だけでなく、出来れば長く歩きたいというリクエスト。そんな話をしたのが、昨年の11月。そして、現在3月。

 

歩行距離は確実に伸びました!昨年11月は手すりを持って約5mを歩くのもやっと。

 

でも今はなんと約15mの距離を2往復出来るまでになりました!!!

 

なぜ、このように80代後半の女性でもこれほどまで歩けるようになったのか?

 

そこにはコアトレーニングのプログラムを作る上で、こんなポイントがあったんです。

 

歩きに必要な負荷を与える!

特に高齢者の運動療法はちょっと負荷をかけることを避けがちですよね。ですが、目標とする状態に到達するためにはそれに必要な負荷をかけないといけません。

 

この方の歩きは左下肢の筋力が低下していることで足を床に着いたときに、

 

・膝が内反してしまう

 

・骨盤が揺れる

 

・体幹が後ろに傾いてしまう

 

などのことが起こっていました。

 

なので、僕は左下肢も含めて、足を床に着いた時の衝撃をしっかり受け止められるような体幹の強さを作らないといけないなぁと思ったんですね。

 

僕たちはあまり自覚していないと思いますが、足を着いた時の衝撃は結構強いものですよ!

 

なので、高齢者の体幹を鍛えるコアトレーニングといえば

 

・お尻をあげるブリッジ

 

・深呼吸でお腹を凹ませるドローイン

 

・良い姿勢を作る練習

 

などが想像されがちですが、僕は床からの衝撃を受け止められる体幹を鍛えるために

 

・爪先立ちになった後に、「ドスン」と踵を床におろす

 

・段差から「ドスン」と降りる練習

 

これらの2つのことをコアトレーニングとしてやったんですね。

 

ポイントは「ドスン」です!!!(笑)、「そっと」ではないんです!

 

「ドスン」と降りると体には振動が起こりますよね。もしよかったら自分でやってみると体感出来ますよ!

 

振動により瞬間的にお腹や背中の筋肉にグッと力が入るんですね。半ば強制的に。

 

このことを「共収縮」や「同時収縮」と言います。体幹を固めるということですね。

 

これを何回も繰り返すことで歩きに必要な体幹を鍛えていきました。

 

もちろん下肢の筋力強化も合わせて行なっているので、これだけをやって歩けるようになったわけではありません。

 

そう考えると、コアトレーニングと言いつつ動作練習の中で体幹を鍛えていっているんですね。

 

なので、逆に一見簡単な動作練習にも見えるようなものが、目的をしっかりと持つとその人のニーズにあったオーダーメイドのコアトレーニングになるんです。

 

今回は高齢者の歩きに対してのコアトレーニングについて取り上げてみました。高齢者に限らずにコアトレーニングというとどうしても寝た状態で行うメニューが頭に浮かびますよね。

 

でも、まだまだ体幹が弱い人にはそれをやらないといけませんが、実際にある動作を身につけたいと思った場合には寝た状態で行うコアトレーニングをずっとやっていても負荷が足りないと思うんです。

 

段階的に最終目標に近づけば近づくほど、実際の動作に近いトレーニングメニューになっていくはずなのです。

 

なので、皆さんもまずはしっかりと患者さんと目標を共有して、その目標に到達するために必要なオーダーメイドのコアトレーニングを考えてみてくださいね!

 

【グッバイ!腰痛!】そんな日がいつか来ますように

 

P.S

僕が家に入った後も、無限ループのようにUSAを踊っていました。その日の夜はグッスリ寝たことは言うまでもありません(笑)

 


この記事を書いた人

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黒田雄太

長崎県在住の理学療法士。【JADMT公認】オランダ準徒手療法士。基礎コース・福岡校アシスタント担当。Nagasaki Orthopaedic & Sports Physical Therapy(NOSPT) 役員。総合病院、整形外科クリニック、デイケア、特別養護老人ホームを経験。 自身の“辛い腰痛”の経験から、「世の中の腰痛で苦しむ方を助けたい」という使命を持つ。 一時的に自覚症状を解消するだけの対処療法ではなく、腰痛の患者様を「施術」から「トレーニング」までトータルにサポートすることを信条としている。一児の父。