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肉離れの再発を防ぐリハビリテーションの組み立て方③ | 日本オランダ徒手療法協会

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肉離れの再発を防ぐリハビリテーションの組み立て方③

2017.09.19

こんにちは、日本オランダ徒手療法協会の木内です。

今回はシリーズでお伝えしてきました「肉離れの再発を防ぐリハビリテーションの組み立て方」の第3弾です。

 

「肉離れ」からの復帰と再発予防におけるリハビリテーションにおいて、重要な視点が2つあります。

 

それは…

① “少しずつ”負荷を増やす → 組織の抵抗力をあげる

姿勢/動作の改善 → 予防を超えてパフォーマンスをあげる

の、2つです!

 

局所の組織強度が低いまま復帰させてしまうと、

スポーツ競技における強い伸長ストレスが局所に加わった時、途端に再発という最悪のシナリオになりかねません。

 

また、近年の医療/健康領域では「予防」について盛んに議論されていますが、将来的には姿勢/動作を改善する(パフォーマンスを変える)ことが求められるのは明らかです。

 

一方で、プロトコールという多くの研究結果から導き出されたリハビリテーションの手順がありますが、

果たして全ての方に通用するものなのでしょうか?

 

例えば、過去に「L4/5腰椎椎間板ヘルニア」で神経根症状を引き起こしており、現在「肉離れ」としてリハビリオーダーが出ている方のプログラムはプロトコール通りでしょうか?

 

実は、そういった個別性をしっかりとした理論に基づき評価/プログラム立案ができていない点に、テクニック以前の大きな問題点があります。

 

今回は、そんな個別性に合わせたリハビリテーションを組み立てる際に必要となる原理原則から、実際のプログラムまで紹介していきます。

 

このブログラムは、実際のプロサッカーチームで「3シーズン(3年)で肉離れ1件」という、驚異的な結果を作り出した土屋 潤二氏が実際に行っていた内容です。

 

院内でのリハビリテーションでも参考にできるポイントが多くあるので、是非参考にしてください!


 
月刊スポーツメディスン No.191 6月号 2017年

連載 運動を制限する要素の考え方①

-“スポーツ場面”を題材に運動を制限する要素を組織レベルから考える-

“徐々に”負荷を増やす・・・普遍の大原則

S:スプリントがまったく違うフォームであるなんて、言われてみれば考えつきますが、それをリハビリには応用していませんでした。

 

T:エビデンスで確認できていない、研究で再現性があるような結果を得られていない現象や経験則は、それでも重要な情報です。

 

S:でも、違うスプリントフォームでどうやってハムストリングの「抵抗力」をつけていけば・・・。

 

T:もう一度、「ハムストリング肉離れ予防のスプリントトレーニング」を見直してみてください。何か気づくことはありませんか?

予防のためのスプリントトレーニング
【1〜2週目】
30m加速走×6本 ※100%は出さない

【3〜4週目】
15mインターバル走×10本(2セット)※インターバル:30秒、セット間休息:2分

【5〜6週目】
ダッシュ5m×6本、15m×4本、25m×2本

【7週目】
30m加速走×7本

【8〜9週目】
15mインターバル走×11本(2セット)※インターバル:30秒、セット間休息:2分

【10週目】
ダッシュ5m×7本、15m×4本、25m×2本

 

S:あ、最初のメニューは加速走だから徐々にハムストリングに張力が掛かるような走り方だ! しかも、Maxまでは出さないようにしている。そして3週目/4週目のメニューはスプリント速度が速くなるけれど、インターバル走の休息が不完全休息なので、こちらもMax近くでスプリントするけれど、本当に100%のスプリントをすることのない負荷設定になっています。

 

T:「抵抗力」をつけるために、丈夫な局所を作るために、トレーニングの局所へのとくに伸長される張力の負荷について考えはじめたのは良いことです。そして、最後の5週目/6週目のメニューはどうなっていますか?

 

S:Maxなんですが、5mではダッシュするプッシュ型のピストン運動の走り方なので、肉離れの受傷するリスクは少ないです。それで慣れてきたところで、15mのダッシュ、そして25mのダッシュからスプリント・・・というところで本当にMaxでの伸長される張力を、ただし、本数を少なく(ここでは2本)してハムストリングに刺激を入れています。

 

T:よくわかりましたね! ストレッチをはじめ、ヒールスライドやルーマニアンスクワットなど、ハムストリングの筋力強化や伸長される力に対する「抵抗力」増強のための多種多様なメニューが考案されています。

 

これらのメニューでは、実際の動作と比べると動作が遅かったり、関節の角度が違っていたり、そもそも伸長されたストレスなどの狙った力を組織局所にかけたいのがかけられない…など、目的からいうと不十分なものが多いです。

 

そういうわけで、自分が選んだメニューが、スポーツの動作特性を考慮した負荷のトレーニングメニューになっているかどうか、いつも意識する必要がありますね。

 

S:復帰をする際の判断基準としては、やはり実際のスポーツと近い運動を質的/量的にもどれだけ耐えうる局所の「抵抗力」を持っているか?ということですね。

 

T:そう、極端な話、スポーツ現場で起こり得ないような、強度的にも、量的にも、ものすごい力を耐えられる「抵抗力」が局所についてくれば再発することは・・・。

 

S:あり得ない!

 

T:そう、あり得ない!

 

動作改善が目的ならゴールから考えはじめる

T:「抵抗力」をつければいいんだ・・・というのは若干乱暴ですが、パフォーマンスをアップするのに「姿勢/動作の改善」という質的な力の発揮の議論ばかりのところでバランスを取るためにも、しっかりと意識してしていきたいところです。

 

S:フォローできていないのでわかりませんが、担当してきた患者さんの中には再発をしていらっしゃる人も少なくないと思いますので、肝に銘じます。

 

T:そもそもアプローチ戦略として、「局所の抵抗力」と「姿勢/動作の改善」との2つの方向から考えていくことが大切です。多少、運動パターンや効率が悪くても、アライメントが崩れていても、それを補う「抵抗力」と量的に他を圧倒するパワーや持久力があれば、復帰は叶います。叶いますが、世界で結果を出すためには、「姿勢/動作」にとことんこだわり続けないとダメだと思います。

 

S:努力することは大前提で、動作の質に拘らないとダメってことですね。

 

T:そういった意味では、今回、「ハムストリングの肉離れ予防」のトレーニングという怪我をしていないアスリートのトレーニング方法からスタートして考えてみました。

 

S:あ、本当だ。

 

T:実は、怪我をする前よりもパフォーマンスを上げるのには、トレーニングの戦略がカギになってきます。

 

S:トレーニングの戦略?

 

T:そう、これまでの医療では、症状に対して、原因を探すべく検査したり、映像を撮ったりして、細かく、細かく身体をチェックする方法で、医師が診断をしてきました。原因がわかれば、それを改善すれば完治する・・・といった考えです。

 

ですがこの場合、原因が小さい小さい、それこそ姿勢動作とまず関係ない四肢の末梢の局所が原因であり、その局所を直すことは、身体全体を動かす動作の改善には、ほぼ、何の影響も与えないばかりか、休んでいる期間で鍛えられた身体が萎縮し、軟部組織が癒着し、循環系の効率が低下し、・・・と肉体のレベルとしては後退していきます。

 

S:だから、とりあえず患部外のトレーニングを・・・。

 

T:そんな目的もしっかり定めずトレーニングをするくらいなら、運動様式を意識して、しっかり局所に抵抗力が増強されるような適当なストレスをかけることを考えてください。

 

S:・・・すいません。

 

T:考え方が逆です。

 

S:逆?

 

T:運動療法はゴールから考えはじめるのです。

 

S:え? ゴールから考えはじめる⁇

 

T:そうです。ゴールからリハビリの設計図を描いていきます。そうすることによって、運動機能を取り戻すだけではなく、復帰する職場や生活、スポーツ現場に要求されるパフォーマンス以上のものを、個人ごとに意識的に強調して効率的に実現することが可能です。

 

それには必要ないくつかの知識が必要ですが、それはまた次号に紹介します。

 

S:先生! すごい気になる。またよろしくお願いします。

 

T:ご静聴どうもありがとう。

 

※なお、この文章は編集部の許可を得て掲載しております。

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この記事を書いた人

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木内 隆太

6年の鍼灸接骨院を経て、スポーツ現場に活動のフィールドを求め「DMTスクール」の門を叩く。 『再発予防やパフォーマンスアップとを通じて臨床とスポーツ現場を繋ぐこと』を目標に 日本オランダ徒手療法協会で代表をしている土屋氏に師事。オランダ徒手療法を学ぶ。 サッカーJ2松本山雅FCユースアカデミーフィジカルコーチ、元Vonds市原FCトレーナー兼フィジカルコーチアシスタント 長野出身 <資格/ライセンス> 柔道整復師、日本サッカー協会指導者ライセンス「公認B級コーチ」、日本オランダ徒手療法協会「準徒手療法士」