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腰痛体操はいつまで続ける?
2018.12.21from 黒田雄太 職場デスクより
最近甘酒で疲労回復している黒田です(笑)
僕は今まで総合病院や整形外科クリニックで働いてきたんですけど今は色々な縁と理由(苦笑)で老人ホームで働いているんです。
特別養護老人ホームっていうんだけどイメージ湧きます?(汗)よく特養って言います。要は介護保険の「要介護度3以上」の方しか入所できないんです。
利用者の状態はどんな感じかというと
・寝たきり
・車椅子での生活
・認知症
意思の疎通や歩行が出来る方の方が少ないんです。日常生活はほとんどの利用者が介助を要します。
理学療法士は「機能訓練指導員」という肩書きで勤務しています。他にも看護師や栄養士、ケアマネジャーなど多くの職種が働いています。
中でも一番人数が多いのが介護部です。医療機関ではなく、介護施設なので介護職員が最も多いんですね。
色んな職種が集まる分、様々な視点から利用者が快適な生活を送るにはどうしたら良いのかを考えます。とっても良いことですよね!
ただ、その反面ちょっと困ったことも起こるんです。それは…職種によって「判断基準が異なること」
例えば、食事に困っている利用者がいるとします。色んな職種の立場から食事を評価するわけですが、「食べれる!」と判断した場合でもリハビリ職と介護職でその状態が違うことがあるんです。
ここからは例えばの話ですが、
リハ職の「食べれる」は決まった時間内で姿勢の崩れや疲労なく食事ができることをイメージしてたとしても、介護職の「食べれる」は時間はかかっても全量摂取出来るということをイメージしているかもしれません。
そんな感じで同じ言葉を使っていても、お互いの基準が違えば当然違った認識となってしまうのです。
だから、しっかりとした「基準づくり」が必要なんです。
人間って価値観も違うから自分の常識は他人の非常識だということを肝に命じないといけませんね(汗)
実は僕も臨床で同じような事を経験したことがあるんです。
今回紹介する僕の担当だった患者さんは”ある”「基準」を間違ってしまったため、改善していた腰痛が再発してしまったんですね。僕たち治療家もつい間違って判断してしまう事なので、是非最後までご覧ください。
朝の起きがけに痛む腰
このような訴えの患者さん多くありませんか?朝の動き出しが1番痛くて、ちょっと動いてたら良くなるようなタイプの腰痛。病院に来た時にはさほど痛くないので評価に困りますよね(苦笑)
このようなタイプの腰痛はどんな病態だと思いますか?
これは「不安定性腰痛」と呼ばれ日本では馴染みは少ないですが、ヨーロッパではこれで診断がつくそうです。
例えば椎間のL4とL5の間に「不安定性」があるとすると
・L4/L5間の椎間板が薄い
・L4/L5周囲の靭帯が緩んでいる
・L4/L5の多裂筋が萎縮
こんな状態なんです。
そして、なぜ朝方の起きがけに痛みが出るかというと長時間の睡眠(不動)によって椎間板の循環が悪くなってしまっているんですね。つまりクッション性が失われている。多裂筋が働いていれば不安定性を補ってくれるんですけど、萎縮してると安定させることが出来ないんです。
逆にちょっとずつ体を動かしていくと、「スポンジ効果」といって椎間板が「加圧⇆減圧」され、循環が改善し椎間板の薄さが緩和されるんです。
このような仕組みで「不安定性腰痛」は朝の起きがけに痛みが出てしまうんです。
ここで僕の担当だった患者さんを紹介します。
20代の女性で産後の腰痛で来院されました。産後7ヶ月目で育児を行なっていくうちに段々と腰痛になったんですね。朝の起きがけや中腰や抱っこしたまま同じ姿勢をしていると段々と腰が辛くなるということでした。
育児休暇中だったので、子供をご両親に診てもらいながら通院しました。週1〜2回の通院で治療を行う計画を立てました。仕事に復帰するまでには治したいという希望だったので、しっかりとホームエクササイズも行うように指導しました。
治療方針は次のように立てました。
・痛みによって硬くなった筋肉を緩めるリリース
・痛みがない範囲での腰椎や仙腸関節のモビライゼーション
・不安定性がある部分の多裂筋トレーニング
・股関節周囲筋特に大腿四頭筋や大腿筋膜張筋のストレッチ
・椎間板を厚くする運動
これらを通院された時の治療とホームエクササイズで行うことにしました。
特にホームエクササイズでは椎間板を厚くする運動を朝起きた直後に行ってもらうようにしたんですね!
名づけて「足パタパタ運動」(笑)
両膝を立て腰の痛みがない範囲で左右にパタパタとリズミカルに動かすんです。リズミカルに動かすことで椎間板のスポンジ効果が得られます!
これをするようになったら腰痛がビックリするほど楽になったんですね!僕は“ある”理由でこの運動は気長に続けてもらおうと思っていたのですが、患者さんも驚くほど早く痛みが軽くなってしまったんです。
やっぱり効果が出る運動ってしっかりとやりますよね。なのでこの患者さんも運動を続けたんですね。
ただ、痛みがかなり落ち着いてたのである時期からこの運動をやめてしまったんです。
僕「〇〇さん、足をパタパタする運動は続けてますか?」
患者さん「あー、最近は痛くないからもう大丈夫かなーって思ってやってないですー」
僕「痛みは軽くなったと思いますけど、もうちょっと続けた方がいいですよ」
患者さん「先生、心配しすぎじゃないですかー」
こんなやり取りをした、数週間後…
油断したら…腰痛が再発⁉︎
患者さん「先生の言うことをちゃんと聞いてれば良かったです。またちゃんとします…。」
僕「そうですね、またしっかりと取り組んでいきましょう!また痛みは軽くなってきますよ!」
腰痛が悪化した患者さんを励ましつつ、改めてホームエクササイズを行うことを約束しました。
ある意味僕は腰痛が再発することを予想していたんですね。なぜ、予想できたのか…?それはさっきの“ある”理由のことなんです。
患者さんは痛くなくなったから運動をやめてしまいました。
ただ、痛みがなくなった=組織が治ったではないですよね?
実は僕が患者さんに運動を続けることを薦めた“ある“理由とはこの患者さんの椎間板はまだ修復する期間に到達していないと判断したからなんです。
つまり痛みではなく「組織の修復期間」を基準にしていたんです。
椎間板の修復期間って知っていますか?実は「500日」かかるんです!!!驚きですよね!ただ、これは完全に損傷している場合の期間をさします。
なので、今回の患者さんのような不安定性腰痛の場合は500日以上かかることはありませんが少なくとも1〜2ヶ月はかかると判断していました。僕はこの患者さんに1ヶ月は運動を継続するように言ったのですが、運動をやり始めて1週間程度で痛みが軽くなってしまったので、2週間目には運動をやめてしまったという状況だったんですね。
どんなに若い人でもある程度決まっている組織の修復期間よりも早く修復することはありません。逆にこの知識があればどれくらいで治っていくのかの予測を立てることも出来ます!ネットや本などで是非ご自身でもチェックしてみてくださいね!
【グッバイ!腰痛!】そんな日がいつか来ますように
P.S.
同じ日本語が通じない⁉︎これ多職種あるあるですね(笑)でも、色んな職種の人と働くのは楽しい!