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激痛に隠れていた腰の骨折 | 日本オランダ徒手療法協会

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激痛に隠れていた腰の骨折

2018.11.12

from 黒田雄太 広尾オフィスより

 

最近早朝の散歩が日課になっている黒田です!

 

皆さんオセロってしたことあります?もちろんありますよね!(笑)

でも大人になってすることってなかなかないかもしれませんね!

 

僕も十数年やってないんじゃないかなぁ?娘もまだ2歳になっていなからもう少し大きくなって一緒にできる日を楽しみにしています!

 

そんなオセロですが、少し前にすごく話題になりましたよね!

11歳の福地啓介くんがチェコ・プラハで開催された第42回世界オセロ選手権の個人部門で初出場で初優勝しました!!11歳での優勝は歴代最年少だそうです。

 

すごいですよね!頭を使う競技では大人よりも子供の方が長けているのかもしれません!

 

福地くんのプレースタイルはワザと途中で間違ったところに一手したようにするらしいです。そうすると敵はニヤリと思い、その一手につけ込んで猛攻撃をしてくる。ただ、そこは福地くんにとってフェイクなので、最終的には劣勢をひっくり返すんですね!

 

試合の映像がありましたけど、残り数手で負けてても最後の一手で大逆転してしまうんですよねー!

たった一手で今まで白だったものが一気に黒に変わっていく。見ている側としては痛快です!

 

このようにオセロは黒か白かをキレイに決める競技ですよね。オセロに限らず、ほとんどのスポーツは勝ち負けがはっきりしますよね!だからこそ、人は魅了される。

 

ですが、それを臨床に置き換えるとどうでしょうか?

勝負の世界みたいに「原因はこれ!」とハッキリさせることはできるでしょうか?

それは難しいですよね?

例えばある組織が損傷していると仮説を立てて、その可能性が高いとしてもそれは想像であり、画像でしかはっきりわかりません。

 

でもなぜか治療家はハッキリと原因を追求したくなってしまうんですよね

今回はどうしてもそのように思ってしまう治療家の皆さんに向けてあらゆる可能性を残す白でもない黒でもない「グレー」の重要性をお伝えしようと思います。

 

腰に激痛を抱えてきた女子高生

以前僕がクリニックに勤めていた時の話です。リハビリは予約制のクリニックでした。

 

ですが、たまに予約が埋まっていないこともあるんですよね。予約が埋まっていない時にたまたま新患が来てたりすると、その時間に医師がリハビリのオーダーを出すわけです。

 

その日もたまたま予約が空いていた別のスタッフにある新患が入ったんですね。

 

高齢者が多いクリニックにはかなり珍しい女子高生!こんな若い子が来るのは珍しいので、スタッフみんなの視線がその子に向かいます。しかし、それはその子が若いからではなくて、あまりに痛々しかったから…

 

あまりの痛みに側弯症のように腰は曲がり、座るのも寝るのもやっとで、少し動くにもかなり時間がかかっていました。

 

少し僕のベッドから離れていたんですが、聞き耳を立てながらそのスタッフと女子高生との会話を聞いていました。(前もそんなことがあったような…苦笑)

 

腰痛になったのは初めてのようで、明らかなきっかけもないようでした。外傷はないけど、発症年齢が20歳未満でこれはレッドフラッグの可能性もあるなぁと思いました。

 

さらに、楽な姿勢がない、とにかく痛みが強いということでほぼレッドフラッグなんじゃないかなぁ?と僕は思っていました。

 

痛みの部位は本人もハッキリせずに骨盤あたりをさすっていたような気がします。

 

こんなほぼレッドフラッグのような患者さんに医師から出ていた指示は「腰痛体操指導」

 

ひぇー、こんな状態でそんな事させんのーーー⁉︎

あまりのことにびっくらこいた事を今でも覚えています(苦笑)

 

指示を出されたスタッフも「これやらない方がいいですよね???」と9割は思っているものの、その根拠に自信がなかったようで、どうしようか?と右往左往していたので、僕が「この患者さんは治療の適応ではないと思うから、そのまま医師に返した方がいいよ」とアドバイスしました。

 

何もしないまま患者さんを返したので、医師はそのスタッフになぜリハビリをしなかったのかと問い詰めるわけです。そのスタッフは明確な根拠を示すことはできなかったのですが、「痛みが強すぎて指導は出来ませんでした…」と答えました。それに対して医師は渋々納得したようでした。

 

女子高生はその日のうちにMRIを取ることになりました。

 

ふたを開けてみると…

夕方になり、MRIを撮ったその女子高生が帰ってきました。

同僚スタッフが恐る恐る結果を聞いてみると…

 

女子高生「腰にヒビが入ってました…」

 

同僚スタッフ「・・・」

 

L4の骨折だったようです(腰椎のどの部位だったかは僕も記憶が定かではありません)

 

やーーっぱりね!、そうだと思ったんだよ!と僕は心の中で思いました。ただ、ちょっとだけ思っていたことと違うことが起こったんですね。

 

それは、、、

「患者さんが訴えていた痛みの部位と実際に骨折していた部位が違った」ことです。

 

女子高生が痛みを訴えた部位は骨盤のあたりだったんです。おそらく仙腸関節のあたりだったと思います。ですが、実際にはL4の骨折。

 

あまりに痛みが強いと患者さんも明確にどの部位が痛いのかを示すことは難しいですよね。

それに、痛みの部位がはっきり分かったとしても、今回のケースは腰痛発症が20歳未満だったり、何より楽な姿勢がないということでレッドフラッグの可能性が高かったわけです。

 

いままでの話を聞いて予想では仙腸関節の問題だと考えていたのが、実際にはL4の骨折で予想と外れているじゃん!と思われた方もいるかと思います。

 

もし、レッドフラッグじゃないケースであればどの組織が問題なのかを考えるときに予想があまりにもかけ離れていたら、それは仮説を立てる時点で何か間違った手順を踏んでいるでしょう。

 

ですが、今回のケースは問診でレッドフラッグの可能性が高かった。そのためどの部位にトラブルを抱えていようが、それ自体が問題ではなく、レッドフラッグかどうかが大きな問題だったんです。なぜなら、レッドフラッグは我々治療家の治療対象外となるんですから。

 

どうしても私たち治療家はどの組織が問題なのか?みたいにはっきりと言い切りたい傾向がありますが、レッドフラッグにおいてはその可能性が99%ないだろうと思っていても、1%の可能性が残っているのであれば、まずはその可能性を除外することをしましょう。

 

そして、レッドフラッグかどうか白黒を決めるのは日本では医師であり、我々治療家ではありません。我々治療家が判断できるのは「グレー」な部分だけです。

 

自分たちに出来ることと出来ないことの線引きをはっきりして患者さんを診ていけることを目指してともに頑張っていきましょうね!

 

【グッバイ!腰痛!】

そんな日がいつか来ますように

 

P.S.

オセロや囲碁なんかをするときにはどうしても僕は「黒」でやりたいんですよね!黒田だけに(笑)どうも「白」はしっくりこなくて(苦笑)


この記事を書いた人

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黒田雄太

長崎県在住の理学療法士。【JADMT公認】オランダ準徒手療法士。基礎コース・福岡校アシスタント担当。Nagasaki Orthopaedic & Sports Physical Therapy(NOSPT) 役員。総合病院、整形外科クリニック、デイケア、特別養護老人ホームを経験。 自身の“辛い腰痛”の経験から、「世の中の腰痛で苦しむ方を助けたい」という使命を持つ。 一時的に自覚症状を解消するだけの対処療法ではなく、腰痛の患者様を「施術」から「トレーニング」までトータルにサポートすることを信条としている。一児の父。