日本オランダ徒手療法協会    

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自分勝手な患者でお困りの治療家へ

2019.05.06

From:長島 将太

 

@姪浜のスタバより

 

午前中の業務も終わり、休憩がてらスタッフルームで談笑していると

バタバタと後輩がスタッフルームへやってきた。

 

後輩「長島さん、ちょっと良いですか?」

 

  「あの患者さんに何を言ったんですか!?」

 

長島「ん?何のこと?」

 

後輩の唐突な質問に、何が何だか分からない状況の私。

まさか、患者さんからのクレームじゃないよな〜と内心ドキドキ…しながら

後輩から事情を聞いてみると…

 

後輩「あの患者さん、いくら説明しても」

 

  「何度言っても聞かない方だったのに、、、松葉杖をついてきてくれたんです(喜)」

 

長島「あ〜あの前に一度診せてもらった患者さんの事ね!」

 

  「そんな特別な事は言ってないよ。」

 

  「いつも通り、今の状態を説明して、この先どうなっていくか話をして…」

 

  「あと、〇〇をしてもらっただけだよ」

 

後輩「〇〇って何ですか?」

 

どんな治療現場でも、私たちセラピストの言う事を守ってくれない方、状態の理解に乏しい方、人間離れした方っておられますよね。

 

私達の言った通りにしてくれたら、どれだけスムーズにリハビリが進むかと頭を悩ませる事も多いと思います。今回は、後輩PTが悩んでいたリハビリが上手く進まなかった膝術後患者さんについて紹介したいと思います。

 

術後リハは、治療家の腕次第

後輩が悩んでいた患者さんは、事故で膝の靭帯付着部骨折となり

他院にて手術を受けられた中年男性。

 

術後1ヶ月半にも関わらず、膝周りはまだ腫れが残存。

 

可動域も曲がりが60度程度。伸びも−15度と状態は思わしくない。

筋力にいたっては膝周りの筋肉は萎縮し、張りもテロテロの状態。

 

「色々とやって他のスタッフにも相談しているが、なかなか腫れと膝の動きが改善しないんです(汗)」

このような状態だった為、リハビリの進捗に悩んでいた後輩から相談があったんです。

 

まずはいつも通り問診にて情報収集をした。(詳細は割愛させてもらいます)

 

プロトコール上は、深く曲げる事以外は特に制限はない。

荷重も体重の3分2を乗せて歩いても良いとの許可が出ていたため、患者さんは片松葉杖で歩いていた。(翌週には全体重を乗せても良いとの主治医から指示)

 

そして、ある程度ターゲット組織の目星をつけ実際に膝の状態をチェックしてみた。

 

すると…

・術創部周辺の皮膚の癒着

・間質液の循環不全に伴い皮膚色調不良、柔軟性↓

・膝窩部の筋腱周囲の癒着

・関節包内の水腫残存

・関節位置不良に伴い半月板への圧縮負荷↑……など

 

まず、不要な浮腫みを招いている老廃物や間質液の循環改善を目的に皮膚をリリース。

さらに各組織間、組織内リリースを行った(1ヶ月半、循環不良だったため痛みの閾値も下がっており、かなりの痛みを伴う…)

 

この時点で曲がりが90度、伸びが−10度。

 

ある程度、膝周りの軟部組織の滑走性が出てきたので、次は長期的な関節位置不良にて生じた半月板を含めた軟部組織の柔軟性改善(スポンジ効果を高める)を目的に反復したモビライゼーション。(最終、曲がりが105度、伸び−10度。)

 

そして、緩めた後は関節を安定させるための筋強化!とここまでは後輩もしっかりやっていたんですよね。実際のアプローチ方法は違っても目的は「可動域を広げ」「腫れをとる」ことはしっかりやってたんです。

 

ただ、実がこの後が肝心なんですよね。

 

「緩めて」「鍛えて」では元通り

それは「運動パターンを再学習する」こと。

 

せっかく、時間をかけて関節の状態を整えても患者さんの「運動パターン」を再構築させなければ翌日きた時には再び同じ状態に戻ってしまいます。

 

ただ難しいのは運動パターンを再構築させるには、時間がかかるんですよね。

一説には『1万回の反復動作』が必要とも言われているほどです。

 

今回の患者さんの場合、リハビリの進みを悪くしてしまっていたのは実は「片松葉杖歩行」だったんです。

 

でも、プロトコルに沿っているのに何が問題なの?って聞こえてきそうですが(笑)

 

プロトコルはあくまで目安です。

大事なのは「何を目的に」私たちがプロトコルを遅らせたり、予定通りに進めたりするかなんですね。なので、私達の意図からズレている動作や動きをしている場合は修正したり、ストップさせることも必要なんです。

 

そして、今回の場合は「歩き方(いわゆる歩容)」に大きな問題があったんですね。

この歩き方を修正するために私は「両松葉杖で歩く事」を提案しました。

 

ただ、大事な事を忘れていました。

 

そうです。

この患者さんは「言う事を聞いてくれない方」だったのです。

 

説得するのではなく、納得させること

「言う事を聞いてくれない患者さん」の多くは、患者さん自身の問題ではなく

 実は私達の伝え方が問題だったりします。

 

恐らく私達の多くは患者さんを説得しようとします。少し乱暴な言い方ですが、医療側の主張を論理的に説明して、相手を説き伏せようとする行為にもなりかねません。

 

今回の場合も同様だったんです。

 

患者さんからしてみれば、せっかく不便な両松葉杖から片松葉杖になったのに、なんでまた不便な状態に戻らなければいけないのか理由が分からなかったんですね。

 

そこで、私は患者さんにこう説明しました。

 

長島

「今の状態は正直遅れています。あと1ヶ月後にはお仕事に復帰されたいと聞いていますが今のまま松葉杖が外れたとしても、今よりさらに膝の動きや腫れが悪化してしまう可能性があります。今〇〇さんに必要な事は、松葉杖を外す事よりも、膝の機能をしっかり戻す事がお仕事復帰への近道なんです。まずは1週間だけでも良いので一度両松葉杖へ戻してみませんか?」

 

この伝え方が合っていたかどうか分かりません。

ですが、少なからず私は患者さんを説得ではなく、納得してもらうよう患者さんの立場に立って提案してみたんですね。

 

このように皆さんが頭を悩ませる「言う事を聞かない患者さん」は、もしかすると私たちが説得しようとする治療者側の一方的な主張のせいかもしれません。

 

一度自分がやっていることは「説得」か「納得」かを振り返ってみると新たな解決策が見えてくるかもしれません。

 

PS

後輩を悩ませた言う事を聞かなかった患者さん。

次のリハビリの時にはしっかり両松葉杖できてくれました。

 

心の中ではドキドキしてましたけどね(笑)


この記事を書いた人

長島 将太

長島 将太

理学療法士。JADMT認定 徒手療法士。プロの選手からインカレ・インターハイ選手など数多くトップアスリートを診てきている。また、オランダ徒手療法ではチーフ講師として本物の医療を伝えるために後進の育成にも余念のない。サーフィンをこよなく愛する2児の父。

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