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肉離れの再発を防ぐリハビリテーションの組み立て方①

2017.09.01

こんにちは。日本オランダ徒手療法協会の木内です。

再発が多いことでも知られているハムストリングの肉離れですが、そのタイミングや再発率をご存知ですか?

 

2002年のOrchardらの調査によると、大腿二頭筋における

ハムストリングの肉離れの再発率は【 30.6% 】というデータが示されています。

ハムストリングの肉離れの再発率
・復帰後1週目:12.6%
・復帰後2周目:8.1%

 

上記の通り、全体の約2/3が復帰後2週間以内に再発をしているということになります。

 

この数字を見て、多いと感じますか?

 

肉離れは、トレーニングの質と量をコントロールし、損傷組織を構造的に強くすることで未然に防ぐことが可能なのですが、皆さんは可動域と筋力が戻ったからといって、すぐ練習に参加させていませんか?

 

実は、それはあまりにもリスクが高いことなのです。

 

今回は、そんな再発が多いとされている「ハムストリングの肉離れ」において、3シーズン(3年間)で肉離れ1件という驚異的な結果を生み出したリハビリテーションプログラムを提供している、土屋 潤二氏に、原理原則からプログラムの組み立て方、実際のプログラムまで3回に渡り、ご紹介いただきます。

 

リハビリから現場復帰までの判断基準を、可動域や筋力、プロトコールに任せてしまっている方は是非ご一読ください!

 


 

月刊スポーツメディスン No.191 6月号 2017年

連載 運動を制限する要素の考え方①

-“スポーツ場面”を題材に運動を制限する要素を組織レベルから考える-

はじめに

リハビリテーション(以下、リハビリ)の意味は本来、「再び適した状態になること」「本来あるべき状態への回復」などですから、現場では、外傷前の状態に戻るだけでなく、場合によっては、姿勢/動作の改善をとおして本来あるべきパフォーマンスに引き上げることが求められます。

 

ですが実際は、いろいろな制約が邪魔をして、意味ある素晴らしいリハビリが実現できている医療施設は日本には残念ながら多くはないです。

 

そうだとしても、日本の治療家がそういった条件に恵まれていないとはいえ、そのような状況なりの結果をクリアしているかといえば、クリアしていないのではないでしょうか?

 

そこで足りない考え方を、今回はケースではなく、実際のサッカー現場で指導されたトレーニング方法を題材に、その効果やその奥にある考え方について紹介していきます。

 

早速以下、いつもと同様にT:土屋潤二、S:生徒で示し、対話形式で進めていきます。

 

リハビリ終了後のフォローができない…。

T:Sさんはどんな患者さんのリハビリを担当されているんですか?

 

S:外傷でも半月板損傷された方や前十字靭帯の再建手術された方など、主に膝をみることが多いです。

 

T:主に下肢ということですと、復帰させる“ゴール”として、走ったり、ジャンプしたり、方向転換したり・・・スポーツ特性に合わせた負荷(強度×量)に耐えうるところまで出来ないといけないですね。

 

S:はぁ。ですが、実際は保険の期間の制限があったり、院内で行う環境的な制限があったりで思い切って走れなかったり、そもそも施設的に重い負荷を掛けられるトレーニング機器が整っていないので、十分にフォローしきれていないです。

 

T:と言いますと?

 

S:先生が仰る「競技的なパフォーマンスアップ」が実現できているかどうかは実際に試合を見ていないので判断しかねるのと、再発防止に気を付けるのが精一杯なんですが、退院されてその後どうなったかは風の噂で届く以外、実際に全ての患者さんの“その後”はフォローできていません。

 

T:そこは役割分担が進みすぎた医療制度の限界と言えるかも知れませんね。

 

ハムストリング肉離れの再発率:30%!

T:スポーツ現場での話で、再発率の高い外傷としてどんな外傷を知っていますか?

 

S:アキレス腱断裂ハムストリングの肉離れですか?

 

T:日本整形外科学会が作成した「アキレス腱断裂診療ガイドライン」によると、アキレス腱断裂の再発率は以下のとおりで、保存療法のときは相当気を使わなくてはいけないですね。

アキレス腱断裂の再発率
・手術療法 1.7〜2.8%
・保存療法 10.7〜20.8%

 

S:先生、ハムストリング肉離れの再発率はもっと多い気がします。

 

T:そのとおりです。2002年にOrchardらの調査によると、大腿二頭筋であるハムストリングの肉離れの再発率は以下のとおりで、気になるのはとくに全体の約2/3を復帰後2週間以内で再発してしまうことなんだ。

ハムストリングの肉離れの再発率
・再発率 30.6%

・復帰後1週目 12.6%

・復帰後2週目 8.1%

※全体の約2/3が復帰後2週間以内に再発

 

S:30%! フォローしていないだけに知らなかっただけで責任重大だ!

 

T:それでは、アキレス腱断裂の保存療法での再発率(10,7〜20,8%)とハムストリング肉離れの再発率(30.6%)という数字が出てきて、何か気がつくことはありますか?

 

S:アキレス腱でしたら、成績のよい手術が絶対に有効だ・・・ということだけれど、何でハムストリングの肉離れはこんなに再発率が高いんだろう?

 

T:ハムの肉離れですが、再発のリスクが高いのはいつですか?

 

S:復帰後2集目よりも1週目ということだから、復帰直後にもっとも再発しやすい?!

 

T:そうですね。再発は復帰直後にもっともリスクがあります。

 

うまく行けば復帰後の超回復による軟部組織強化、ダメなら・・・

T:なぜですか?

 

S:おそらく、ハムの局所の柔軟性や筋力がまだ十分でなかったから?

 

T:復帰後2週間以内に全体の2/3が再発するということは、3週目を迎えるとかなり再発リスクが減ることを意味します。

 

S:あ、連載で繰り返し出てくる抵抗力をつける時に必要な要素「刺激」×「休養」×「栄養」のことですね(図1)。

 

(図1 超回復)

 

T:よく思い出してください。大切な原理原則の一つです。

 

S:はい。えっと、刺激が限界を超えたとき=再発だから、復帰後のハム局所への強度的、量的トレーニング刺激が適当であったのに対して、次に休養中に栄養を使って構造的に軟部組織でのタンパク合成や繊維化が超回復して、実際に、ハムストリングが本当に強くなったからです。

 

T:正解!

 

S:ありがとうございます。

 

T:でも、全体の2/3は適度な負荷を超え、再発させてしまった事実は、まだリハビリ技能の課題としてやることがあるはずです。

 

・・・続く。

 

※なお、この文章は編集部の許可を得て掲載しております。

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この記事を書いた人

kiuchi takahiro

木内 隆太

柔道整復師、日本サッカー協会B級コーチ。 骨折・脱臼・捻挫などの外傷を扱う鍼灸接骨院にて6年間臨床に従事。 臨床とスポーツ現場に活動のフィールドを選び『再発予防やパフォーマンスアップを通じて臨床とスポーツ現場を繋ぐこと』を目標に土屋氏の下で、オランダ徒手療法を学ぶ。