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“ストレス反応”が組織の再合成に与える影響

2017.08.23

こんにちは。日本オランダ徒手療法協会の木内です。

 

普段のリハビリや施術の最中の何気ない会話の中でも、患者の悩みやストレスを耳にすることは多くあるのではないでしょうか?

 

筋骨格系を扱うセラピストに知ってほしいのですが、

ストレス反応が長く続くと組織自体は脆くなっていくのです。

 

組織を脆くしてしまう《問題なストレス反応》を引き起こす原因は二つあります。

 

①ストレスが1つ or 複数

②ストレスが1つでもずっと続く

 

 

「ストレス」が存在しても、正常に自律神経機能が機能していいれば、健康を害することはありません。しかし、「ストレス反応」によって交感神経優位の状態が続くと、組織の再合成が進まず、萎縮したり組織自体が脆くなっていくので、長期間の「ストレス反応」は避けなければいけません。

 

今回は、心理社会的な要因が原因で引き起こされる「ストレス反応」と組織を脆くする方向に働く「間違ったストレス反応」についてわかりやすく紹介されている記事をご紹介いたします。

 

 


 

月刊スポーツメディスン No.190 5月号 2017年

連載 実践力を上げるための「根本原因と推察しうる要因や理論の使い方」②

-局所循環を大きく変える「心理社会的要因」を臨床ではどう考えるか?-

 

□  前回までのあらすじ

ストレスの判断基準は個々によって異なり、客観的にストレスを評価するために「ライフイベントストレスチェック」によるテスト方法を紹介しました。さらに、問題となるストレス反応がどのように組織の治癒経過を阻害するのか、「超回復」の理論を用いて説明。そして、自律神経機能の低下により身体全体ではなく、局所(膝)だけが栄養不足に陥ってしまう可能性が指摘されました。

 

自律神経機能低下によって引き起こされる局所の栄養不足とは、ストレス反応により身体の中でどのようなことが起こっているのでしょうか?

 

□  自律神経機能低下/異常で

 

T:選択的にある神経支配のところだけに「栄養」が不足しています。そんなことはありえますか?

 

S:多分、ありそうです。局所の炎症や痛み刺激で、カラダの反応として、細胞まわりの局所循環が悪くなります。

 

T:そうですね。それではそもそも、左右局所への刺激が同じような状況で、右側の脚だけに炎症や痛みが生じてしまう・・・そんなケースを考えてみてください。

 

S:ん〜。関節アライメントが多少、左右違うのか、生活や運動習慣で片側をより使うのか、姿勢/動作自体で左右の使い方が違うのか・・・。

 

T:だんだんわからなくなってきますよね。

 

□  間違ったストレス反応=慢性を生み出す?!

 

T:実は、これは考える順番が逆です。

 

S:順番が反対?

 

T:そう、「急性」ではなく「慢性」で、その病態と心理社会的な要因とが関係していることはわかっています。心理社会的な要因は、どのように局所循環に影響を及ぼしていますか?

 

S:心理社会的な各種要因がストレスとして脳で認知されると、それにより反応が起きる!?

 

T:お、結構、いい線いってますよ〜。ストレスによる反応=「ストレス反応」として、自律神経機能でも、交感神経が優位に働き出し、消化器系に配分していた血液を筋系に再配分したり、血流がよく回るように血管を締めて血圧を上げたり、心拍を増やしたり・・・動けるように戦闘モードになっていきます。

 

S:一見、良さそうですよ、先生!

 

T:そう、「ストレス反応」は、獲物を見つけて狩りをしたり、敵に遭遇して戦ったり、あるいは、逃げたりする・・・移動や運動の筋活動しやすくするカラダの準備です。「ストレス反応」自体は必要なことですが、脳やカラダを休めたり、組織を再構築したりする副交感神経も働く必要があります。重要なことは、交感神経と副交感神経と交互にバランスよく補完し合って自律神経機能が働くことです。ストレスが去れば「ストレス反応」がなくなり・・・。

 

S:土屋先生、それバイオリズムじゃないですか?

 

T:バイオリズム(Biorhythm)は、「生命」を意味するbio-(バイオ)と「規則的な運動」を意味するrhythm(リズム)の合成語で、生命体の生理状態、感情、知性などは周期的パターンに沿って変化するという仮説、およびそれを図示したグラフのことを言いますので、厳密に言うと違います。ですが、睡眠や食事、消化、活動・・・など交感神経と副交感神経がだいたい交互に作用し合うイメージとしては、良いでしょう。

 

S:はい。

 

 

T:一見、よさそうな「ストレス反応」。おもに筋収縮活動のために体内に蓄えたエネルギー(グリコーゲン)と酸素を運んで、運んで、また筋活動で生じた二酸化炭素と老廃物とを運んで、運んで処理しています。ですので、副交感神経により、ゆっくりと細胞まわりの間質液を攪拌させながら(図2)、必要な材料を持ち込んで、繊維芽細胞筋芽細胞などが材料を使ってコラーゲンやエラスチンなどを生成し、アミノ酸を合成して、組織的に強くしていく(図3)・・・ことはできません。

 

 

また、基となる消化器系での吸収や体内での老廃物排出機能も交感神経優位ですと上手く働かず、睡眠も興奮していて質のよい睡眠もできない・・・そんな状態が交感神経が優位な状態です。つまり、「ストレス反応」のままですと、アミノ酸合成ができない=脆く萎縮していってしまいます(図4)。「ストレス反応」がずっと続くことは考えられますか?

 

 

 

S:あ、ずっと戦闘モード・・・というか、今回のケースでは活動時間が通常より異常に長いから交感神経優位の時間が長いですし、プレッシャーもありそう・・・。

 

T:その具体的なケースについての議論は後にして、単発の「ストレス」であれば、「ストレス反応」も単発の「ストレス」がなくなれば、再び、副交感神経が働き出します。ここで大切なことは、以下の2点です。

 

・ストレスが一つ or 複数

・ストレスが一つでもずっと続く。

 

上記の状態が続けば、図2の局所的な循環が十分ではないので、組織は脆くなっていきますね。

 

S:よくわかります。

 

T:よく気がつきました。問診などの情報集めやわれわれ専門家は決めつけてすぐに「ストレス反応」ではなく、「ストレス」に意識が集中してしまっていがちです。

 

S:確かに・・・。「ハートが弱いから」とか、「メンタルが問題だ」とか、まだ問題かどうかもしっかりと考えてもいないのに、思考が飛んで、「問題あるストレス反応」かどうかを見極めないで、話題を「ストレス」の中身に注目していました。反省!!

 

□  慢性疾患で「間違ったストレス反応」かどうか見極めろ!

 

T:ながなが説明してきましたが、要は、自律神経機能が正常化どうか、どういう問診をすればよいですか?

 

S:へへへ(薄笑)。自律神経のチェックをすればよいから、「手足が冷たい」「お通じが正常かどうか」「睡眠不足」「起き上がったときにふらふらしてしまう」「なぜだか鳥肌が立ってしまう」・・などいっぱいあげられますね。

 

T:そう、複数にわたって各自律神経機能に異常があるときに初めて。「問題なストレス反応」として、「“心理社会的な要因”が、治癒経過を阻害する要因として関係しそうだ」と仮説を立てられるんだ。

 

S:慢性期で、「問題なストレス反応」=“心理社会的な要因”が関係・・・しそうであると見通せたら初めて、「ストレス」そのものについての情報を集めればいいんですね、土屋先生。

 

□  急性期の「問題なストレス反応」

 

T:反対になぜ、急性期には「問題なストレス反応」は症状を生み出すほど治癒経過を阻害する要因とならないだろうか。わかりますか?

 

S:そうだ。なんでだろう。

 

T:まったく血液やリンパ系の循環が100%ストップするわけではないですし、大切なのは、細胞まわりの「間質液の循環」です。毛細管が側にない細胞がどのように・・・。

 

S:スポンジ効果(図5)!

動いて、動いて、加圧と減圧との差で間質液を動かす(攪拌する)ことで「間質液の循環」が起きます。

 

T:その通り!

間質液が循環していることが大切だから、運動は本当に素晴らしい治療法=アプローチ方法になります!

 

S:そうか、「問題なストレス反応」があったとしても、動いていればいいんですね。

 

 

T:短期では、多少の局環境の条件が悪くなったとしても、動くことにより「間質液の循環」がそれなりにかなえられることから、組織が劣化することはほとんどみられない・・・という意味では、急性のストレス反応は、あまり気にしなくておよいと考えられています。

 

T:ところで、このケースの場合は、そう考えますか?

 

S:問診状態として「問題なストレス反応」であるかどうかの決めての情報がないから何とも言えないけれど、仮に「問題なストレス反応」がある、心理社会的な要因が大きく治癒経過を阻害しているとしたら、従来の治療やリハビリのようなアプローチ方法を選択しても、「適度な栄養」がない自律神経機能の低下により、思うような結果は得られない可能性が大きいです。ですので、自律機能を回復するようなアプローチをすることを優先します。

 

T:完璧!

 

 □  まとめ

 

1.ストレスの評価などは「ライフイベント・ストレスチェックリスト」などを利用して数値化できる。

 

2.ストレスは日常の恒常な状態から外れた出来事であればすべてストレスである。

 

3.慢性疾患で心理社会的な要因が治癒経過を阻害しているとしたら、自律神経機能系の症状が複数同時に現れる。

 

 

 

※なお、この文章は編集部の許可を得て掲載しております。

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この記事を書いた人

kiuchi takahiro

木内 隆太

柔道整復師、日本サッカー協会B級コーチ。 骨折・脱臼・捻挫などの外傷を扱う鍼灸接骨院にて6年間臨床に従事。 臨床とスポーツ現場に活動のフィールドを選び『再発予防やパフォーマンスアップを通じて臨床とスポーツ現場を繋ぐこと』を目標に土屋氏の下で、オランダ徒手療法を学ぶ。