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トレーニングの栄養摂取による影響 -オランダ徒手療法-

2017.05.09

 

より効果的に、狙ったところをトレーニングしたいと思いませんか?

 

 

保険診療内ではリハビリを行うことができる期間が定められているため、より短い期間で目に見える効果をだせれば、間違いなく患者だけでなく医師や他職種との信頼関係は増し、患者のモチベーションも上がり、リハビリの計画もスムーズに進めることができるでしょう。

 

より効果的に筋肥大を狙ってトレーニングをする場合、単に負荷量や回数の設定や、口からの栄養補給だけではなく『実際にどれだけ刺激や栄養が局所に届いたのか?』という考え方を持つことが必要です。

 

人間というシステムはいくつものシンプルな仕組みが関わりあっており、相互に影響をし合っています。そのため、万人に効く〇〇トレーニングというのはありません。結果をだすには、影響し合っている複数の要素を全体的に捉え、個々に必要なプログラムを組み立てていく能力が必要です。そんな、広い視野を持つための“ヒント”となる考え方を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

 

 


 

 

月刊スポーツメディスン No.186 12月号 2016年

連載 細胞/組織レベルの体内環境を考えることで治癒効果を引き出す②

-治癒経過を阻害する要因ごとにアプローチを変えろ!-

以下、T:土屋潤二、S:生徒で示し、対話形式で、オランダ徒手療法の考え方を示していきます。

 

 

栄養摂取による影響

 

 

T:栄養のトピックを紹介しましょうか。ここ最近、優勝ばかりを重ねている帝京大学ラグビー部は徹底した食事管理をしていて、TV報道で有名になりましたが、1回の食事で、400g以上のご飯など総カロリー2200kcalを摂取しています。

 

そのままでは脂肪が増えてしまいますが、激しいトレーニングと休養とで体脂肪率を上げることなく身体を一回りも、二回りも大きくすることに成功しています。

 

S:見事な体格差ですよね。

 

T:一方でかなりの肉体疲労状態で激しい動作を繰り返していると、身体は刺激によるタンパク合成をするどころか、カルシウムの貯蔵タンクである骨からカルシウムが漏れ出してしまいます。それに加えてさらに疲労困憊状態が続くと消化器系の栄養摂取の効率が落ちてきます。

 

そういった事実をもし知っていたら、治療現場でたとえばある筋肉の筋肥大をさせたいとプログラムを組むときに何に注意しますか?

 

S:12〜15RM(Repetition Maximum=繰り返すことが可能な限界の最大反復回数)など、それなりに重い負荷で、セット間の休息時間を30秒ぐらい短くし…(図2)

 

 

T:お、それなりにレジスタンストレーニングのやり方を知ってそうですね(笑)文献により筋肥大に効果的な負荷設定は若干、違っています。一般的に行なわれている「何kg × 何回 × セット数」というやり方は専門家ならもう辞めて、「最大反復回数 × セット数」にして欲しいですね。なぜだと思いますか?

 

S:個人差…ですか?

 

T:詳細は別の機会に譲りますが、元々、筋付着部の位置の違いや骨格自体の大きさの違いから、筋収縮に関して“テコの作用”が全く異なるわけですから、相対的に負荷を設定しないほうがおかしいですね。

 

同じ重さで体格が違う人がプログラムを行えば、身体への負担は個人個人、全く違ってきてしまいます。この時点で「抵抗力 vs 負荷バランス」を考えたときに、コントロールしたい「負荷」がバラバラになってしまいます。実によいポイントを指摘してくれました。

 

S:ありがとうございます。

 

 

 

複数の要因の全体像

 

 

T:では、「栄養摂取による影響」を考えてみましょう。そういった意味では、治癒過程を阻害する、いくつかの“複数の要因の全体像”を理解する/掴めるようになるように、今から専門家として“一つの要因をこだわって深く考えること”と俯瞰図的な“複数の要因の全体像”を常に交互に想像できるようにしてください。

 

S:ひゃー、大変だ。A+B+C…=Zみたいな複数の要素が絡むモデルは考えたことがなかったので、難しいです。これまでは、ぼくの場合、運動連鎖/アライメントと局所 vs 抵抗力をあげる…ことしか考えてこなかったので、できるかどうか不安です。

 

T:オランダ徒手療法は一見、複雑で難しいように感じますが、繰り返し、ある決まったやり方や考え方を練習していると誰でも身につく理論体系です。オランダ徒手療法が特別な技能であれば、特別に優秀な人にしか身につかないことになりますが、これまで数多くの人が習得できた実績があります。

 

ですので、オランダ徒手療法は決して、特別な難しい理論やテクニックではなく、医療知識が多少あるコメディカルの人であれば誰にでも理解できる治療体系になっています。

 

S:はー、わかりました。取りあえず最初から諦めずにまずは自分で考えることからはじめてみます。

 

T:その意気、その意気!さて、もう一度「栄養摂取による影響」の視点から、筋肉の筋肥大をさせたいとプログラムを組むときに何に注意したらよいでしょうか?

 

S:う〜ん。栄養摂取の効率の話をされていましたよね?口から入るだけでなく、身体の状態により、実際にどれくらい吸収されたかについて…。ということは、反対に局所にどれくらいの栄養が届いたか?…というのもとても大切だと思います!!

 

 

体内環境:栄養供給のみちすじを考える

 

 

T:いい注意点がでてきましたね!有名な例として、サプリメントとして販売している、鮫などから抽出したグルコサミンが、消化器からの吸収率の問題もありますが、分解されてしまって消化されたものが都合よく、軟骨再生を期待する局所に届き、再合成してくれるものなのでしょうか?

 

研究報告では、サプリメントのグルコサミンが軟骨再生などの効果を証明できたものは、残念ながらありません。

 

S:狙った組織まわりに必要な物質が届き、不必要なモノが排出されるような、循環がよい状態にしたいですね。

 

T:局所の循環!非常に大事な一つの注意ポイントがでてきました。それでは「局所の循環」に影響を与える要因には何がありそうですか?

 

S:循環なので、血流という意味では動脈と静脈、リンパ、それに血圧、心拍…ですか?

 

T:それも非常に大切です。それでは毛細管があまり発達していない組織、たとえば、軟骨や太い腱、半月板…などの「酸素/栄養補給」と「二酸化炭素/老廃物除去」はどうやっているのでしょうか?

 

S:エッヘン。以前に先生の記事を読んだことがあるから覚えています。動作によって加圧と減圧と交互に動かして、“スポンジ効果”によって、熱帯魚の水槽のようにぶくぶくと細胞周りの間質液を循環させています。

 

T:大正解!では、それが運動がしにくかったりすると“スポンジ効果”が効かなくなってしまうけれど、臨床の現場で、そんな状況はありますか?

 

S:手術後の固定や急性の炎症反応でRICE処置をしているとき、細かく考えると可動域制限があるのであれば、どこか一部が十分に加圧/減圧されていない??

 

T:組織間が癒着して組織どうしの滑走性がなくなり、柔軟性低下、可動域制限…までいくと、たとえ口から栄養を多量に摂取していたとしても、その栄養が局所に届かないばかりか局所の間質液は酸素不足でもあるから、軟部組織は脆くなり、組織どおしはくっつき、筋肉肥大をさせたいと「適度な刺激」を与えたとしても、筋肥大の効果は低下します。

 

S:質問です。炎症の場合はどうなるんですか?

 

T:その前に、組織どうしの滑走性がなくなり、柔軟性低下、可動域制限…のような局所の状態である場合、どんな治療のアプローチを考えますか?

 

S:その問題点で見つかった癒着に対しては“組織間リリース”をやり、筋肉の柔軟性や関節の可動域が制限されているのであれば“ストレッチ”や“モビライゼーション”、“PNF”をしたり…原因と思われる局所の状態に合わせてテクニックを選択します。

 

T:そうそう、自分の持っている引き出しから問題を解決する目的に合わせてテクニックや治療器を選択すればよいでしょう。それでは次に炎症や痛み、硬結があるときを考えてみましょう。

 

 

...続く。

 

 

※なお、この文章は編集部の許可を得て掲載しております。

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